表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
244/473

第五章 決戦! 第三十九話

「あ! 待って。私がやるから。それに、ダメよ。子どもが遠慮がちに笑っちゃ。もっと無邪気に笑うものよ」


ポットに火をかけたポーラはメルに振り向くと、息がかかるくらい近くまで顔を寄せた。一九〇歳近く下の女の子に説教をされるとは。メルは滑稽な事態に思わず笑ってしまった。


「うーん……まだ、笑顔が固いなぁ。もっと笑って! ほーら!」


メルは笑顔を見たポーラは腰に手にうなると、メルの頬をつかんで引っ張った。


「ひょ……ほーら、ひらい……」


よくのびるメルの頬を引っ張ったポーラはようやく、メルを解放すると、メルの頬に優しく触れた。


「メル。あなたが悲しい顔をしてちゃだめ。ラグニール様だって、そんな顔を見たくないと思うよ」


「……ポーラ」


メルはポーラの手に触れた。ポーラの手がわずかに震えているのが分かった。ポーラもヒーリーがいない寂しさに耐えているのだ。メルは小さな手でポーラの白い手をぎゅっと握った。


「ほら。辛気くさい顔しないでお茶しよう! もうすぐお湯も沸くから!」


ポーラは、ぱっと明るい顔になると、メルに言った。小さな宮廷魔術師はポーラの明るさにあてられ、元気を取り戻していった。


ほぼ時を同じくして、フォレスタル王城の謁見の間、国王ジェイムズ・エル・フォレスタル、王太子エリクシル、宰相マクベスらにヒーリーとハイネの激闘の様子が伝えられた。


「ワイバニアの第一軍団長と交戦したと言うのは初めてだな」


玉座に腰掛けたジェイムズは唸った。三十年前、ワイバニア帝国軍と幾多の死闘を演じたジェイムズも第一軍団と戦った経験は無かった。それ故に今回の戦いはフォレスタル首脳にとって、最も大きな関心事であったのだ。


「使者の話だけで、その強さが分かります。ヒーリーはよく戦いました。父上」


玉座の傍らに立つ王太子のエリクが口添えした。不肖の息子の敢闘を父はぶっきらぼうに言った。


「あれにしてはよくやったな。だが、まだまだだ」


王太子と宰相は父親の素直でない一言に顔をほころばせた。


「父上。ヒーリーは魔術銃を失いました。並の武器では龍騎兵は防ぎきれません。新たな武器をとどけようと思うのですが、いかがでしょう?」


マクベスは真剣な表情になると、父王に伺いをたてた。


「だが、宮廷魔術師は眠りについている。あれをつくることはもう……」


「いいえ、あるのです。父上。宮廷魔術師ラグニール・ド・ビフレスト最新にして、最高の一丁が……」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ