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第五章 決戦! 第十九話

「了解しました。では、直ちに準備に入ります。一時間以内に出撃可能にいたします」


「頼んだぞ。ゲルハルト」


ゲルハルトはハイネに敬礼すると、愛騎にまたがり、自分の隊へ戻っていった。次第に小さくなっていくゲルハルトを見送るハイネにエルンストが話しかけた。


「楽しそうですね。軍団長」


「顔に出てしまったか?エルンスト」


「いえ、分かるのは私かシラー軍団長、それにレイヴン殿くらいのものでしょう」


エルンストはウィンクした。エルンストの言葉に反応したのか、レイヴンは短く鳴いた。


「それにしても、どのような人物なのでしょう?ヒーリー・エル・フォレスタルは」


「私も龍の眼の映像でしか見たことは無いが、なかなかの男のようだ」


ハイネは空を見上げた。メルキドの空は故郷のベリリヒンゲンよりも澄み渡っているように見えた。同じ空をヒーリーも見上げているのだろう。ハイネはまだ見ぬ敵手との対戦を心待ちにしていた。


「ふわぁ〜ぁ」


「こら」


あくびをする同期の頭をメアリはこづいた。夜が明けて、フォレスタル増援軍はミュセドーラス平野に向けて動き出していた。作戦室を設置した大型装甲馬車の中で、ヒーリーとメアリはメルキド軍との共同作戦の細部を詰めていた。


「人に休むように言っておいて、自分は夜更かし?おじいさまと飲んでたんでしょ?ちゃんと知ってるわよ」


「ピット爺のおしゃべりめ」


「軍団長の生活を知るのも、参謀長の務めですから」


「そんな務めなんて、聞いたことが無いな」


「あなたは特別よ。ポーラにも言われてるの。『メアリ姉、ヒーリーがぐーたらしないようによろしくね』って」


「皆、俺のことをぐーたらだと思ってるんだな」


「日頃の行いよ」


舌打ちするヒーリーに、メアリは眼鏡を上げて言った。


作戦室のテーブルの上には、ミュセドーラス平野の地図が広げられていた。ミュセドーラス平野は平野とは名ばかりの盆地に近い地形をしている。周囲を馬蹄形のなだらかな山地で囲まれ、その中を幅200mばかりの川が縦断していた。平野への出入り口は二つに限られ、守りやすく、攻めにくい天然の要害だった。

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