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第五章 決戦! 第一話

星王暦二一八三年六月二十五日、公都ロークラインを脱出したメルキド公国公女イスラ・デ・ピノスはロークライン市民と共に、メルキド公国西方最大の城塞都市コリオレイナスを目指していた。


第一軍団長のヴィヴァ・レオの命をかけた足止めによって、十分な時間をえられたメルキド陣営は、順調に市民の公都脱出を終えることができたが、安心はできなかった。いつワイバニア軍が追いつくとも限らなかったためである。ボナ・ムール率いるメルキド軍第三軍団は市民達の最後衛に位置し、ワイバニア軍の襲来に備えつつ、市民を護衛していた。


公都放棄という、半ば絶望的とも言える状況の中で、イスラは諦めていなかった。彼女は公女たる自覚を持って行動し、絶望と悲嘆にくれる市民達と勇気づけていた。


「大丈夫ですわ。きっとメルキド軍とフォレスタル軍がワイバニアを打ち破ってくれますわ。勇気を出して歩きましょう」


イスラの笑顔は長い道程を歩く市民にどれほどの勇気と元気を与えたかわからない。


公女に応えるため、市民は気力と体力をふりしぼって自らの足でコリオレイナスを目指した。軍もまた、市民達を守るために全力を尽くしていた。彼らはありあわせの材料をつかって車を作ると、巨兵隊の戦象をひかせて、歩けない老人や子ども、病人、けが人を乗せたのだった。


メルキド軍と市民は、文字通り一丸となって先を目指したのである。散っていったヴィヴァ・レオ達の思いを無にしないために。


「イスラ様。フォレスタル王国増援軍がアークプリマスの港を出港したそうです」


「ヒーリー様がいらっしゃるのね?」


イスラ付きの侍女、マミー・テイラーの報告にイスラは表情を変えた。


「はい。増援軍四万がガスパール河を渡りきるまでに数日はかかると思いますが……イスラ様?」


「私、ヒーリー様にお会いしてくるわ! マミー!」


「お待ちください! お一人では危険です! それに、ヴェローナまでどれだけかかるか……」


「大丈夫。翼竜ならひとっ飛びよ! アテナ!」


マミーの制止も聞かず、列から飛び出したイスラは愛騎の名を呼んだ。すると、甲高い鳴き声を上げて、桃色の翼竜がイスラの前に降り立った。世界でも3例しか発見されていないエメラルドワイバーンの変異種、サファイアワイバーンである。


地上で最も美しきものと形容されるエメラルドワイバーンの中でも別格ともいえる美しさを放っていた。


「イスラ様!」


「大丈夫よ! マミー。心配しないで!」


アテナにまたがったイスラは大声でマミーに呼びかけると、一気に飛び去っていった。

第五章始まりました!


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