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終末のダンジョン  作者: .犬
終わりの始まり。
23/35

すれ違い

 ノアスはモヤモヤする気持ちを抱いて窓から外を覗いた。

 

 特に変わった様子の無いつまらない景色。


 あの日を境にエリィはノアスの前に顔を出さなくなった。


 だからなんだ、と自分の心に言い聞かせるがモヤモヤするこの気持ちは拭えない。


 別に元の生活に戻っただけなのに。そう思うが、きっと記憶の最後にあるエリィの姿がノアスの心を曇らせているのだろう



「何であいつ元気なかったんだ」



 色々な理由が浮かぶ。例えば今まで経験した事のない死線、敵の数。二度と戻れないんじゃないかという不安。しかし彼女もモグラであり、異名を持つ者。そんな彼女がそれらの事で長く引きずるとは思えない。


 ノアスは起き上がって顔を洗った。気持ちを切り替えて、



「あー。ダメだ。分からん。一旦忘れよう。それよりも確かめないと行けない事があるしな」



 ノアスはエリィの言葉を思い出す。



 ――リーリスの両親は行方不明。



 それはつまり、そういう事なのか。


 もしかしたらすべてが繋がるかも知れない。


 そんな徐々に大きくなる希望と、出会った後にどう説明するか、どのような罵倒もしくはそれ以上の事をされるのか、様々な不安や罪悪感を抱いてノアスは外の世界に出た。


 

  夕方まで外を歩き回ったが結局リーリスとは会えなかった。


 考えてみればリーリスとの接点何てエリィ以外知らない。もしかしたらダンジョンに潜っているのかも知れないと思ったノアスは、少しばかりダンジョンにも顔を出したが見つけることは出来なかった。


 今日は諦めて翌日出直そうとした時だ。



「エリィ?」



 街の商業エリアでノアスはエリィを見つけた。


 人だかりに紛れて、人と人の隙間に見えた銀髪少女は間違いなくエリィである。



「おーい、エリィ!」



 ノアスが大きな声で呼ぶと、エリィが肩をビクンと脅かせて恐る恐るノアスの方に振り返った。



「あ、の、ノアス君!?」



 顔を引きつらせぎこちない言葉でノアスに返事する。



「何してんだ」



 ノアスはエリィに近づく。



「ん、んー、買い物? かな」



 やはりぎこちないエリィ。



「そっか。あのよ、別にいいんだけど。何か悩みでもあるのか? そのー、最近顔出さないし」


「い、いや! そんなことないよ。うん。そう言えば、ノアス君は何でここにいるの? ダンジョンの帰りとか?」


「いや、今日は違う。リーリスをちょっと探しててな」


「リーリス?」


「前に行ったかも知れないけど、もしかしたら俺が昔組んでたメンバーがリーリスの両親かも知れないから確かめたいんだ。リーリスの居場所とか知らないか?」


「……知らないよ。というかきっとリーリスの両親じゃないと思う。うん。絶対。だからノアス君はリーリスと会わなくていいと思うよ」



 エリィがやけにそわそわして視線をあちらこちらに忙しく移動させながらノアスに言う。



「え」


「おーい、エリィ。そろそろ行くよ」


「あ、ごめんね。わたし人待たせてるから。じゃ、じゃあまたね」



 エリィは早口で言葉を吐き、ノアスに喋らせる隙を与えない。


 自分の言葉を言い終えたエリィはそそくさと後ろを向いて声がした方向に走り去って行く。


 ノアスは「あ、おい」と言葉をかけるがエリィは振り向かず、赤髪の綺麗な女の元へと行ってしまう。


 赤髪の女は何かをエリィに伝えた後、去り際にノアスの方に視線を飛ばす。

 

 その視線はどことなく不思議であった。

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