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第三章 メルキド侵攻 第三十一話

「ベティーナ。貴公も軍団長になった気分はどうか?」


「私もマンフレートと同じ意見です。ワイバニア軍人として、最上の名誉ですわ」


年齢の割に若く、高い声でベティーナはハンスに返した。ベティーナ・フォン・ワイエルシュトラスは今年二八歳。二七歳のシラーとは士官学校時代の先輩、後輩の間柄だった。士官学校卒業後、前線の軍団勤務になったシラーとは異なり、翼将宮の参謀本部、左元帥ハンスの補佐官職、地方守備隊の参謀長を歴任、軍を率いた経験はないものの、その作戦立案能力は高く評価されていた。


「ふふ。そうか。遠路ベリリヒンゲンまで来てくれて悪いが、戦況は貴公らの到着を待っている状況だ。明朝すぐにメルキドへ発ってくれ」


「は! 了解しました!」


「貴公らの武運を祈る」


二人はハンスに敬礼すると、踵を返し、執務室を出て行った。


「明朝戦場へ……か。相変わらずハンスのおっさんは人使いが荒いもんだ」


翼将宮の廊下を歩きながら、シラーは小さく毒を吐いた。


「ふふ。左元帥閣下のことをそんな風に呼べるのって、あなたぐらいのものよ。ハイネ君と会うの、楽しみなんでしょう?」


シラーの隣を歩くベティーナは微笑んだ。


「ハイネのことを君付け呼ぶのも先輩くらいのものですよ」


シラーもまた笑ってベティーナに返した。ハンスの補佐官を務めていた頃、報告にやってくるハイネをベティーナは殊の外かわいがっていた。左元帥執務室にハイネがやってくる度、ベティーナはハイネをお菓子責めにしたのである。ベティーナにしてみれば、年下のハイネ可愛いだけなのであるが、ベティーナの態度があまりに直接的すぎるので、ハイネは執務室に来る度、この年上の女性の対応に困っていた。


ベティーナのこのような態度は十二軍団長最年少のバルクホルンに対しても同様で、素直なバルクホルンはこの菓子責め苦慮しつつも、ありがたく受け取っていた。


「それはそうと、いけないわ!急いで、ハイネ君とヴィクター君にあげるお菓子を買ってこなくちゃ! じゃぁ、また明日ね。シラー」


「せんぱーい。翼竜に乗せられるだけにしてくださいよー!」


廊下を小走りにかけていくベティーナの後ろ姿をシラーは見送った。やれやれ、この調子だと、明日は翼竜がとべなくなるくらいの菓子を買ってくるだろうな。シラーは明朝の異常事態を思いやり、ぼさぼさの癖っ毛をかいた。


星王暦二一八三年五月十六日午前一〇時、ワイバニア帝国新第三軍団長マンフレート・フリッツ・フォン・シラーと新第七軍団長ベティーナ・フォン・ワイエルシュトラスはメルキド公国の戦場に向け、飛び立っていった。

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