第五章 決戦! 第二十一話
「軍団長、出撃準備整いました」
準備を整えた龍騎兵一個中隊とともにワイバニア軍第一軍団龍騎兵大隊長ゲルハルト・ライプニッツはラシード郊外にある第一軍団仮説司令部に降り立った。
「よし。直ちに出撃する。エルンスト。しばらくの間、頼んだぞ」
司令部の仮設テントを出たハイネは居並ぶ100人のドラゴンライダーを見ると、続いてテントを出た参謀長のエルンストに言った。
「お任せください。軍団長、ご武運を」
「行ってくる・・・・・・レイヴン!!」
ハイネは愛騎に跨がると高らかにレイヴンに呼びかけた。レイヴンは高いいななきを発すると、大きな翼を羽ばたかせた。百を超える龍の群れは、空高く舞い上がると整然と隊列と整えながら、西方に向けて飛び去っていった。
「全騎!警戒陣形!!龍将三十六陣"鷹眼"発動!!散開せよ!!」
ハイネの号令一下、百騎の龍が三騎単位の小集団に分かれて散開した。第一軍団独自の上空警戒陣形、鷹眼である。翼竜は人間よりも遥かに優れた感覚器官を持つ。その感覚器の限界ぎりぎりまで哨戒網を広げる。これが鷹眼の正体だった。
もっとも、他の軍団でこのような陣形をとるのは容易ではない。個体毎に異なる感覚器の限界を把握し、かつ万一敵と遭遇戦を行なった場合、高確率で生還しうる高い戦闘能力を持つことが必須条件だった。それを満たすのは十二軍団中随一の技量と練度を誇る第一軍団だけだった。
天空に広がる龍の網。その網にヒーリーがかかるのをハイネは待っていた。
ヒーリーとハイネ。両軍の雄が激突する時が刻一刻と近づきつつあった。