表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
208/473

第五章 決戦! 第三話

ヒーリーは落下して来たイスラを受け止めたが、落下の衝撃に負け甲板上を転げ回った。


「ヒーリー様! お会いしとうございました!」


痛そうに頭をさするヒーリーをよそに、イスラはヒーリーをぎゅっと抱きしめた。


「イスラ、どうしてここに?」


「もちろん。ヒーリー様と共に戦うためですわ! 妻たるもの、いついかなるときも夫とともにあるものですわ!」


そんなものじゃないんだ夫婦っていうのは。ヒーリーは口に出そうとした言葉を再び飲み込んだ。一度も結婚をしたことがないヒーリーにとっては夫婦とはどういうものか。イスラに説明出来る自信がなかったのである。


ヒーリーはなおも抱きつこうとするイスラを身体から離して言った。


「イスラ。ここから先は、戦場になる」


「大丈夫です。ヒーリー様と一緒なら」


「死ぬかも知れないんだぞ」


「ヒーリー様と一緒なら平気です!」


ヒーリーは頭をくしゃくしゃとかいた。何を言っても、イスラはここに残ろうとするだろう。ヒーリーは戦うとき以上に頭脳をフル回転させた。


「ヴェル、お前も……」


ヒーリーは相棒に目を向けると、そこには仲睦まじい翼竜のカップルの姿があった。ヴェルとアテナ、二匹の翼竜は互いにほほを寄せあっていた。エメラルドワイバーン同士が愛を確かめあう行動である。


「……」


ヒーリーは何も言えず顔を押さえた。


「ほら! これでもヒーリー様は私を帰すとおっしゃるのですか?」


いたずらっぽく片眉を上げて、イスラはヒーリーに詰め寄った。ヒーリーは真剣な顔になると、イスラの頭にそっと手を置いた。


「イスラ、さっきも言ったように俺たちは戦場に行くんだ。ここにいる何人かは俺を含めて戻れないかもしれない」


「……」


「イスラの知っている人だって命を落とすかもしれない。悲しい目にだって幾度遭わせるかわからない」


「耐えられますわ!そんなの!!」


イスラの反論にヒーリーは首を振った。


「戦場は地獄だ。どれだけの人間が屍を地にさらすか。君を伴い、君に地獄を見せることが俺には耐えられない」


「ヒーリー様……」


「お願いだ。皆のもとに戻ってくれ。イスラ」


しばらくの沈黙の後、イスラは黙ってうなづいた。ヒーリーは妹のような公女の頭を優しく撫でた。


「さて、女の子一人でメルキドまで帰すわけにはいかないな。スチュアート隊長、悪いが、イスラ公女をメルキドまで送ってやってくれないか?」


ヒーリーは背後に控えていたアレックスにイスラの護衛を命じた。しかし、スチュアートの返事はヒーリーの期待したものと真逆のものだった。


「申し訳ありませんが、その任、謹んでご辞退申し上げます」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ