第五章 決戦! 第二話
星王暦2183年6月28日午後、フォレスタル軍メルキド贈援軍総司令官、ヒーリー・エル・フォレスタルは船上の人になっていた。
騎馬、武器、兵士を満載した600隻のフォレスタル船団はガスパール河対岸の街、ヴェローナを目指していた。
日の光に反射してキラキラ光る水面を滑るように、水鳥の群れが飛んでいた。生命の恵みにあふれたフォレスタルの富の源。ヒーリーは川風を浴びながらガスパール河の風景を眺めていた。
「どうじゃ。ヒーリー。河はいいもんじゃろう?」
「えぇ・・・・・・」
叔父上さえいなければねと言う言葉を飲み込んで、ヒーリーは叔父に生返事をした。
フォレスタルの対岸が遥か彼方の水平線に消えかけたとき、ヒーリーの愛騎ヴェルが何かの気配に気づき、首を上げた。
「ヴェル。どうした?」
ヒーリーの問いかけに、ヴェルは耳を立て、嬉しそうな鳴き声で返した。仲間の気配を感じたのだ。
「おい、空に何かいるぞ」
望遠鏡で空を見ていたウォルターは桃色をした点のようなものを見つけた。ヒーリーはウォルターから望遠鏡を借りてそれを見た。桃色の点は次第に大きくなり、翼竜の形に姿を変えた。
ヒーリーも幾度となく見たことがある桃色の龍の出現。この事象が導き出す答えをヒーリーは知っていた。
「ま、まさか・・・・・・」
桃色の龍はヒーリーの船の上空で静止すると、その主は真っ逆さまに飛び降りた。
「ヒーリー様!!」
「イスラ!!?」