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ドラゴンディセンダント  作者: ドクターわたる
竜の迷宮
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3-3-1.いよいよ修学旅行も終盤で①

古い教室に夕日が差し込んでいる。

教室はガラーンとしていて中にいるのは僕こと神明全だけだ。


30対ほどの机と椅子が整然と並ぶ中、教室の中央の椅子に腰かけて机に肘をついている。


ここに来るのは初めてではない。

まあよく見ると中学の教室に似ていないこともないが細部が異なるようだ。


おそらく今は半覚醒状態。


本体は修学旅行の旅館でぐっすり寝ているはずだ。


修学旅行一日目の自由行動はテログループと武器商人のせん滅で。

二日目は色んな約束が生まれたが最終的には成層圏を突破して。


そう、そして修学旅行三日目の自由行動は我らが“Z班”は終日睡眠することに決めた。


おそらく他の“Z班”の連中は僕の周囲で寝ているはずだ。



初日にテレポートをしまくって魔力をほぼ枯渇させて、二日目にも人造魔サクラを異次元に送り込んで幼馴染を成層圏外に連れて行ったせいで魔力消費の限界を超えた。


というわけで今日は寝るしかないのだ。


身体は寝ており精神も休んでいるが僕は時間がない。

以前から時々行っている方法だ。


一部の能力を覚醒させて休みながらも夢の中で情報を整理したり計画を練ったりイメトレしたりと寝ながら修業がある程度できたりする。


完全に覚醒してもこの架空の教室で考えたことは全て残るというわけだ。

夢を使って膨大な情報を記憶する魔術があるがまあその応用といったところだ。



神明家・・・というのはもともとこの国の陰陽道の開祖で竜神明王家が由来であり、さらに古くは4000年前に滅んだフランヴィーネ王朝の生き残りグランヴィーネ第一王朝に起源を発する。


竜王といっても古い膨大な遺物という財産があるだけで大して現在は権限もないが、神明家の長である竜王は現在空位である。


父が最後の竜王だったが来年には次の竜王が誕生するだろう。


僕が生きていなければ・・・。

義理の弟の“神明帝”か義理の妹の“如月葵”のどちらかが新竜王となるのだ。


父には4人の異母兄弟がいた、全員が母は別だ。


姉上はすでに王位継承権を放棄して世捨て人のようになっている、大学も休学中だとか。

長男の僕は呪詛で長くない。

同い年で次男の神明帝は竜族だが霊眼を持っていない。

次女の如月葵は竜族で霊眼持ちだ・・・TMPAも高い。


神明帝には母方の鷺藤家がついており政治的には強いが如何せん能力が低い。

対する如月葵は仲間や友人が多くても政治的には弱いが能力は異常な高さだ。


僕が呪詛を受けたのは召喚士になる前だ・・・つまり如月葵には呪詛は通用しない。

それどころか高校生最強クラスでかつ竜族特有の精神攻撃は効果がほとんどなく、霊眼でさらに強固に守られている。大ダメージを負っても一瞬で全快する特殊能力もある。


そういう意味で如月葵への暗殺は困難極まりないだろう。


不思議なのは父上だ・・・なぜわざと毒殺させたのだろう・・・魔族の竜殺の呪いのかかった恐るべき猛毒を盛られたのだ、毒物が飲み物に混入されていた。5歳の時だったが同時に僕も毒殺されかけたが僕に対する毒は一般的なもので助かった。


まあ未だに情報が少ない・・・父の件は保留だ。


如月葵と出会ったのは5歳の終わりごろ・・・大阪の施設だ。

父とは入籍していないわが母、如月弥生の養女とのことで・・・葵の実際の母親は不明だ。


一般には公的には僕と葵の母は如月弥生となっているが実際は違う。

母は別人でひょっとすると・・・最近思うのだが父も?


まあそれもいい。

竜王の霊眼を持っていて戸籍上、父の子なのであれば本当の両親なんて問題ない。

“ニルヴァーナ”からの情報を整理すると、面白い可能性が示唆されるが。


予言の最中に消滅したフォックスは葵を救世主と呼んだのだろうか。

今となってはもう分からない。




・・・僕が高1で葵が中2の時に絵を送ってやった。


黒い卵が描かれた古い画を・・・王家に伝わる古い禁忌の一つ・・・。


画に封印されていた卵・・・それが葵の騎竜になった・・・強力で凶悪な火竜・・・“紅蓮返し”だ。

イリホビルで会った月島名誉会長の騎竜も“紅蓮返し”だった・・・。


月島名誉会長は“紅蓮返し”はこの世に1体のみだと言ったが2体いたわけだ。

もともと双子の竜?双頭竜というのはあるが・・・。

あるいは無関係な個体だろうか?



小さいころから霊眼で診て葵に火の親和性が高いのは知っていた。

召喚士になる前に霊眼に目覚めたのも知っている。


僕の霊眼と違って探知的な能力は皆無であったから、戦闘寄りの能力だろうとは予想がついていた。


そして如月葵は恐るべき火竜の召喚士として成長を続けている。


だが予想外のことが春に起きた。


テログループ“ゲヘナ”だ。

今思えば何故か“ゲヘナ”は如月葵を狙っていた。

まあ“ゲヘナ”は壊滅してしまったからよく分からないが。

導師からもう少し話しを聞いておくべきだったか。


いつの間にかこの古い教室には映写機が登場しており黒板に映像が映し出されている。

映し出されているのは僕の記憶だ・・・。


記憶を反芻して見落としがないがチェックしているのだ、あるいは吟味できる。


“ゲヘナ”が復活させてしまった魔族側兵器・・・古代の合成竜アジ・ダハーカは実際予想外だった。

思ったよりずっと強かったのだ、そしてこの竜については第3高校の江上明日萌アスモが何故か詳しかった。


そういえばアスモは最近見かけないな・・・インハイの時に大騒ぎしていたが。


黒板の映像にはインハイの時のアスモが映し出される。

相変わらず何を言っているのか見直しても分からない。


「そ、そうじゃなくってですね。なにかを壊しちゃいたいとか思うことありますでしょう?比較的誰でもですけれど?私とかも?この世とかも?」「ありませんね」


「いえいえ今お話しさせて頂きました通りドラゴンディセンダントの女神枠、江上明日萌であります。アスモちゃんと人は呼ぶであります」


気になっていたので思い出しているのだが・・・うーん。


握手した直後だ・・・。

「いやぁ!!きゃあぁぁぁぁぁ!!」

「そんなそんな、そんな・・白色光・・・純粋な・・・無垢な白色光なんて・・・そんな・・・そんなあなたは・・・該当者が・・・もう・・・あああ、そんな全部・・・ぜんぶ!であります・・・ぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああ!」


無垢な白色光・・・?

なんのこっちゃ。


そう、走り去っていくアスモを見てアフロはなんて口走っているが見ろと言われたのだった。

「ああ?・・・えっと、母様に連絡しなきゃとかなんとか口走ってるけど?」

「魔晶石が光って母親に連絡か?母親が何物か分からんと意味がわからんのう」

アフロ隊長の言う通りだな・・・意味が分からん。


まあいいか。


西園寺家に食い潰されるだけの神明家の最終兵器として調整していた如月葵はアジ・ダハーカ戦でいくつか自爆技を使ってしまった・・・これは痛手だ・・・リキャストは数年だ・・・あの桁外れの攻撃はもう使えない・・・西園寺グループと真っ向勝負でも私設軍隊を壊滅させただろうが・・・。


どちらにしても年内には使いようがない。

自爆技で弱体化していた葵は桔梗との果し合いで敗れて“ドラゴンディセンダント”はチームと教官ごと第一高校へ編入させられるはずだったが・・・そう、彼だ・・・緑川尊だ・・・彼が原因不明の死をとげたために保留されたままになっている・・・事実上強制転校の話しは立ち消えのようだ。不遜だがそういう意味では役に立ったか。


彼の死の前後は桔梗と葵の魔晶石に付けておいた印が消えたために、また介入し続けていて身バレするのを防ぐために魔力を抑え竜との契約を一時的に破棄していた時期で偶然、葵や桔梗の周囲を霊眼で覗いていなかったためにほとんど情報がないのだ。麗羅ちゃんが調べても新たな物証はない・・・警察は自殺で片付けたが・・・しっくりこない事件だ。




・・・“ゲヘナ”は香樓鬼さんの協力もあって最後の鬼士である“蒼哭鬼”も倒してしまったので事実上瓦解した。この蒼哭鬼は香樓鬼のことを魔族の血族だとだましていた男だ。

一応20歳年の差の夫婦だったようだが・・・まあ詳しくは知らない。


テログループ“ゲヘナ”が消えるとテログループ“ニルヴァーナ”が今度はやってきた。


ゲヘナとニルヴァーナはライバル同士だったがそれもそのはず。


ゲヘナを造ったのは西園寺グループだった、構成員はほとんど知らない事実だ。知っていたのは導師連中と蒼哭鬼だけのはずだ・・・そうそう盟主ツキシマに関しては全く情報がなかった。九鬼芙蓉導師以外は会ったことがないらしいので調べようがない・・・一応生き残りあり・・・かもしれないか。


そしてニルヴァーナは西園寺実験施設から逃亡した実験体がコアメンバーだったわけだ。


西園寺が作ったゲヘナと西園寺から逃げたニルヴァーナの仲が悪いのは必然といえる。

まあ両者とも表舞台からは消えてしまったが。



黒板に僕の記憶が目まぐるしく映し出される。

・・・ニルヴァーナは唐突にやって来たのだ・・・。


降魔六学園敷地から真っすぐ南へ行くといずれ海岸線にでる。そこから沖に約800キロの海上に突然それは現れた。


結構大きめのクルーザーだ・・・いくつも部屋がある。


こっちは旧美術講堂で夕方だ・・・丁度部室のPC前でアフロと話していたのだ。

「何か来たね・・・アフロ・・・船だね。クルーザーってのかな」

「ほう・・・そういう言い方は、敵か?・・・もけ」


神経を集中する・・・霊眼を使っても見るのは知覚するのはこれだけ遠いと困難だ。


「そうだね。能力者だ、とびっきり強力だね。黒髪の男が降魔の地を衛星を使って調べているみたいだ」

「ふむ・・・戦力は?」


「・・・!・・・こんなことが・・・」

僕はオドロキを隠せない・・・3人とも・・・なんて。


「3人・・・だけど・・・全員が竜王の霊眼持ちだね。女性のテレポーターの能力を増幅アンプさせて突然海上に出現したみたいだ・・・ここからまっすぐ南だね・」

「なるほど・・安全な距離を取ったつもりが、もけには丸見えというわけか」


全員が・・・竜王家の血族?


「いやいや、僕が張った探知系の一番外側の結界あたりだからギリギリだったね。強力な能力の発現だけを探知する弱い結界だから気付いてないと思うケドね・・・」

「3人の霊眼持ちか・・手強そうだのう・・・少数精鋭・・・となれば目標は・・・うむ!面白くなりそうだのう・・・」


霊眼持ちなんて手強いに決まっている・・・戦いたくないが。

しかし嬉しそうだな“Z班”の天才軍師は。

・・・3人か・・・霊眼を持っている能力者・・・遠い親戚になる・・・のか。


慎重にみる必要がある。

現時点で攻めてくる連中のほうはこちらの情報は多く、向こうの情報は限りなくゼロだ。

それを埋めなければならない。


霊眼の出力を強める。

僕の左眼は紫の輝きを増していく。


大型クルーザーの後部デッキに目を閉じた女性がいる・・・風に吹かれて髪がたなびく・・・美人だな・・・どこの国の人だろうか。

操舵室にいるのは黒髪の男性・・・前髪で顔が半分隠れている・・・対人恐怖症かな・・。

もう1人は船の上だ、赤い髪で長髪・・長身で筋肉の塊だ・・・背伸びをしながら「がぁああ!」と吠えている。


この女性の能力だ・・・かなりの距離をテレポートしてきたようだ。

3人の能力を合わせてブーストしたにしても、すごい能力だ。

この世にテレポーターは非常に少ない・・・さらにこんな強力なテレポート能力は・・・僕とどっちが上だろうか。


しかし・・・。


おかしい・・・3人とも似ても似つかない。

兄弟か近い親戚じゃないのか・・・人種も違う気がする。



竜王家の直系の血族だとしても、霊眼をその身に宿す可能性は低い。

同じような世代に3人も?

第3王朝の生き残りか?


僕や葵のような能力者がいて・・・どう見ても戦闘準備中だ。

赤髪が殺気まじりの魔力を周りに漏らしている。


降魔の地を・・・ここを奇襲するつもり・・・決行は明日かな・・・。

目標はまだ分からない・・・。




・・・しばらく大型クルーザーを覗いていた。

キレイなテレポーターの女性はジョーという。

黒髪の前髪はスリーセブンという名で、大型クルーザーを手も使わずに操縦している、雷属性のようだ。

赤髪の屈強そうな男はケーイレブン、変な名前だ・・早く戦わせろと酒を片手に騒いでいる。


リーダーはジョーという女性だろう。


気を付けているが僕がクルーザーの多重結界を無視して内部を遠隔視しているのは気付いていない。



「・・・ニルヴァーナだってさ・・・アフロ」

1時間ほど遠隔視に集中していたので目の前にアフロがいるのを失念しかけていた。

身じろぎ一つせずに待っていたようだ・・・ニヤニヤ笑っているが。

「あれ。ごめん・・・」


「キエ~こんな面白い話はなかろう・・・貴様の集中を乱すわけにはいかんからのう」

「いけない、いけないわ。2人とも・・・そんな見つめ合って・・・」

いつの間にか星崎真名子が目の前にいてクネクネしている。


「くっくく・・・ニルヴァーナか、国際テロ組織であるな。もけが“ゲヘナ”を消して力の空白地に飛び込んだか・・・星崎・・・おまえも戦うことになるやもしれん」

「そんな・・・いけないわ、ミイロミューン2人の愛が―――」


真名子が何か言っているが聞いている暇はない。

明日の午後にニルヴァーナの3人は降魔へ乗り込んでくるつもりのようだ。


攻撃対象は分かった。

如月葵と西園寺桔梗、そして僕のようだ。


なぜ?


なんのチョイスなんだ?

竜王家狙いなら神明帝が入っていない。

霊眼持ちを拉致でもしたいなら桔梗は関係ない。


降魔六学園の強い順に3名がターゲットだろうか?

この推測には違和感を感じるな・・・。


もう少し情報が欲しいのだが・・・。


・・・目的は不明だ。

第一陣だとすると第二陣もあるのか。

霊眼持ちがなぜテロ組織にいるんだ?


・・・まあでも先手必勝・・・。


外はいつの間にか真っ暗になっている、数時間経過しているようだ。


「ちょっと行って来るよ。アフロ」

「うむ。心配はしておらん、存分にな・・」


さすがアフロは話しが早い、僕はおかしな状態の真名子に近づく。


「星崎さん、ちょうど良かったよ。能力をコピーさせてね」

「はぁい・・・もけきゅん」会話が終わる前に無色の魔晶石に真名子の能力を宿す。


「今晩中に仕掛けるよ・・・一人一人の能力は異常に高い・・・分断する必要があるし・・・アタッカーにテレポーターにサポーターというとこだから・・・」

「その通りであるな、敵勢力をそぐ必要があるであろう・・・密やかに、確実にな・・・間違いない」


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