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終末のダンジョン  作者: .犬
終わりの始まり。
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32/35

決戦

 ――行ってくるね。


 一通りの仕度を終えた二人はリーリスとジョイ・ジョイに顔を出した。


 そこで二人は十五階層に二人で潜る事、その理由を説明した。険しい顔をリーリスたちは浮かべたが、何とか納得はしてくれた。そんな二人に『行ってくるね』とノアスとエリィは伝えてダンジョンに足を運んだ。


 バイバイでも、またねでも、じゃあねでもない『行ってくるね』その言葉には再び戻って来るという意味が込められている。


 ノアスとエリィは順調にダンジョンを進んでいった。戦闘を最小限にする為、一つ一つの階層の特徴やルートを低階層関わらずに考えた。


 結果、新たなルート開拓で順調に進み、十階層に辿り着く。



「ここからは静かに。だよね?」



 耳元で声を絞ったエリィがノアスに囁く。


 ノアスはコクリと頷いて息を殺す。


 以前見つけた八階層からの抜け道。それを使って九階層を無視した二人は、同じくその時に死を感じた十階層を深く警戒した。


 幾つか小さな戦闘を乗り越えて二人は念願の十五階層に降り立つ。


 今までの静寂階層とは違い、十五階層には無言の圧力のようなモノを感じた。


 空気はとても重く、誰かに見られているかのように辺りに不気味さを感じる。きっと魔物なのだろう。しかし魔物たちは一向に二人の前に顔を出さない。



「話しても大丈夫?」


「ああ。やっと着いたな」



 鼓動音がやけにうるさくて震えている手をグッと押し殺すようにノアスは手を握った。



「不気味だね」エリィが最初に思った感想だ「わたし達に気付いてるのに誰も襲ってこない」


「前来た時もそうだった。きっと奴に言われてるんだろう」


「立ってるだけで精一杯だなぁ。ここ」



 この階層だけ重力が違うように身体の重さは取れない。二人の一歩は無意識の内に小さくなっていき、それが二人の心境を表していた。


 やがて瓦礫で塞がれた一つの入り口に到着する。



「ノアス君。どうしたの?」



 隣のノアスは唇を噛んで険しい顔をしていたのでエリィは尋ねた。



「この先……この瓦礫の先が奴の巣だ」


「……うん」


「それだけじゃない」ノアスは切なそうな表情で瓦礫に手を置く「この瓦礫。最後にイースが俺を助けてくれたんだ。瓦礫の先にいた俺たちは絶望的で、イースは俺をこっち側に投げた。あいつは、自分の絶望的状況にも関わらず俺に笑ったんだ。『あいつを宜しく』って。イース。来たよ。あんたらが愛してたエリィと。あの時はありがとう」



 瓦礫に手を当ててノアスは切なさが含まった優しい言葉を紡ぐ。



「そっか。お父さんが。ありがとう。おかげで出会えたよ」



 エリィも瓦礫に手を当てて呟く。



「じゃあ、行くぞ」


「うん」



 ノアスが雷のエレメンタルを使って瓦礫を飛ばす。


 瓦礫が無くなりハッキリと現れた境界線。


 ノアスとエリィはゴクリと唾を飲み込んで一歩踏み込んだ。


 ――!!!!


そこはまるで別世界。


 元々闇の世界の十五階層であったが、この空間はそれ以上に闇だ。


 何も見えない。方向さえ判らなくなってしまう程に何も。少しでも気持ちが折れたらそのまま引きずり込まれてしまうような感じがする。


 ノアスとエリィは二、三歩進んで試しに光石を幾つか投げるが、闇に呑み込まれてしまう。


 既に来た道はどちらなのか判らず、二人は淡々と足を進めるしかない。


 進んでいた足はやがて止まった。



「何か……いる」



 最初に足を止めたのはエリィだ。


 ノアスはエリィが見つめる先に意識を集中させる。

 明らかに何かがいる。


 ノアスは何者かの気配に気づく。そしてその何者かが、一体何なのか二人は考えることなく答えに辿り着く。



「「欠片持ち階層主」」



 息をするように二人は呟いた。


 ノアスとエリィの言葉を聞いた階層主は、久方ぶりの敵に胸を躍らせ、



「ブオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォオオオオオオオオオオ!!!!!」



 闇すらも脅かす殺意の咆哮を叫び散らす。


 一つの咆哮でノアスの意識は炎のように大きく揺らいだ。


 恐怖で震える足を引き返してしまいそうになったが、



「大丈夫。ノアス君。独りじゃないよ」



 温かな手に包まれたノアスは意識を覚醒させる。



「――ああ、終わらせよう」



 闇の中敵の姿は目視出来ない。けれど階層主にはノアスたちが見えてるのか、的確に素早い動きで迫って来る。


 ノアスとエリィは離れ離れにならないように、お互いに一定の距離を保って走る。


 しかし辺りは暗闇だ。相手の支配下でいつまでも逃げていては、勝利どころか状況は一転しない。

 そこで名乗りを上げたのがエリィだった。


 エリィは自らが持つ第六感を使って相手の場所を的確に把握するという。確かにエリィは意識を集中させればその者の足音や鼓動音を把握する事が出来る。目の見えない彼女はそうして幾度の死線を乗り越えてきたのだ。 



「エリィ。頼む」


「任せて」



 エリィは耳に意識を集中させる。



「ノアス君。右方向!」



 エリィがそちらの方向を見張った。


 ノアスはそれに返事をして雷のエレメンタルを放つ。


 バチバチ空気を震えさせる雷王の一撃は、外れはしたもののかなり正確な位置に砲撃されたことが判った。


 相手の姿が見えない事とまだ行動が読めない為、エリィの魔術を当てるのは困難だ。つまり今はエリィが目に、ノアスが腕となり戦うしかない。



「ブオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォオオオオオオオオオオ!!!!!」



 階層主が殺意の咆哮を上げて大きな足音と共に接近して来た。



「――!?」



 ただならぬ殺気をいち早く感じたノアスは、雷撃を地面に放ちエリィと共に距離を取った。



「ノアス君。相手の形わかったよ」



 今の接近でエリィは奴の姿を捉えたらしい。



「デカいか?」


「ううん……むしろ小さいと思うよ」



エリィの声音は驚きの色に染まっていた。



「どういう意味だ」


「――人間、だよ」



 エリィの言葉に一瞬意識が削がれたが、直後襲って来た階層主の攻撃によってすぐに意識が戻る。



「人間? んな訳ないだろ!」


「ブオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォオオオオオオオオオオ!!!!!」



 前方で人間とは思えない声で叫ぶ階層主。



「あんな声出してんだぞ!」


「分からないよ。けど形は人間だよ」



 ゴクリと唾を飲むエリィとノアス。

今回は欠片階層主戦をやり切りたいので、二部構成で。

すぐ投稿致します。

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