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第三章 メルキド侵攻 第二十七話

「決戦場はミュセドーラス平野。ここなら、地の利を活かした戦いができる。アーデン要塞に派遣する軍団長は……」


スプリッツァーは口をつぐんだ。目の前にいる六人はスプリッツァーが最も信のおける人間達であり、「死ね」とは到底口にできるものではなかった。国を守るため、非情になれ。そう自分に言い聞かせ、覚悟の上ではなしたはずなのに。スプリッツァーは奥歯を強く噛み締めた。


「ふ、ふふふははは! スプリッツァー。何を迷っているんだ? お前は。俺が行こう。こんな大役。皆には悪いが、俺しかできまい?」


第一軍団長のヴィヴァ・レオがスプリッツァーに言った。ヴィヴァ・レオとスプリッツァーは士官学校時代からの級友であり、君臣の間柄を超えた関係だった。ヴィヴァ・レオは主君への礼をあえて外して、級友に言った。


「俺に任せろ。スプリッツァー。ひと月の時間くらい、俺が稼いでやる。そのかわり、お前はきっちりワイバニアに勝つ方法を考えておけ」


「ヴィヴァ・レオ……」


メルキドを統べる若き総帥はヴィヴァ・レオの方を向けなかった。国を守るためとはいえ、親友の命を犠牲にするのである。義と情に厚いスプリッツァーは自らの決断の残酷さに耐えられずにいた。


「待て。お前にばかりいい格好はさせん。俺も行くぞ」


第二軍団長のヴィア・ヴェネトが言った。彼はヴィヴァ・レオと共闘することが多く、彼ら率いる二個軍団は五個軍団に匹敵するとさえ言われていた。


「俺だけで十分だ。ヴェネト。守勢に強いお前がいなくては、誰がスプリッツァーを守ると言うんだ?ヴェネト。スプリッツァーと俺の家族を頼む……」


覚悟を決めたヴィヴァ・レオに、ヴェネトは何も言えなかった。ヴェネトは相棒の肩をたたくと、固い握手を交わした。


「死に急ぐな。若いの」


ボナ・ムールが仮面越しに低い声でヴィヴァ・レオに話しかけた。ヴィヴァ・レオは笑って仮面の軍団長に返した。


「あぁ、無駄死にはしないさ。俺たちが時間を稼ぐ。だから、勝ってくれ。俺たちを無駄死にさせないためにも」


ボナ・ムールは静かに頷いた。ヴィヴァ・レオの裾を第四軍団長のディサリータが引っ張った。ディサリータは今にも泣き出しそうな顔でヴィヴァ・レオを見上げていた。ヴィヴァ・レオは優しく微笑むと、少女の頭を撫でた。


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