第四章 決戦前夜 第三十四話
レグロン隊は全速力でヴィヴァ・レオ本隊を追い越すと、先鋒の歩兵大隊側面に回り込もうとしたが、ワイバニア軍左翼の騎兵大隊がレグロン隊を遮った。
「そうはさせるか!!予備兵力を叩きつぶせ!!」
ワイバニア軍第一騎兵隊長のキール・フォン・ワグナーが先陣をきって突撃した。勇猛でならすキールを先頭に、1,000名のワイバニア騎兵がレグロンの巨兵、歩兵の混成部隊に向かっていった。
「もうすぐ・・・・・・もうすぐだ」
ヴィヴァ・レオは高鳴る心臓を抑えきれずにいた。
あと少しでワイバニア軍を要塞の射程に引きずり込める。一発逆転の好機の到来を彼は待っていた。
そのころ、アーデン要塞の最上階、要塞司令室では司令官のマルルゥーが戦況をじっと見つめていた。要塞の射程に入るまであとわずか。敵がじりじりとクロスファイア・ポイントに入り込む瞬間をはかっていた。
「全弓兵に攻撃準備」
マルルゥーは攻撃準備を命じた。伝令兵がすぐに要塞に張り巡らされた伝声管に命令を伝えた。あとは命令を下すだけ。メルキド側の準備は整いつつあった。
「そろそろね・・・・・・影よ」
遠く離れたワイバニア軍皇帝本陣で、シモーヌは影を呼んだ。
「これに・・・・・・」
「例の作戦をはじめるわ。城崩しをはじめなさい」
「は・・・・・・」
そういうと、影は姿を消した。
「伝令兵をこれに」
ジギスムントは直属の伝令兵を呼び出した。
「第三、第九、第十一軍団長に伝えよ。直ちに予の勅命を実行せよとな」
伝令兵は一礼して本陣を出て行くと、ジギスムントは高笑いをはじめた。その様子をシモーヌは何も言わず、ただ若き皇帝を見守っていた。