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ドラゴンディセンダント  作者: ドクターわたる
竜の迷宮
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3-1-2.決め顔で修学旅行へ行こう②

「鳥井教官・・・キエ~、奴のことだ。心配はもちろんいらん。間違いない」

「まあねえ。ジンメ君はテレポートできるからね。いくら先生でも追跡できないわね。心配はしてないけど・・・心配なのよね」


修学旅行中の第6高校生を乗せたバスは時間通りに奈良の目的地に着いたのだ。

“Z班”部長のアフロ隊長と引率で来ている鳥井大雅先生は止まっているバスの前で2人、少し話し込んでいる。

「まあどうせ、自由行動になれば6校生は行方不明者が続出する。問題なかろうと思いますが?」

「さすがに・・・なにも感じないわね」

木属性の竜族である鳥井先生は感覚に・・・特に嗅覚に優れているのだが・・・目を閉じて感覚を研ぎ澄ましても何も感じないようだ。


タイガーセンセは何故か気落ちしている。

「全くもう・・・アキラったら私を置いて観光に行くなんて・・・」

「まあそのうち戻るでありましょう・・・鳥井教官」

そもそも修学旅行なんて参加していない6校生は数多くいる・・・修学旅行名簿に神明全の名前が載っているだけ大したものである・・・人間嫌いだからな・・・旅行なんて・・・。



―――「電撃作戦を決行する・・・森崎・・・陣頭指揮を頼みます」

「はっ!お任せください・・・社長。すでに3ヵ所とも“ニルヴァーナ”の拠点は包囲しつつあります。FBIも協力的ですし一網打尽に・・・と言いたいところですが」

「・・・なにかありますか?」


窓のない部屋だ・・・だが内部は広く・・・西園寺御美奈社長と森崎部長以外にも・・・PC画面を忙しなく見ている女性が3名いる・・・緊張感があり・・・これは森崎に厳しく事前に言われているからだが・・・かなり重要な任務と心得ているようだ。


「―――それ以外の不安材料といたしましては“ニルヴァーナ”のテレポーターの存在が挙げられます。この能力者のせいで何度もFBI捜査員は煙にまかれていまして、かなりの質量を一度に空間転移させ避難することが・・・」

「それは問題ないでしょう」

「ほ?お!・・・・と言いますと?」

「プライベートジェットを攻撃した襲撃者はジェットの内外にある防衛結界に接触した時点で多重結界に挟まれて成すすべなく確実に命を落としているはずです・・・攻撃魔法に強力な耐性のある西園寺のジェットを攻撃するために魔装武具で特攻せざるを得なかったのでしょうが愚かなことです・・・つまり襲撃者はテレポーターです。そのテレポーターは命を落としているでしょう。テレポーテーションは非常に稀な能力です。2名以上いる可能性は低いでしょう」


―――このイリホビルには3千人もの人間がいて多くは西園寺財閥に何らかの形で雇われているわけだが最少人数でこの電撃作戦を遂行するようだ。

本作戦の本部がこのイリホビルにあることを敵グループに悟らせないためと御美奈社長がイリホにいることも現時点では秘密だからである。


2時間ほど前のプライベートジェットを襲撃し撃墜した犯人は最近活動が活発なテロ組織“ニルヴァーナ”と断定されたのだ。


「各方面へ繰り返す。“ニルヴァーナ”と交戦状態となっている・・・警戒レベルをレベル4に統一せよ・・・繰り返す」

得意満面の森崎は指令を出し続けている。アメリカ西海岸に2ヵ所、メキシコに1ヵ所ある“ニルヴァーナ”拠点を一度に叩く必要があるのだ。“ニルヴァーナ”の拠点は幾度かFBIによって捜査されているがまとまった成果は皆無なのだ、それを壊滅できれば西園寺の評価はあがり・・・そして自分の処遇も・・・未来が開けるのだと森崎は考えている。

拠点をすべて見つけただけでも相当な手柄になるはずなのだ!



―――「あなたが何者かは知りません。大したことを知っているとも思えませんが・・・ここは西園寺のテリトリーである。後悔することになるでしょう。誰かの命令で来ましたか?」

「顔を挙げんか!社長の前だぞ!・・・なんだ!その反抗的な目は」


簡素なベッドで手錠をされて足を抱え、顔を伏せているダークアリスに少し離れたところで腕を組む西園寺社長と張り切りまくっている森崎が強い語気で話しかけている。


西園寺社長が来ていることを伏せるためもあるがダークアリスが魔力を封じられて監禁されているこの密室はいかなる録音や録画も監視も行われていない。付き人もいないのは用心のためだ・・・まあその割には誰とも分かっていないアリスに社長だと森崎がバラしているようだが本人は気付いていない。


髪を引っ張られて顔を起こされるダークアリスだが、全く怯えたそぶりもなく無言で森崎を睨みつけている。


「自分の立場を分かっておらんようだな!」油ギッシュな森崎はさらに脂っこさを増した顔でまくし立て髪を掴んだ指に力を入れる。



・・・まあ少々小突かれたくらいでダークアリスは何も感じないだろう。


―――「どうしましょうか、自白剤を使いますか。それともお任せいただければ・・・」

「もうよい。森崎。外へ・・・」

腕を組んだまま目線で外へ出ると森崎へ促す・・・やや残念そうな森崎はアリスを睨みつけたまま手をはなす。


2人は出てドアが閉まりロックされる音がガチャリと小さく聞こえる。


ふうっと西園寺社長は小さくため息をつく、森崎は常に社長の顔色を窺っている。

「小物でしょうね・・・GE持ちの線もありえないでしょう、若すぎます」

「はっ」

「後回しでよいでしょう」

「はあしかし・・・」

「吟悟会のものを呼んでやりなさい。森崎。顔を潰されたままでは面子が立たないでしょうから」

「はっ、なるほど、我々は忙しいですからな・・・適材適所でありますな。何人ほど呼びましょうか?」我々という言葉をことのほか強く言いつつ、社長から自分への評価が上がって行くことを感じている。

「多い方が良いでしょう・・・」

「はっ!さ、さすがであります。あの生意気な女に思い知らせてやります!」

「何が起きてもいいように監視カメラは切っておくようにしなさい・・・戻りますよ」

「ははっ!吟悟会のものどもはご期待に沿うでしょう、いやあすばらしい采配です」そう満面の笑みで言う森崎は内心ガッツポーズをしている。

(ああ、すばらしい。イイことしかないではないか)



―――電撃作戦“ポセイドンの槍作戦”は西園寺のプライベートジェットが落とされてからほんの2時間ほどで実行に移された・・・“ポセイドンの槍作戦”のネーミングは森崎によるものだ・・・。

権力と武力を行使することはこの男にとってはとても刺激的なのだ。


“ニルヴァーナ”は少なくとも気付いていなかった・・・作戦はアメリカ西海岸の2ヵ所では成功した。

武装した対テロ対異能者専用特殊部隊の投入でそれこそ数分で片付いたのだ。


通常ではありえない方法・・・あらゆる退路を断ちつつ召喚獣を連動させて襲わせたのだ。

未知の敵と召喚獣を戦わせるのは危険なのだ。

召喚士は召喚獣を失うとあらゆる超能力を失う・・・召喚獣を生き返らせる方法はない。

召喚獣を失った後で、新しく召喚獣と再契約することはできない。

唯一として知られる方法はネクロマンシーの術で屍としてなら召喚獣は使役可能だがレベルアップしなくなる。


長い召喚士の歴史で・・・召喚獣を前線で戦わせるのは・・・一か八かの時だけで普通は行わない。


だがこの“ポセイドンの槍作戦”では惜しみなく召喚獣が最前線に投入された。

“ニルヴァーナ”の構成員は魔装し迎え撃ったが最初の虚を突かれた召喚獣の突撃で・・・基地へのダメージが深刻であり・・・数十年の間・・・世界を蝕んだ能力者のみで構成された強力なテログループは、多くは召喚獣にかみ殺され潰されその人数を大幅に減らしていった。


一ヵ所は広大な運送業のトラック置き場で、もう一ヵ所はリゾート地のホテルとその地下が拠点であったが強力な召喚獣たちに追われて外へ出たところを魔力を込めた重火器で工場やホテルの一部が消し飛ぶほど撃ちまくられてテロ組織構成員の命は散って言った。

空中浮遊して上空へ逃げるものはマジックウェポンである重火器で下から狙い撃ちされさらに上空で待機していた召喚獣“サンダーバード”の大群に電撃魔法で焼き払われた。


地上で活躍したのは魔獣系召喚獣最強の“フェンリル”の大群で、上空で待ち構えていたのは全て“サンダーバード”と呼ばれる魔鳥系召喚獣の群れである。


召喚獣は千差万別多種多様・・・全く同じ種類の召喚獣が同時期同じ場所に存在することすら珍しい。


ところが“フェンリル”“サンダーバード”は全く同じ個体に見える・・・寸分違わず・・・だ。


これは西園寺財閥兵器開発部門の秀作・・・人造召喚獣なのだ・・・一部の召喚獣のクローン化に成功しており、各国の軍隊や警察等に売りさばいているのだ。

とくに竜族と地上戦で渡り合える魔獣族最強“フェンリル”は特に強力だ。


各召喚獣は同じ形だけでなく全く同じTMPAでもある。召喚士として成長し大成するには長い年月がいる・・・つまり人造召喚獣を身に宿せば・・・だれでも高レベルな召喚戦士に・・・一瞬でなれるわけだ・・・もちろん軍隊等で専用の訓練はあるだろうが。


つまりもし“フェンリル”が死んでもカートリッジを交換するだけ・・・という使い捨てが可能な召喚獣なのだ。


古い召喚士はその存在意義を消されていく・・・まあそんなわけだ。

まあ生粋の召喚士にしてみれば悲しい話なのかもしれない。使い捨て召喚獣の存在は・・・召喚獣と召喚士の魂の結びつきを信じる結構大勢の召喚士にとっては・・・生命の冒涜・・・モラルの欠落・・・そんな印象を与えるのだろう。



―――「うむ、分かった私が伝えよう・・・社長・・・社長。これを見て下さい」

そう呼ばれた御美奈社長は赤いスーツで足を組んで優雅にドリンクを飲んでいる、いくつか巨大なモニターに分割されたウィンドウが出ているが見ていないようだ。

「ミ・・・いえ・・・なんでしょう」


「はっ!第三の拠点は社長の情報通り農園の地下で間違いありませんでしたし地下基地の規模もおっしゃられた通りでしたが・・・」

「はっきり言いなさい。森崎」

「どうやら“フェンリル”がすべて眠らされたようでして召喚士部隊の突入を検討中とのことです。いえただ重要な情報があります」

「重要な情報・・・とは?」

「はっ!ほかの2拠点とは守っている敵召喚士の質も量もけた違いであります。間違いなくここが毒蛇の巣窟・・・奴らの最も重要な基地であることは疑いようありません」


「さらに、他の2拠点にはGE持ちが1名も確認されておりませんから・・・おそらくこの第3拠点に大多数がいる可能性が高く非常に何と言いますか・・・さらにリーダーの“ドール”がいるとなりますと事は・・・」




―――FBIと西園寺財閥の混成対テロ特殊部隊は第3拠点を攻めあぐねいていた。


虎の子の“フェンリル”部隊・・・28体投入だけで余裕で地下基地をほぼ壊滅できる計算だったのだ。

出口もすべておさえており、どこから“ニルヴァーナ”の一員が逃げ出してきてもハチの巣にできるよう重火器と人員を配置してあった。


今回投入された“フェンリル”は物理攻撃に強い耐性があり非常に俊敏・・・その特徴の一つにハウリングがある。数体で同時にハウリングすることで威力・範囲とも増すのだが・・・ある一定の領域内でハウリングに晒されると敵の身体は麻痺するわけだ。これは召喚士の耐性や防御力である程度防ぐことが可能ではあるが狭い拠点内ではハウリングは非常に強力になるため・・・拠点攻撃にも“フェンリル”は非常に優秀なのだ・・・相対する敵は最低限、もし“フェンリル”と戦うのであればハウリングが弱まる基地外部を選択せざるを得ないわけだ。また“フェンリル”は大きすぎないのも強みで約2トンの狼に似た巨体だが人が通れる通常のサイズの通路であれば背中は天井に擦るだろうがギリギリ通れるわけだ。

さらに少々の数の“フェンリル”が倒されても人造召喚士の腰部にある、一つ1億2千万円のカートリッジを交換するだけというわけだ。


・・・ところが攻め入った“フェンリル”はどうやらすべて眠らされ・・・“ニルヴァーナ”構成員も一人も地下基地からは出てこない・・・さらに眠らされた“フェンリル”は一体も殺されていないのだ。


召喚したままカートリッジ交換を行えば一体1億円を超える人造召喚獣“フェンリル”は永遠に失われる・・・まあ死ぬわけだ・・・そこに現場では僅かな躊躇があった。



・・・現場指揮官の声が通信機から漏れている。


「上からの命令だ!“フェンリル”は作戦遂行の邪魔になる可能性あり。全て破棄せよ!敵は精神波攻撃をしてくるがユニットスーツには無効だ!召喚士部隊・・・神経ガスを使用しつつ各隊突入せよ!」


28体もの“フェンリル”を破棄して・・・第3拠点の攻防は次のステージに進んだ。

地下の“ニルヴァーナ”構成員は120名ほどで全員が召喚士である可能性が高いが逃げ場のない地下で神経ガスを撒きながら殲滅する作戦へ変更となった。


これは可能であればリーダーの“ドール”と呼ばれるテロ組織“ニルヴァーナ”のトップを確保せよという裏の目的もあるわけだ。


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