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第一章 オセロー平原の戦い 第十話

ジークムント・フォン・ネルトリンゲンは今年38歳になる軍団長で、短く刈った黒髪と、隆々とした筋肉が特徴だった。彼はワイバニアの下級貴族に生まれ、幼い頃より上級貴族への反発心を持ちながら育って来た。


幼少期から喧嘩に明け暮れており、その腕っ節の強さは軍に入ってから大いに役に立った。彼は瞬く間に兵卒の中でもエリートである龍騎兵に抜擢された。龍騎兵となった彼は、水を得た魚のように空と陸を縦横無尽に暴れ回り、龍騎兵にとって相性の悪い巨兵すら何度も倒して来た。


故に彼は、”巨人殺し”と呼ばれ敵味方を問わずに恐れられる存在になった。武勲を重ねた彼は星王暦二一七七年八月三日、ついに第十軍団長に昇進した。直情径行の性格で用兵家としての才能は決して恵まれているとは言えなかったが、戦場では常に陣頭に立ち、味方を引き連れ突撃するジークムントは兵士達の信望も厚く、一万の兵を束ねる軍団長としての資格は十分に備えていた。


「相手は、ジークムント・フォン・ネルトリンゲン……まともにぶつかったら負けるな」


ハムレット砦で各隊長を集めた作戦会議におけるヒーリーの第一声がこれだった。


居並ぶ隊長達は戦う前から「負け」を口走る若き司令官に口を開けていた。


「殿下。そのようなことはおっしゃいますな。兵達の士気に関わります」


副将であるウォーリー・モルガンが言った。


「だが、事実だ。彼はワイバニア十二軍団の中でも指折りの猛将だ。近衛旅団が出ばったとしてもまず勝ち目はない。だが、猛将であるが故に、我々にも勝機がある」


ヒーリーは出撃前夜に隊長達と話し合った作戦案をさらに修正して各隊長に伝えた。


「これなら、いかに猛将としてもやすやすと我々を破れはしませんな」


タイタス警備隊、弓兵大隊長のフィリップ・ホーソンは言った。


「確かに。殿下がなぜ我々を集められたのか、分かりました」


アンドロニカス警備隊弓兵大隊長のアーサー・ワットが同意した。


「各隊長指揮下の兵士達にもこれを通達させてくれ。この作戦は、各隊の連携によって勝敗が決まる。そのことを忘れるな」


作戦の細部を確認しあったヒーリー軍の幹部達は、それぞれ指揮する隊に向かった。


ワイバニア軍第十軍団とヒーリー軍の死闘の時は刻一刻と近づいていった。

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