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第三章 メルキド侵攻 第十七話

デミアン要塞はアドニス要塞群中最も強固な要塞であり、ワイバニア軍に対して最も頑強に抵抗した。要塞司令官クバ・リブレの卓抜した指揮によって、十倍の兵力を持つワイバニア軍を一時後退させることに成功したが、ワイバニア新皇帝ジギスムントは配下の軍団長を一喝し、一斉攻撃を命じると、たちまちのうちにメルキド軍の戦線は崩壊し、攻撃開始から七時間後、デミアン要塞守備兵の全滅によって、要塞は陥落したのである。


その戦いの凄惨さは五要塞の中でも群を抜き、要塞はメルキド、ワイバニア両軍の兵士の死体で埋め尽くされ、後日、夢にうなされる兵士が多数出たという。


「あたしゃ、軍に入って以来初めてだよ。こんな戦場」


愛用のメイスを地に刺してマルガレーテは言った。今年三二歳のマルガレーテはワイバニア屈指の勇将と名高い。幾多の戦場を駆け抜けてきた彼女ですら、要塞内の惨状は耐え難いものだった。


「あぁ、全くだ……」


第六軍団長のリピッシュもうなづいた。軍団長の中でも、グレゴール、ヒッパーに次ぐ戦歴を持つ彼ですらも、この戦いほど凄惨なものは経験したことがなかった。地獄とはこのことを言うのだろう。ワイバニア歴戦の軍団長は血の匂いしか感じない要塞の中で思った。


デミアン要塞を取り囲むワイバニアの軍勢の中で大勢の護衛に囲まれたテントがあった。ワイバニア皇帝、ジギスムントの本陣である。弓矢の狙撃を防ぐた、鉄板が敷かれた天蓋の下で、若干二一歳の皇帝は要塞陥落の報を聞き、酷薄な笑みを浮かべたと言う。


「おれの道を邪魔出来る者など誰もいない。誰もな。神すらも……」


野望の階段をまた一段上ったことに、ジギスムントはこの上ない高揚感を感じていた。世界をこの手に握りつつある感覚がジギスムントの持つ野心と狂気をさらなる高みに昇らせていった。


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