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第三章 メルキド侵攻 第四十七話

その頃、右翼の丘を警戒していたヴァルターは目を見開いた。


「右翼の丘のたいまつは兵力を分散させるための罠だ。全軍、左翼へ向かえ。敵の本隊を三個軍団で叩きつぶす!」


ヴァルターは全軍に方向転換の命令を出した。第五軍団が慌ただしく左翼に向けて動き出すのをヴィヴァ・レオは見ていた。そのまなざしはさながら獲物を狙う虎のようだったと傍らの副官は手記に残している。


第五軍団全軍が方向転換を終え、ボルガ隊に向かおうとした時、ヴィヴァ・レオの右手がゆっくりと振り下ろされた。その瞬間だった。


丘が震えた。


今まで聞いたことのない大音響の叫び声がワイバニア軍の鼓膜に響いた。


たいまつをかかげることもなく殺気をみなぎらせたメルキドの第一軍団の最精鋭がヴァルター率いるワイバニア第五軍団の背後を急襲した。


「なんだ!?いったい何が起きたんだ!?」


「ぎゃぁぁぁぁぁ!!!!!」


漆黒に塗られた鎧を身にまとったメルキド第一軍団は虚をつかれたワイバニア軍兵士を次々と殺していった。


「へ、陛下をお守りするのだ。直ちに歩兵大隊を向かわせろ!」


メルキドの奇襲を聞いたヴァルターは皇帝守護の職責を全うしようとしたが、ヴァルター個人にとってはこれが裏目に出た。戦力の立て直しもできぬまま、貴重な兵力を割くことになったのだから。


ヴァルター率いる兵力は9,000、対するヴィヴァ・レオ率いる兵力は10,000。指揮官としての能力、兵士個人の精強さはメルキドが上回っており、さらに背後を突かれた心理的影響もあって、ヴァルターの第五軍団は総崩れとなり、各大隊が壊滅に近い打撃を受けていた。


「あそこが司令部か。騎兵大隊と第一歩兵大隊、第一巨兵大隊を投入する。魚燐の陣で突っ込め!」


ヴィヴァ・レオは愛剣を引き抜くと、高らかに号令した。ヴィヴァ・レオは直率する兵力の3分の1をここぞとばかりにヴァルターの司令部に叩き付けた。司令部直衛大隊は参謀などの幕僚、伝令兵、司令部設営隊など、実戦力をほとんどともなわない場合が多い。いかに勇猛でならすワイバニア第五軍団と言えど、鍛え抜かれたメルキド最強の第一軍団の敵ではなかった。


ワイバニア兵達は陣幕を、そしてアーデン盆地の地面を紅く染め、次々と死んでいった。

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