第四章 決戦前夜 第十四話
「・・・・・・均衡状態に入りました。鶴翼陣形を縮めますか?」
伝令からの報告を受け取ったメルキド軍参謀長のブリオンがヴィヴァ・レオに尋ねた。ヴィヴァ・レオはブリオンの案に頷くと、全軍に通達した。
「レグロン隊、ボルガ隊に連絡。敵軍団を包囲し、撃滅せよ!」
ヴィヴァ・レオの命令を受けとった両翼の将は直ちに軍を動かした。
「ようし、今度もワイバニア軍に土をつけさせてやろう。全隊前進」
「進め!ボルガの兵と合わせて、敵を挟撃するのだ!」
鶴翼陣形を縮めたヴィヴァ・レオの判断は正しかったが、今回はこれが裏目に出た。左翼のボルガ隊がわずかばかり他の隊より遅れてしまった。そして、このわずかな隙をハイネは見逃さなかった。
「今だ!第二陣の第二、第三歩兵大隊を敵左翼と本隊の間に割り込ませろ。敵を分断する。第一歩兵大隊は巨兵大隊を牽制しつつ後退!敵左翼を鶴翼の陣で包囲する!」
ハイネは全軍に命令を下した。第一軍団の機動はまさに電光石火とも言うべきものであり、敵将のヴィヴァ・レオを愕然とさせた。
文字通りあっという間にハイネ率いる第一軍団に包囲されたメルキド軍左翼指揮官のボルガは色を失った。
「何だ・・・・・・いったい、何が起きたというのだ!?」
「わかりません!敵に包囲されました!!」
そんなことはボルガ自身にも分かっていた。そのあまりの早さにボルガは何もできなかった。包囲された時点でこの隊の命運は尽きた。ボルガに理解出来たのはそれだけだった。




