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ドラゴンディセンダント  作者: ドクターわたる
竜の迷宮
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3-1-4.決め顔で修学旅行へ行こう④

―――ここ次元環ポラリスは、もともと4000年前の竜王家の墓地である。

御所と呼ばれているが・・・ここに入れるものは当時は竜王家の一部の者だけだった。


竜王家というのは厳密には“竜王の霊眼”持ちのことである、実際は王家の血族のさらに一部の者のみが入ることを許されたのだ。聖魔大戦時に御所は3つの次元に封印されて最も大きいのがこのポラリスである。


霊眼を持っていない場合・・・ここにいるだけで急速に体力・魔力は失われる。ポラリス内に作られた近代設備の多くは内部に強力なカウンターマジックフィールドを形成しておりそこで働く職員を守っているわけだが御所深部へ侵入可能なわけではない・・・魔力を持っていない機械による無人探査はすべて失敗している。

このポラリスで制限なく動けるものは・・・竜王の血族・・・さらに霊眼発現者のみなのである。


そう・・・ここは4000年前の魔法兵器実験場・・・現代では西園寺財閥による兵器の発掘場であり様々な実験場でもあるわけだが・・・どちらにしてもここは墓標、であるならば不遜な話しだ。


“ニルヴァーナ”の構成員はこのポラリスの一区画、結界内に閉じ込められている・・・多くの者は左右どちらかの片目が輝いている・・・。


それを結界越しに取り巻いている“Xシリーズ”と呼ばれる無表情な戦士たち・・・彼らもまた片目が輝いているのだ。


GE・・・グリームアイ・・・ヴィジョンアイ・・・あるいは竜王の霊眼と呼ばれる非常に強力な力の発現である。この力は利き腕側の片目に現れることが多い。


今回の件とは関係ないが霊眼持ちとしては・・・。

如月葵の能力は不可解な点が多いわけだが深刻なダメージからの急速回復や、戦闘中に戦闘魔力数値が上がり続けたり、ブレス攻撃の部分召喚など、竜気との関係もあるだろうが霊眼の関与が強く疑われる、どれも通常の召喚士には無理な芸当なのだ・・・彼女の右目は赤く輝く。

神明全・・・の霊眼による能力は遠隔視のみだがあらゆる結界を無視して透視できる・・・あるいは他者の遠隔視・霊視・透視をジャミングできる・・・左目が紫に輝く。





―――次元間ポラリスは緊迫していた。

“ニルヴァーナ”の構成員を閉じ込めている兵器実験場の結界の外に白い光沢のあるスーツを着た召喚戦士が規則正しく等間隔で集まって来ている。

全員無表情である、この後戦闘になる可能性が高いが誰一人として心拍数が上がっているものはいない。

西園寺兵器開発部が誇る次世代の戦闘兵器・・・Xシリーズと呼ばれる生体兵器である・・・見た目は人間である。


実験場内にアナウンスがどこからともなく響く。


「あーあー。聞こえるかな。“ニルヴァーナ”の諸君。私は日本支部所長代理の森崎である。いやいやよく来てくれた。いやいや今まで散々手こずったが・・・まあまあ終わりよければ良しとしよう。諸君らを歓迎しよう・・・せいぜいいいデータを頼む」

都内イリホビルから異次元であるポラリス内に機械音声で威圧的な森崎の声が響き渡る。


「あーおっほん!気付いていると思うが諸君らのGEは特殊な結界内で著しく妨げられる。魔力もそこそこしか使えないはずである。こちらから指名するので一名ずつ戦ってもらう。諸君らに拒否権はない。もともとの職務を全うしてもらう」

森崎はさきほど考えたことを実行に移す・・・自分でもイイことを思いついたと思っているのだ。


(そうだ・・・一名一名倒していけば、よいデータ材料になるだろうし。リーダーの“ドール”と“フォックス”を殺してしまう心配もない、高齢な者はいないとの報告だが肉体年齢など操れてもおかしくない連中だからな。この実験体どもは)


100体近くいるXシリーズで一気に攻撃をするとあっという間に全滅させてしまう・・・それでは国際警察で重要参考人になり捕らえれば自分の爆発的な評価アップになるであろうテログループリーダーの“ドール”と“フォックス”を殺してしまうのは得策ではない・・・そう考えるわけだ。オペレーターの計測では高齢なものでも50歳前後でありもっと高齢な“ドール”と“フォックス”はこの中にいないかもしれないが隠れているのかもしれない。


ポラリス内の管制塔職員にも引き続き“ニルヴァーナ”全構成員の調査と記録を命令してある。


さらにこれが重要だ。ジワジワと圧倒的優位の中で弱者を攻撃をするのは森崎が何より好むところである。


(すぐに終わってはつまらんからな・・・。それに西園寺御美奈社長も女だからな、少々引くくらいの惨状を作ってこの俺の力を見せつけてやるのもいいか・・・いやいやイカンイカン。出世に響かないように慎重にせねば・・・いやだがもうこの数時間で・・・いくつも国際法を西園寺御美奈とこの森崎は破っているのだ。すでに一蓮托生と考えてくれているはずだ・・・あああ。この女と結婚できればすべて自分のものにできるがなあ・・・結婚してから殺してしまえば・・・いやいや安全第一だ・・・安全第一・・・)


オペレーターの女性3人が妄想し薄笑いする森崎を見てすくみ上っている頃、このイリホビルでもう一人笑う女性がいた。


―――それはずっと地下の階層・・・粗暴で大柄でカラフルなスーツをきている男どもに黒いスーツの上着を破られている最中の黒川有栖は手錠をされたまま・・・これまた邪悪に笑いだした。





―――ポラリスの兵器実験場では森崎部長発案のハンデ戦が開始されていた。


「あー、実験番号K-19!実験番号K-19はいるな!貴様にはロスの施設を破壊された借りがある・・・K-11はいないようだが・・・取り敢えず一人で隣のエリアに来るのだ!貴様だけは結界を通れるようにしておく!断るなら全員今すぐハチの巣になる!いいな!繰り返す!全砲門が貴様らに照準を合わせている―――」


全く紳士的でない森崎の声が現場に響く。

1人ずつ“ニルヴァーナ”の構成員を“Xシリーズ”と戦わせる気なのだ。


長身で短髪のK-19と呼ばれた男は逆らわず結界壁に空いた小さなゲートに歩き出す。


男はふと立ち止まり監視カメラに呟いた。

「俺の名はコルクだ。コルクと呼べ・・・」


彼は通称“コルク”という名で知られる武闘派テロリストで世界中に指名手配されている、よく組んで暴れていたのが“ケーイレブン”という名の赤髪の男で・・・彼は数日前に如月葵と第3高校上空で戦闘を繰り広げていた。


結界の暗いトンネルを抜けて、開けた場所でニルヴァーナ構成員のコルクは気だるそうに足を止めた。


彼は10名ほどの“Xシリーズ”兵士に囲まれたのだ。


さらに森崎の声が響く。

「さあ、実験体K-19よ、Xシリーズと戦うのだ!・・・10対1でなあ!!」

「俺の名はコルクだ。コルクと呼べ・・・それから弟たちとは戦わない・・・」


安全な部屋から森崎がオペレーターの女性1人に合図した瞬間・・・戦闘は開始されて・・。


そしてすぐに終わった。


丁度10名の無表情なXシリーズ兵士たちがレーザーのような魔法攻撃を撃ち・・・世界に指名手配された凶悪なテロリストであるコルクは回避も防御もせず、すべての攻撃をうけて血しぶきと共にゆっくり倒れた。


それだけだった。



―――そして・・・それが数回繰り返された。


森崎が指名する“ニルヴァーナ”の戦士は逆らわず1名ずつが死の闘技場に進み、誰一人として戦闘行為を行わず無抵抗のままXシリーズに倒されていった。


額に深いしわが寄っている森崎は思案にくれている・・・データにならない・・・このままでは。

「むう・・社長、Xシリーズが強すぎるかもしれません。GE同士で戦闘が面白くなるかと思われましたが・・・全く能力を発揮せんとは・・・“ニルヴァーナ”どもにもう少し本気で戦うように脅す必要がありますなあ。さらに10対1ではなく5対1か3対1でもよろしいですかな?」

「Xシリーズは所詮人形だ・・・過信しないことだ、森崎」


西園寺社長の忠告は会話の流れで自然を装い森崎に無視された・・・Xシリーズには絶対の自信があるからだ。

「それか人質をとって“ニルヴァーナ”同士を戦わせると言うのは・・・」


1人のオペレーターの女性が顔をあげて申し訳なさそうに声を発した。

「お話し中申し訳ありません、森崎部長」

「なんだ?重要な話しなのだろうな?」


もう1人のオペレーターもあれっと声を出している。

「あの、森崎日本支部所長代理。あの」

「なんだ、順番に説明せよ」

思案中にそれを妨げられるのは好きではないのだ、イライラしているのは森崎の額のしわでよく分かる。


2人のオペレーターは顔を見合わせたが速やかに報告した。

「地下5階で問題発生です」

「多重結界壁が溶けていきます」

「なんだと地下5階の結界が解けるとはなんだ?」

オペレーターの女性は1人はイリホ担当、1人はポラリス担当なのだ。もう一人は海外との連携役で今は仕事が少ない。


「ご命令通り、地下5階付近のすべての監視カメラを切っているのですが・・・」

「なぜ記録せんのだ・・・あとで確認すればよい」

どうでも良いと言わんばかりに報告中のオペレーターを睨みつける。


「そ、それは西園寺社長が」

「方便というものがある。あの女召喚士がどうなったのか確認せねばならんだろう!」

「結界壁が・・・」

「その話は後だ・・・地下5階がどうした?すべての監視システムを立ち上げろ!」

もう1人のオペレーターの話しは遮られ、モニターに地下5階が映し出された。


目を見開いた森崎が見た光景は予想とはかけ離れていた。


「うおっ!こ?これは?」


廊下のライトがいくつか切れておりそこら中に怪我をした人間が転がっている。壁が砕けて何かガラスのようなものが散らばっている。先ほど自分がロックした鋼鉄の扉も引き裂かれている。


「な、なんだなんだ!これは?倒れているのは吟悟会の連中か?け、警備員を向かわせよ!」


我慢できなくなったのかもう1人のオペレーターが急いで報告をしだした・・・森崎の機嫌を損ねるのは承知で・・・だ。

「すみません!森崎さま、さらに結界壁が溶かされ“ニルヴァーナ”が逃げます!」

「な、なんだと!はあぁ?・・・も、もっと早く言わんか!」

「多重結界が次々に剥がされています」

「あり得ん!測定ミスではないのか!“ニルヴァーナ”のいる内側からは結界に干渉できん!GEを閉じ込めるために開発したものだぞ!いい加減な・・・」

「実験場の外からの干渉のようです」

さらにオペレーターは言葉を重ねる、事態は急を要しているのだ。


モニターの左上に実験場の結界強度が映し出されている。

「な、なにいッ!!!結界に何の干渉が・・・」

今度は右下の地下5階の映像が拡大される・・・もう一人のオペレーターも必死だ。

「捕まえた女性召喚士が暴れているようです、カメラが壊されて動きが早すぎてトレースできません」

「ま、魔封状態だろうが!なぜだ!なぜ魔力を使えるのだ!いやそれは後まわしだ!ポラリスが先だ!」

血管が切れそうなくらい森崎は額の血管を浮き上がらせて吠えた!

同時に2ヵ所で常識では考えにくいことが起きておりどちらも現状が把握しきれていないのだ。


久しぶりに女社長の口が開く・・・。

「この階を警備している咲原を使え・・・」

「はっ!咲原少佐の隊を向かわせよ!さすが冷静ですな。社長?」

ややパニックな森崎だが社長にはすぐに従う・・・社長が近くにいるのを再認識してやや冷静さを取り戻した。


オペレーター2人は忙しなく問題と混迷の中、対峙していた。

「どうでも良いでしょう。まずポラリスに集中するべきでしょう」

「はっ!社長。その通りでありますな。取り乱すな!貴様ら!小物なぞどうでもよい。地下5階の女は殺してよい、少佐にそう伝えるのだ!」自分にそう言い聞かせるかのように森崎は頷きながら話しているが額には汗が・・・そして落ちつきなく手足を動かしている。


そこへポラリス担当のオペレーターが一瞬画面から顔を上げて森崎に報告した。

「管制塔内が戦闘状態に移行しました」


「は?・・・・・ばばばばバカ!・・・バカな・・・それはなぃばばば」


“ニルヴァーナ”は実験場から出てもXシリーズがいる・・・さらにその周囲にはGE能力をキャンセルする強化多重結界があり周辺に様々な施設が建設されているがどれが管制塔かポラリスに来たばかりの“ニルヴァーナ”に分かるわけもなく・・・さらに“Xシリーズ”が反乱や暴走したときのために管制塔内外には強力な結界と防衛システムがある・・・入り込むのは不可能な施設なのだ。


「バカを言え!バカを!どのモニターだ!どの?ポラリス管制塔のことか?それとも―――」


管制塔にはXシリーズのコントロールルームや非人道的実験を行うラボや地下部分には職員が避難しているセーフティールームもある・・・さらにODCシステムの中核である物質加速変換器まであるのだ。


「―――いいえ、ですから管制塔内で戦闘が開始されています」

「馬鹿を言え、入れるわけがない。テレポーターがいても無理だ!・・・ではどこだ?どこから入られたのだ、どの実験体だ!どの!なんの能力だ!いくつ結界を張ってあると・・・」

「不明です。実験区画の“ニルヴァーナ”構成員の数は変わっていません」

「どういう、どういうことだ?」

「別動部隊がいたとしか・・・」

「はあ?それこそありえん!」


(わけがわからん!ポラリス管制塔に行くにはいくつもの種類の異なる結界を抜けて・・・おお!そうだ!その前に防衛システムから攻撃さるはずだ!ODCシステムが創り出す脱出不可能に近い異界化結界も抜ける必要がある!結界に魔力もGEも封じられている連中が・・・?封じられていなくても管制塔に入るのは不可能に近い・・・はずだ・・・何かの間違いでは・・・間違いだ!)



ほぼ同時に“ポラリス”と“イリホビル地下5階”で予想外の問題が発生していた。

事態が完璧に鎮静化しなければ自分の身が危ういと森崎は考え始めていた。


そして立って歩きまわり呻き焦る森崎と対照的に、静かに腰かけている西園寺御美奈はまるでハプニングを楽しんでいるかのようだった。

側にいる3人のオペレーターはただただ自分の仕事に集中していた。


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