第三章 メルキド侵攻 第四十四話
「まだ、ワイバニア軍は来ていないな。全軍、所定の場所で待機」
ヴィヴァ・レオは部下達に命じた。空がオレンジ色に染まる頃、ワイバニア軍正規軍11万がヴィヴァ・レオらメルキド軍の前に姿を現した。
「さすがはワイバニア軍。堂々たる進軍だ。全軍、このまま待機。夜を待って攻撃を仕掛けるぞ」
ヴィヴァ・レオはワイバニア軍の陣容を賞賛し、改めて攻撃の時間を全軍に通達した。ヴィヴァ・レオの率いる兵力は1万5千、11万のワイバニア軍とは7倍近い差がある。起死回生の一撃を与えるためには、夜襲しか方法はなかったのである。ヴィヴァ・レオ率いるメルキド軍は息を殺し、襲撃の時を待っていた。
「全軍を停止させよ。今夜はここで野営する。」
ジギスムントは全軍を停止させた。すでに敵中深く入り込んでいるが、兵は休養させねばならない。ジギスムントの判断は正しくもあったが、今回この場においては誤りだった。また、大軍で進軍してきたことがジギスムントの気持ちを緩ませていた。
「この大軍を相手にそうそう戦いを仕掛けてはこまい。ゆっくりと休めば良い」
余裕のなせる業か、慢心によるものか、この日のジギスムントは饒舌だったという。
星王暦2183年5月27日深夜、眠りについたワイバニア軍の夢が悪夢に変わる瞬間がやってきた。
「お眠りのところ悪いが、奴らの目を覚まさせてやろう。全軍たいまつに火をつけろ!作戦開始だ!!」
ヴィヴァ・レオは作戦開始の命令を出した。ほどなくして、ワイバニア軍の前方、そして左右の兵に数万のたいまつの灯が輝いた。