第四章 決戦前夜 第二十四話
「副官、お前は昨年のオセロー平原の戦いを知っているか?」
「はい。歩兵が龍騎兵隊を壊滅・・・・・・」
「『全滅』だ。世界の不文律などあてにはならん。我々とて、どうなるか分かったものではない。油断するな」
プレヴューの言葉を遮って、テコニックは副官の言葉を言い直した。
「大隊長。9時の方向に翼竜多数。龍騎兵大隊と思われます!!」
龍騎兵見ゆの報告に、テコニックは急いで左の方角を見た。山陰から、たなびく雲のように紅の翼竜達が姿を現した。
「来たか・・・・・・総員、対空戦用ー意!対龍装甲板閉鎖。ヘラクレス隊を直ちに展開し対空射撃用意。アキレス、オリオンは対空防御を徹底させろ。急げ!!」
テコニックはすぐに対空戦を命令した。龍騎兵対巨兵。両軍の最強戦力同士の激突が始まろうとしていた。
「・・・・・・いよいよだな。エルンスト」
「はい。メルキド巨兵最期の時です」
遠くに龍騎兵の姿を見た二人は互いに話した。ワイバニア軍の戦術研究の成果が今、実を結ぼうとしていた。
「第一、第二中隊より攻撃開始。いいか!訓練通りやれば、何の問題もない。臆するな!我々はアルマダ最強の龍騎兵だ!」
ワイバニア軍第一龍騎兵大隊長のゲルハルト・ライプニッツが部下達に檄を飛ばした。
「全騎、ダイヴ!!」
第一中隊長のオスヴァルト・バウアーが中隊に号令した。中隊長の号令のもと、100騎の龍騎兵が地面めがけて急降下していった。