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第五章 決戦! 第十五話

星王暦二一八三年七月四日、公都ロークラインに到着したワイバニア軍先鋒、第三軍団長マンフレート・フリッツ・フォン・シラーは目を疑った。


「何……だと……」


ワイバニアの大軍を迎えたのは、無人の石造りの建物達だった。


「公都をまるごと空にするとは……やられな」


副将として帯同した。第六軍団長オリバー・リピッシュが言った。


「ベルゼンの街に入ったときはまさかと思ったが、公都まであっさり放棄するとは……これは大変なことになるぞ」


シラーの頭に敵地に誘い込まれつつあると言う認識が芽生え始めていた。現在のところ勝ち続けているが、実は敵地深く侵攻させて、退路と補給路を絶って後、全滅させる作戦なのではないか。少壮の上級軍団長に一抹の不安がよぎった。リピッシュも同様に感じており、話し合った二人は撤兵を皇帝ジギスムントに進言することを決めた。


「ならん」


ワイバニア軍後方、皇帝専用馬車の豪奢な椅子に腰掛けた21歳の若き支配者は二人の進言を即座に却下した。


「そのような進言は憶測に基づいたものに過ぎぬ。その程度の理由で全軍を撤兵するのは愚行以外の何ものでもない」


「しかし……」


「もういいわ。シラー軍団長、リピッシュ軍団長」


食い下がろうとするシラーをシモーヌが制した。


「陛下のご裁断は下りたはずよ。それに単なる可能性で大親征を止める訳にはいかないの。それはあなたもわかっているでしょう?シラー軍団長」


「ですが、軍団を預かる身として、いたずらに兵を失うことは……」


「黙りなさい」


シモーヌの冷徹な声がシラーの耳を叩いた。


「右元帥である私に軍団長が意見するつもり? 私の権限で、あなたを軍団長の任から解いても構わないのよ」


シラーは拳を握った。ハイネが二人を斬ろうとした気持ちを今ならわからないでもないが、シラーは部下のため、友のために引き下がることに決めた。二人の軍団長は、皇帝と右元帥に一礼すると持ち場に戻っていった。

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