コント:落とし物探し
ボケ:見つからないなぁ、全くもって見つからない。
つっこみ(以下、つこ):はぁ、今日も嫌なことばっかだったなぁ……うわぁっ!
ボケ:んっ? 使い勝手の良さそうな男がやって来た。
つこ:唐突に失礼……というか変態だ……。
ボケ:ワタクシのことかね?
つこ:そりゃそうでしょう、道端でバスローブなんて。
ボケ:ほほう、この右手に持ったワイングラスは見えないのか。
つこ:いやそこまで詳しく身なりを言う必要は無いでしょう。
ボケ:じゃあ見えているのかねっ!
つこ:見えていますよ、中に入った赤ワインも見えています。
ボケ:すごくいい目をしている!
ワタクシの探し物を一緒に探しなさい!
つこ:えぇー、嫌です、命令口調ですし。
ボケ:まさか使い勝手が悪いとは。
つこ:それでは失礼します。
ボケ:ちょ! ちょい! ちょっと待てぃ!
つこ:いやいや、触らないで下さい。
ボケ:ちょい! ちょぉぃい! おちょいっ!
つこ:おちょい?
ボケ:おちょいだよ、是が非でもおちょいだよ。
つこ:意味が分からないんですが。
ボケ:一緒に探し物を探してくれんか!
探してくれたらすごくいいモノをあげるかもしれんぞ!
つこ:かもしれんって……。
ボケ:是が非でもかもしれん、かつ、おちょいだよ!
つこ:後者の意味は全くもって不明ですが、分かりました。
何かしつこそうなんで、もう一緒に探します。
ボケ:是が非でもしつこくない。
つこ:そこは否定するんですか。
まあいいや、何探しているんですか。
ボケ:チャリの鍵だ。
つこ:そのなりでっ?
いや! このなり自体もおかしいけどもっ!
ボケ:いやいや、話を聞いてくれ。
つこ:そんなことより探しましょうよ。
ボケ:聞いてくれ!
つこ:あっ、これですか?
ボケ:あ、鍵……違う! そんな天草四郎的なキーホルダーは付けてなどいない!
つこ:何でシロクマのキャラクターを天草四郎的なキーホルダーと表現をしたのだろう……。
ボケ:とにかく話を聞いてくれ!
つこ:じゃあ探しながら聞きますから。
ボケ:是が非でも聞いてくれ!
つこ:聞くって言ったじゃないですか! しつこいなぁっ!
ボケ:是が非でもしつこくない。
つこ:早く話して下さい。
ボケ:それでは、コホン。
ワタクシはウェディングドレスを着ることが趣味で。
つこ:はいはい、もう小さなことでは驚きませんからね。
ボケ:ウェディングドレス姿でチャリに乗って、立ちこぎをしていたんだ。
つこ:あぁ、はいはい、愉快ですね。
ボケ:そうしたらどっかのガキに石を投げつけられて。
つこ:そりゃそうですね。
ボケ:自転車から飛び降りて、蹴りを喰らわせてやったのだ。
つこ:そりゃ良くないですね。
ボケ:逃げるガキ、追うワタクシ。
つこ:変態というより変質者ですね。
ボケ:しかし結局捕まえることは出来ず。
自転車を置いてきぼりにしたところへ戻ってみると、なんと無いのだよ。
つこ:ふ~ん……って! チャリの鍵どころか自転車も無いじゃないですか!
ボケ:うわっ、急に驚いた、何か怖っ。
つこ:自然な反応ですよ! 自転車! 自転車じゃないですか!
ボケ:全く、話の続きをしっかり聞かんか。
つこ:……まあ聞きましょう。
ボケ:ワタクシは自転車が無いことに失望し、家に帰り、シャワーを浴びた。
つこ:探せよ! すぐに家に帰るなよ!
ボケ:いや、すぐではない。
つこ:あぁ、一応探したんですか。
ボケ:いやいや、居酒屋でウーロンハイを20杯ほど。
つこ:相当飲んだ! というか探せよ!
ボケ:君は怒る時、敬語の呪縛から解き放たれるな。
つこ:僕の口調の話はどうでもいいんだよっ!
ボケ:まあシャワーを浴び、バスローブを着て、ワインを持って、今チャリの鍵を探しに来ている。
つこ:……鍵じゃなくて、自転車を探したほうが早いですよ。
ボケ:いや鍵だ、鍵さえあれば元の自転車も復元出来るんだ。
つこ:逆! 普通、発想が逆!
そんなやり方をするなら新しく自転車を買ったほうが楽!
ボケ:全否定じゃないか。
つこ:その通りだよ!
ボケ:今のは、その通りですよ、のほうが好みだ。
つこ:どうでもいいだろ! もうアンタに丁寧な言葉は使いたくねぇよ!
ボケ:なんだい、全く。
庶民のくせにつけ上がりやがって。
つこ:何様だ!
ボケ:いやいやいや、ハハハハっ。
つこ:何大人の対応ぶっているんだよ!
ボケ:くいっ。
つこ:このタイミングでワインを飲むなぁっ!
ボケ:げぷぅううううう~。
つこ:ワインを軽く飲んだだけで深いゲップをするな!
ボケ:ワインは少し苦手なんだ。
つこ:じゃあ飲むなよ!
というかもう行くからな! 勝手にしてろ!