第三章 メルキド侵攻 第二十八話
「心配してくれるのかい? 嬢ちゃん。ありがとうな。嬢ちゃんも頑張れよ。ワイバニア軍を倒してくれ」
「死な、ないで……」
15歳の少女は大粒の涙をこぼして言うと、ヴィヴァ・レオはばつが悪そうに頭をかいた。
「お嬢様。ヴィヴァ・レオ殿にご迷惑をかけては……」
「いや、いいんだ。アリー」
ディサリータをたしなめようとするアリーをヴィヴァ・レオは止めた。
「嬢ちゃんを守ってやれよ。アリー。何があってもな」
「ヴィヴァ・レオ殿」
「ヴィヴァ・レオ!」
周囲の声を消すかのように、スプリッツァーはヴィヴァ・レオの名を呼んだ。
「……頼む」
親友同士の最後の会話はそれだけだった。だが、彼らの間にはその一言だけで十分すぎるほどだった。ヴィヴァ・レオは笑って親指を立てた。
「さて、そうと決まれば、俺は今日中にアーデン要塞に向けて立つとしよう。準備に取りかかりますので、では、失礼」
そう言うと、ヴィヴァ・レオは足早に会議室を出て行った。ヴィヴァ・レオが会議室を出て行くのを見届けると、スプリッツァーは円卓を囲む諸将に命令を下し始めた。
「ヴィヴァ・レオがワイバニア軍を足止めしている間、我々は一刻も早く戦いの準備を整えなければならない。ボナ・ムール率いる第三軍団は、ロークライン市民の脱出の手助けと護衛を頼む」
車いすに腰掛けた仮面の将軍は頷いた。
「ディサリータの第四軍団は補給物資の確保を」
ディサリータとアリーは頷いた。
「タワリッシ、ヴィア・ヴェネト、ローサ・ロッサ、ラシアン・フェイルードはミュセドーラス平野に先行し、地形を徹底的に調べ上げろ」
タワリッシら諸将も頷いた。
「ヴィヴァ・レオの思いを無駄にするな。メルキドの誇りにかけてワイバニアを叩きつぶすのだ!」
スプリッツァーは語気を強め、握りこぶしをつくって言った。円卓を囲んだ軍団長達は、車いすのボナ・ムール以外は皆立ち上がると、それぞれの任務に向かうため、散っていった。メルキド、ワイバニアの全面戦争が今、始まろうとしていた。