第五章 決戦! 第三十一話
「ヒーリー!」
「軍団長!」
装甲馬車に戻って来たヒーリーをモルガン、レイなど、第五軍団幹部達が出迎えた。疲れた笑みをこぼしたヒーリーに、メアリは一歩踏み出すと、ヒーリーに平手打ちを食らわせた。
「……痛いな。メアリ」
「あなた、何を考えてるの? 指揮官がいきなり格闘するなんて、ここで死んだら、どうするつもりだったの?」
「ごめん、メアリ……」
いつにない剣幕で怒り出したメアリにヒーリーは動揺していた。あのメアリがこれほど感情を露にするとは。一〇年近くの付き合いになるが、今までには無かったことだ。ヒーリーはばつが悪そうにメアリから目をそらした。
「ヒーリー! こっちを見なさい!」
「参謀長殿……」
激昂するメアリの肩をアンジェラはつかんだ。振り向くメアリにアンジェラは小さくかぶりをふると、装甲馬車へ連れて行った。時々嗚咽を漏らすメアリを気遣いながらも、アンジェラはヒーリーの方を向いた。何か言いたいことがあったのだろう。アンジェラの心中を察すると、ヒーリーは小さく一礼した。
立ちすくむヒーリーの前にアレックスが空から下りて来た。
「申し訳ありません。軍団長! 救援に出向くことが出来ませんでした」
「いや、いいんだ。スチュアート隊長。敵の力の程はわかったろう?」
ヒーリーは軽く手をあげると、アレックスに言った。
「はい。これまでの相手と格が違います。おそらくあの大隊長は私より遥かに……」
「スチュアートですらかなわない相手だっていうのか?」
アレックスの表情を察したレイは驚きの表情を浮かべた。アレックスの勝てない相手、それはすなわちフォレスタル軍のどの龍騎兵も敵わないと言うことを意味していた。
「おそらく、最高によくできて相討ちと言うところでしょう」