第四章 決戦前夜 第二十三話
「どうやら、窮地は脱したようだな」
後退していく敵騎兵を遥か遠くに見ながら、ヴィヴァ・レオは言った。これで、味方は予想外の損害を受けることは無くなった。あとは、敵の攻撃に合わせて、要塞におびき寄せるだけだ。ヴィヴァ・レオの中で、勝利へのシナリオが描かれつつあった。
「あと一戦交えたら退くぞ。目一杯悔しがりながらな。歩兵大隊長達に伝えよ。盛大に負けて来いとな」
ヴィヴァ・レオは伝令兵に命じた。伝令は一礼すると馬に乗り、軍勢の中に消えていった。
「軍団長、間もなく巨兵大隊が合流します。後退のタイミングを少しずらして、敵軍を側面から攻撃してはいかがでしょう?」
参謀長のブリオンがヴィヴァ・レオに意見を述べた。ヴィヴァ・レオはあごに手をあて、少しの間考える仕草をすると、信頼する参謀長に言った。
「うまくいくと、要塞を使わずに敵を壊滅出来るな。よし、その手でいこう」
ヴィヴァ・レオは頷いた。ヴィヴァ・レオ達の右側に戦象と石兵と巨体が姿を見せ始めていた。
「本隊が見えたな。全員、気を引き締めろよ。まだ、奴らの真打ちが出ていないようだからな」
戦象に据え付けられた櫓の上で、メルキド軍巨兵大隊長のテコニックが櫓の中にいる部下達に念を押した。
「しかし、アルマダのルールでは、巨兵は龍騎兵に勝つとあります。いかにワイバニア最強の龍騎兵といえども、我々巨兵大隊には容易に手出し出来ないでしょう」
副官のプレヴューがテコニックに返した。テコニックはプレヴューをじっと見ると、呆れたように語気を強めた。