第四章 決戦前夜 第四十八話
ウォルターの表情がわずかに固まった。ウォルターは声の抑揚を抑えてヒーリーに尋ねた。
「お前・・・・・・わしらに運び屋のまねごとをせいと言うちょるのか?」
「・・・・・・そういうことになります」
ヒーリーはウォルターから目を背けて言った。ウォルターはきっとヒーリーをにらむと剣を抜き、ヒーリーの眉間につきつけた。
「提督!!」
「メアリ。お前は黙っちょれ。ヒーリー。お前、わしらをなめちょるのか?わしらは船乗りじゃ。自然を相手に命のやり取りをやっちょる。その勇気と誇りはアルマダのどの軍団にも負けんつもりじゃ。じゃがお前はその船乗りの誇りを汚そうとしちょる。わしはそれが許せんのじゃ」
ヒーリーは背けていた目をまっすぐウォルターに定めると、ウォルターに言った。
「提督。この戦い、遠いメルキドの地まで物資を輸送する補給戦が鍵になります。戦いを有利に運ぶためには提督達の力が必要なのです。メルキド軍がミュセドーラス平野以西を確保しているとはいえ、万全とは言えません。ワイバニアの伏兵もあるかもしれません。この任務を託せるのはフォレスタルの中でも第一軍団と並ぶ武勇を持つ水軍陸戦隊だけです」
ウォルターは静かに剣を引いて尋ねた。
「わしら水軍を馬鹿にしちょるのではなく、その力を見込んでということか?」
「はい」
二人の間に数秒ほどだが沈黙が流れた。その間、恐ろしいほどの緊迫感が二人の間を包み込んでおり、そばにいたメアリは声をかけることも動くこともできなかった。
「わかった。了承しよう。ベスにもちゃんと言うとけ。水軍陸戦隊5,000を束ねちょるのはあいつじゃからの」
「はい」
ウォルターは剣を一閃して鞘に納めると、踵を返して歩いていった。
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