第五章 決戦! 第二十七話
フォレスタル軍に捕捉される直前、ワイバニア軍はフォレスタル増援軍の隊列を発見していた。
「軍団長、フォレスタル軍を発見しました。あと30分ほどで接敵します」
「よし、鷹眼を解除。密集隊形で突撃する。そのあとは・・・・・・」
ハイネはゲルハルトを見た。ハイネの信頼厚い龍騎兵は頷いた。
「わかっております」
「そうか、あと・・・・・・」
ハイネはゲルハルトに小さく告げた。
「本気ですか!?」
「私が奴なら、同じことをするだろう。これで少なくとも、奴の将器が分かる」
「しかし・・・・・・」
「でなければ、私が直に奴を斬って、この戦いは終わりだ」
ゲルハルトはハイネを見た。もうハイネはゲルハルトを見てはいない。まだ見ぬ敵を見据えているのだろう。ゲルハルトはハイネの策に首を縦に振らざるを得なかった。
「よし、全隊突撃。フォレスタル軍を急襲する」
ヒーリーとハイネの戦いが、今はじまろうとしていた。ハイネ率いる龍騎兵隊は、陣形を組み、高空から一気に降下すると、フォレスタル軍四個軍団上空を駆け抜けた。
「軍団長!敵龍騎兵隊、密集隊形で接近!!数100」
伝令の報告にヒーリーは笑みをこぼしつつも冷や汗を一筋たらした。
「来たか・・・・・・各軍団に手出し無用と厳命してくれ。司令部第一直衛中隊は手はず通りに展開を急いでくれ」
「分かりました」
モルガンは敬礼すると、そのまま装甲馬車を下りていった。
「軍団長、私も空へ上がります。部下には攻撃禁止を徹底させていますから、ご安心ください」
「あぁ、頼む副軍団長」
スチュアートも装甲馬車から飛び降りると、愛騎に跨がり、一気に空高く舞い上がった。
「敵龍騎兵、あと500!!」
「軍団長・・・・・・」
「メアリ、君は下がっていてくれ。女の子に怪我はさせられない」
「ちょ、待ちなさい!ヒーリー!!」
メアリの制止も聞かず、ヒーリーは装甲馬車を飛び出した。
「馬鹿・・・・・・どうしてあなたは、昔から・・・・・・」
装甲馬車の手すりを、メアリは握りしめた。ぐうたらで、どうしようもないサボリ魔。けれど、一度戦いになれば、自分のことはおかまいなしに誰よりも危険な場所に飛び込もうとする。そんなヒーリーがあぶなっかしくて放っておけなかった。メアリはヒーリーの後ろ姿を見送った。
「死なないで。ヒーリー・・・・・・」