第四章 決戦前夜 第四十九話
メアリはその迫力に圧倒され続けていたせいか、ぺたんと腰を落とした。ヒーリーは冷静さをいつも崩さない普段の参謀長の姿に少し笑いながら手を差し出した。
「立てるか?メアリ」
「えぇ・・・・・・」
メアリはヒーリーの手を握ってゆっくりと立ち上がった。
「叔父上の次はベスか・・・・・・難題だな」
メアリを立ち上がらせるとヒーリーは腕を組んで考え始めた。
「仕方ないわ。補給のためには彼女達の力は必要よ」
「そうだな。・・・・・・メアリ。少しだけ、ガスパール川を眺めさせてくれ。もう少しだけ見ていたいんだ」
「わかったわ。もう一人味方を呼んでくるから、あなたはそれまでそこで待っていて」
メアリはそう言うと、ヒーリーに背を向けて走っていった。ヒーリーは地に腰をおろして、愛騎ヴェルにもたれかかると、相棒に尋ねた。
「ヴェル。味方だってさ。誰だろうな?」
ヴェルは目をぱちくりさせると、首をひねった。
「そうだよなぁ。わからないよな。・・・・・・もうすぐ夕焼けだ。ヴェル、よく見ておけよ。しばらくは見えないからな」
ヒーリーの言葉に、ヴェルは短く鳴いて応えた。
「こんどは、ポーラも一緒に・・・・・・」
ガスパール川の夕日を見つめるヒーリーの脳裏にポーラの笑顔が映った。必ず生きて帰る。もう一度、ポーラをガスパール川に連れてくる。彼女に広い世界を見せるんだ。ヒーリーは心に固く誓った。
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