第三章 メルキド侵攻 第四十五話
「軍団長!敵襲です!!!その数、約3個軍団!!」
「なんだと!?」
伝令の声にハイネは目を覚ました。寝間着のまま、ハイネはすぐさま指示を出した。
「直ちに第一、第二歩兵大隊を前方に展開。敵の攻撃を防ぎ、全軍展開までの時間を稼がせよ」
「了解!!」
伝令はすぐにテントを出て行った。
「さぁ、皆。恩を仇で返すのは不本意だが、祖国を守るため、メルキド人の誇りを示すため、今こそ戦いの時だ。全軍、突撃!!」
第一軍団の前方に展開していた部隊2,000人を率いるレグロンが剣を引き抜いて号令した。メルキド兵はレグロンの号令一下、たいまつを掲げて丘を駆け下りていった。
「全軍かかれ!!メルキドの武勇をしかと、見せてやれ!!」
ワイバニア軍左翼に展開中の3,000人を率いるボルガも指揮杖をふって言った。
「一体何が起こったんだ!!?」
「メルキド軍の奇襲だ!大軍だぞ!!」
寝込みを急に襲われたかたちになったワイバニア軍は混乱を収拾出来ず、その巨体をのたうちまわらせていた。
「敵軍、約3万だって!?」
ガウンを着た新第三軍団長のシラーはテントからのっそりと体を出した。彼の周囲では、慌ただしく兵士達が走り回っていた。
「迎撃するぞ。陛下をお守りするのだ。龍騎兵は出すな。この闇だ。同士討ちになるからな。歩兵大隊で時間を稼げ!」
シラーは左翼の守りを固めるため、いち早く行動に移った。シラーの第三軍団はヴァルターの第五軍団のすぐ後ろに続いており、より柔軟に対処することができた。
「まずは、情報収集よ。前方と左右の軍の数と情報をできるだけ詳しく教えなさい」
第五軍団の前方に位置する第七軍団を率いるベティーナも寝間着のまま行動を起こしていた。彼女は兵達のパニック状態を抑えるため、即座に情報収集を命じた。
「今、一番厄介なのは左翼の敵軍ね。私達も第三軍団の援護をするわよ」
ベティーナは部下に命じた。