第五章 決戦! 第五話
「……さてと、我々も続くぞ!第一小隊は俺についてこい!」
「やはり、行かれるのですか。副軍団長殿」
「むろんです。今、我々はあの方を失う訳には参りませんから」
「同感です。レイ、副軍団長殿と少し空の散歩に行ってくる」
アレックスの言葉にうなづいたアンジェラは、副官のレイに言った。
「大丈夫ですか? お一人では……」
「一人ではない。副軍団長殿と一緒だ。何かあったとき、戦力は一人でも多い方がいいからな」
「では、私も……」
「いや、お前は連隊の指揮を頼む。心配するな。ヒーリー殿には失礼だが、翼竜の扱いにかけては私の方が上だとお前もわかっているだろう?」
アンジェラは不敵に笑うと、レイもまた苦笑で返した。
ヒーリーの出立から一五分後、アンジェラ、アレックスら護衛隊はウォルター座乗の水軍旗艦、「エンディミオン」から飛び立った。
アンジェラ達が飛び立った頃、ヒーリーとイスラはメルキド公国の河岸都市ヴェローナの上空を通過していた。港ではフォレスタル船団受け入れのために、メルキドの商船が下流へと退避していく姿が見えた。
「久しぶりだな! メルキドの上を飛ぶのは」
「はい、二年前になりますわ! ヒーリー様が私の国に来ていただいたのは」
二年前の星王暦二一八一年、メルキド軍新軍団長として就任したディサリータの祝賀の特使として、ヒーリーはメルキド公国に派遣されていた。以前より、妹のように思っていたイスラと会うのはヒーリーにとって楽しみであり、式典が終わった後は公都ロークラインの上空を飛び回ったものだった。
月明かりの下、銀に輝くメルキドの大地を二人かけた記憶は少女の中に今も美しい思い出として刻まれている。
「あのときは、楽しかったな! ディサリータも空に連れて行って、あとでアリーにどやされたっけ!」
「そうですわ。あのときは本当に楽しくって……」
イスラは胸を押さえた。よみがえる楽しかった思い出、ずっと抱き続けていたヒーリーへの想い。もう二度と会えないかもしれない恐れ。それらが全てないまぜになってイスラの胸を締め付けていた。
イスラは手綱をひねり、アテナをヴェルの近くに寄せると、ヴェルに飛び移った。