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逆さ虹の出る池

作者: 長谷川ラジオ

森の学校は3時間目の途中です

女狐の先生がみんなに教えているのに、後ろの席にいるリスとヘビは、いっしょうけんめい聞かないでおしゃべりばかりしています

気にせず教えていた先生ですが、とうとう行儀の悪い二匹を注意しました

「リスくんとヘビくん、お話を聞いていますか。

赤キノコと白キノコ、毒のあるのはどっちですか。」

「こういう時はそうじゃなさそうなのが、毒きのこなのさ。」

リスとヘビは白きのこが毒だといいました

先生は、1番前の席でいっしょうけんめい聞いているクマにも同じ質問をしました

「クマくん、赤キノコと白キノコ、毒のあるのはどっちですか。」

クマは赤きのこが毒だといいました

「では皆さん、試しに一口ずつ毒でないと言ったものを食べてください。」

ムシャムシャムシャ

クマは「あっ、これおいしい。」といいました

リスとヘビは「うーん急にお腹がいたくなった。」と言って便所に行ってしまいました


その時、コマドリの声が響きます

キンコンカンコン「3時間目終了です。」

今日の授業はこれで終わりです


さいごに、女狐の先生からみんなにお話がありました

「皆さんに、悲しいお話があります。

今年は寒くて、どんぐり池の半分が凍ってしまったので、たくさんの魚が死んでしまいました。

 このままだと、魚を食べる量をだいぶ減らさないといけません。」

リスが質問をしました

「これまでどおり魚を食べるには、どうすればいいですか。」

「よい質問です。魚は卵を産むので、また増えてくるだろうと思います。

 しかし、この冬に食べる魚がいなくなってしまいました。

 これまでどおりに食べるとしたら、魚を別の池から運んでこないとなりません。」


それを聞いて、リスは手を上げました

「おれが別の池から魚をとってきます。だれか一緒に来てくれるものはいませんか。」

リスと仲の良いヘビが言いました

「あぶないから一緒に行きましょう。だれか他に一緒に行くものはいませんか。」

クマは遠くに行くのが怖いので、最初は行きたがりませんでしたが、他に行くものがいないのでしぶしぶ引き受けました

「一緒に行くけど危ないことはしないでね。」


リスとヘビとクマの三匹は、別の池まで魚をとりに行くことにしました

でもいざ行こうと思ったら、どこへ行けばいいか分かりません


三匹は、ねっこ広場のねっこおばあさんに相談することにしました

ねっこ広場は森の中央にあるたくさんの子供が遊んでいる広場です

広場までは簡単に入れますが、まずそこにいる門番のゾウガメに事情を言って通してもらわないと、ねっこおばあさんには会えません

三匹はそろって言いました

「ねっこおばあさんに相談があります。ねっこおばあさんに会わせてください。」

ゾウガメはけわしい顔のままです

「おまえらのような、いたずらこぞうが、相談と言っても、いたずらにきまっている。」

ぜんぜん通してくれません

「いたずらじゃないよ。今日はほんとの相談なんだ。」

やっぱり通してくれません

三匹が困っていたとき、後ろを女狐の先生が通りました

「あらいったい、こんなところでどうしたの。」

「先生、ねっこおばあさんに相談に来たけどいたずらと思われて通してもらえないんだ。」

「ゾウガメさん、これはいたずらじゃなくて本当の相談よ。通してあげてください。」

女狐の先生が言うのでゾウガメも表情を変えました

「先生が言われるのなら本当の話でしょう。分かりました。ねっこおばあさんに会わせましょう。どうぞこちらです。」


ねっこおばあさんは、森のものが困った時に相談をする、村の知恵袋です

「ねっこおばあさん教えてください。どんぐり池に魚を放すには、どの池からとってくるのがいいですか。」

「つり橋を渡って、隣の村へ行きなさい。

 隣の村の池ならば、まだ凍ってないでしょう。

逆さ虹が出る時に池は魚で満たされるという言い伝えがあります。

気を付けて行くんですよ。」


ねっこおばあさんに教えてもらった三匹は、隣の村へ向かって出発しました

リスは魚を入れる袋と、しかけを作るためのはさみとのこぎりを持ってきました

ヘビは食べ物をたくさん持ってきました

クマはテレビやラジオやトースターや発電機など、心配していろいろ持ってきました

しかしクマは荷物が多すぎて、前に進みません

半分くらいに荷物を減らしてようやく前に進みました


隣の村へ行くのには、まず峠を越さないとなりません

峠の道は細くて急なので、自動車や自転車は入ってこられません

三匹はゆっくり歩いて峠をこしていきました

みんな疲れてきましたが、特に荷物の多いクマはヘロヘロです


それを見てヘビがみんなにおにぎりを配りました

「おにぎりおいしいねー。」

リスとクマは、ヘビにありがとうと言いました


ここまで来たらあとは下りだけです

クマは大荷物ですが、なんとか下りなら歩けそうです

三匹はゆっくり峠を越えました


ふもとまでたどり着くと、そこにはおんぼろのつり橋がありました

つり橋は傾いていて、ところどころ壊れています

しかし隣の村に行くためには、このおんぼろ橋を渡るしかありません


リスが思いきって言いました

「怖がっていてもしょうがない。ここまできたらこの橋を渡って隣の村へ行きましょう。」

最初にリスがおんぼろ橋を渡りました

「大丈夫だよ。みんなも渡っておいで。」

次にヘビが渡りました

「本当だ。なんともないよ。」

最後にクマが渡りました

しかしクマは重かったので、途中で橋が壊れだしてしまいました

「わー落ちるよー。助けてくれー。」

リスはヘビをおさえて、ヘビは長くのびて、落ちかけたクマを助けることができました


三匹は協力して隣の村にたどり着きました

ねっこおばあさんの言ったとおり、隣の村の池は凍っていませんでした

池にはたくさんの魚がいるようです

この池ならば魚をとっても大丈夫そうです


「よーし、たくさんとって、どんぐり池に持って帰るぞ。」

リスとヘビは、落ちていた材木や竹などを使って、魚をとるしかけを作りました

クマは背が高いので、池の深いところまで入っていって、作ってもらったしかけを取り付けました

バシャバシャバシャ

三匹は池にしぶきをたてて、しかけに魚を追い込みました

バチャバチャバチャ

しかけに入ってきた魚が飛び跳ねます

たくさんの魚がとれました


三匹はとれた魚を手分けして運ぶことにしました

リスは小さい袋に入れました

ヘビは中くらいの袋に入れました

クマは大きい袋に入れました

三匹は袋にいれた魚をできるだけ元気なうちに、どんぐり池に運ぼうと約束しました


行きに通ったおんぼろ橋は壊れてしまったので、少し遠回りになりますが、もう一つの別の橋を通ることにしました

こちらの橋はまだ新しいので、魚を入れた袋のような荷物を持って渡っても大丈夫そうです

それでも行きにおんぼろ橋で落ちかけたクマは、橋を渡りたがりません

「ぼくはいいから先に行っておくれ。」

リスとヘビは、クマから魚の袋を預かって、それを持って橋を渡りました

そしてリスはやさしく言いました

「この位重くて大丈夫ならクマでも大丈夫だよ。」

ようやく説得されてクマもおそるおそる橋を渡りだしました

一歩一歩、確かめるように渡ります

真ん中へんまで行った時、急に大慌てで走って渡りました

ゴール、反対岸に到着です

心配していたクマも無事に橋を渡ることができて、ほっと一息です

なんとか三匹はもとの森にもどることができました



リスとヘビとクマの三匹は、魚を持ってどんぐり池にやってきました

どんぐり池は真ん中で分かれて半面がガラスのように凍っています

三匹は持ってきた魚を袋から出して、凍ってないところから放しました


魚はニジマスです

元気よく飛び跳ねた魚のむれは虹を描きました

そしてガラスのように凍った池の表面はそれを映し、逆さ虹となりました


リスとヘビとクマの三匹の努力のおかげで、森ではこの冬も魚が食べられそうです


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