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第三章 メルキド侵攻 第四十二話

ハイネに遅れること約三時間あまり、ワイバニア帝国皇帝ジギスムントもアーデン盆地入り口、グレート・ウォールに差し掛かっていた。


「俺を威圧するか。身の程知らずな壁よ」


ジギスムントはそびえ立つ絶壁を馬車の窓越しに見て嘲笑した。父の時代、難攻不落と言われたアドニス要塞群を陥落させ、今はメルキドの奥深くまで侵攻している。世界制覇など、存外容易いものだ。支配者になったのちは……


「楽しそうね。ジギスムント」


艶やかな声がジギスムントの思考を止めさせた。向かいに座っていた右元帥のシモーヌがジギスムントにぶどう酒を差し出した。


「あぁ、楽しいさ。シモーヌ。世界をこの手にしつつあるのがわかる。メルキド人の流血に比例してな。俺は父にも歴代のワイバニア皇帝にもなし得なかった覇業を、絶対支配者への階段を一歩一歩上り詰めているのさ。これが楽しまずにいられるか」


「ふふふ。でも、上ばかり見て、足下を見なければ思わぬときに足をすくわれることがあるわよ」


「あぁ、わかっているさ」


体をくねらせて近づく妖艶な右元帥をひきよせ、ジギスムントは唇を重ねた。シモーヌは唇をつけたまま、皇帝に身を預けた。馬鹿な男、自分の野望にだけ目がくらんで、敵をまともに見ようとしないなんて。シモーヌはジギスムントと体を重ねながら心の中で彼をあざけっていた。


星王暦二一八三年五月二六日午後、メルキド軍はワイバニア軍の捕捉に成功した。というより、狭隘なアーデン盆地の中では、大軍であるワイバニア軍の全貌など、丸見えであった。


ワイバニア軍十一個軍団、十一万人は長蛇の陣を敷いて盆地を南下していた。その長い隊列はさながら天を翔る龍のようにどこまでも長く続いており、見張り所のメルキド兵達に恐怖心を与えていた。

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