終末
人間なんて信用するに値しない。
いくら自分が持つべきものを持ったって人に好かれるとは限らない。
美貌、名声、恋人、家族。持っていても価値がない。人に好かれようと思っても自分で出来ることなんて無いに等しい。評価は他者によってされるもの。コントロールできない。
皆が口を揃えて言う。自分磨きをすればいい。人生を充実させろ。そうすれば自ずと幸せになるチャンスは巡ってくるよ。
はっ。くだらない。そうして美貌を手に入れた私はどうなった?勝手に妬まれ嫌われ蔑まれ。
生きている価値なんて無い。
見切りをつけた私は幾分生きやすくなった。
いや、生きやすくはなってないか。
だって私は今この悪魔の果実を手にこの銀世界に横たわっているのだから。
人に嫌われ、怖くて逃げた先にあるように思えた光はいつの間にか消え、小さな味方にも裏切られ。
もう逃げ疲れたよ。
もういいんだ。このまま果実にひとつの歯形をつけるだけで私は自由になれる。
私のこの逃亡が終わったらどこかのネクロフィリアが私を汚す。私の守る価値のなかった純潔を思い切り壊してくれる。
絶対に私を愛さないでね。自分の野生に身を任せて猛獣がごとく私を壊して。
私の生きた証を全て壊してください。どうか。
口に含んだ赤い果実からは甘く洗練された香りがした。
青色の毒々しい液体が中から滲み出てくるのがわかる。
ああ死ねる⋯⋯