3-1-1.決め顔で修学旅行へ行こう①
3-1 修学旅行初日
第6高校、3年生は修学旅行のシーズンとなった。
全国制覇してしまった“Z班”は入部希望者が殺到してしまい・・・色々面倒だったようだがアフロと城嶋由良とそして何故かダークアリスが上手く片付けまとめたようだ。どうなったか詳細はゼンゼン知らない。“Z班”副部長の僕だが忙しいのだ。そうかダークアリスってあれになったんだっけ?
テログループ“ニルヴァーナ”もあれから攻めてこないし、まあ表向きは平和な秋到来・・・そんな感じだ。
まあ“ニルヴァーナ”はしばらく攻めてこれないだろう。
第6高校はお金が無いのか毎年、京都と奈良に修学旅行に行くわけだが・・・よくない話がある。どうも第1高校と第3高校も京都方面に時期まで被って修学旅行に来るようだ、毎年、第6高校以外は海外旅行なのに今年はテロ組織に襲われたり来年の聖魔大戦の戒厳令だとかで海外旅行はなるべく自粛ムードなのだという。第2高校と第4高校、第5高校はすでに修学旅行は終了している・・・あれ?第4高校から転校してきた由良さんは今年2回も修学旅行へ行くのか?
細かな振動が身体を伝わる・・・丁度バスの後輪の上あたりに座っているのか。
奈良へ向かう高速バスの中はのどかなものだ・・・来年何が起きるか・・・。
まあいいや・・・しかしバス旅行はいいな・・・。
じゃあ・・そろそろかな。
“空間覚醒移送”
―――都内―――
超巨大な建造物・・・イリホビル前で揉めている。
身長178㎝の長身の女性が文字通りブチ切れながら・・・巨大な鉄の塊と格闘している・・・とういか前面を踏み潰している。
黒塗りの巨大な乗用車のタイヤが空回りしてけたたましい音を立てている。
ブラックのスーツ姿・・・長身の女性が直立のまま右足で高級車のフロント部分を踏み潰しているのだ・・・間違いなく能力者だ。
つまり・・・これまた慌てふためくスーツ姿の男が4人ほど内部に乗っているが高級車のフロント部分は女性の右足がめり込み変形して道路に突き刺さり黒煙を上げている。高級車は前のめりに道路に突き刺さっているために後部座席側は宙に浮いてしまっている。
4人の男たちはめいめいドアから転げ落ちたり窓から飛び降りたりして、やや滑稽な感じで高級車から降車してくる。
当然・・・長身のスーツ女性に詰め寄ってくるわけだ・・・。
血色ばんだ男4人は堅気には見えない・・・どう見てもマフィアの様相だ。
車のフロントに右足をめり込ませている身長178㎝の女性より4人とも少し小さいが皆、ガタイは良い。舐められれば終わりだと言わんばかりに高級車をまだ踏んでいる女性に掴みかかろうとするがハッとして躊躇している。
女性は長髪でブラウンのサングラスをしているが・・・まあ端正な顔立ちなのは見て取れる。
「て、てめえ召喚士だな!!」
その通り、分かり切ったことを言う。片足で乗用車を踏み潰して動けなくしているのだ・・・能力者に決まっている。さらに一般人は決してたとえ銃を持っていてもまず召喚士に勝てない。
ただし・・・公道で魔力を使用してケンカして重症などを一般人に負わせれば召喚士はかなり重い罪にとわれることになる。
「なんのつもりだ!てめえ!しょ、召喚士のお、女ぁ!」慌てているのだろう・・・脅しにはなっていない。
4人のマフィアの最年長と思われる男が周りを抑えるポーズをしつつ切り出した。
「まあ聞けよ。姉さん、何のつもりか知らねえが捕まるぜ。こんなとこで魔力使って、天下の往来で善良な市民様を・・・」
「ガンつけだだろ?」長身でサングラスの女性が初めて喋った。
「あん?」
「てめえの舎弟と目が合ったっつってんだよ!ガンつけだだろぉ?」サングラスをずらしながらその女性はマフィアを睨みつけている・・・これこそガンつけるというやつなのでは?
「はあ?・・・おめえ・・・」
乱暴なことには慣れているであろう4人だがその後の光景に目を疑ったのは言うまでもない。
彼らが乗っていた黒い高級車は宙を舞う・・・それもクルクルと高速で回転してぶっ飛んでいく。
長身女性はためらいもなく突然道路にめり込んだフロント部分を両手で抱え上げて巨大な乗用車を投げ捨てたのだ・・・。4人は攻撃されると思い地面に伏せてたもの2人、しゃがんだもの2人。
それをしり目にUFOのように飛んでいく高級車は・・・イリホビルの2階付近に吸い込まれて一瞬ビルの外壁が波打ち・・・ガラスの破片が花火のように広範囲に飛び散った後で爆発炎上した。
「目が合ったっつってんだろ!コラァア!」
・・・警報がけたたましく鳴る中、膝をついて呆けている年配のマフィアに向かい黒髪をかき上げつつ第6高校生徒会長のダークアリスは再度ブチ切れ吠えた。
―――ほぼ同時刻、太平洋上を真っ赤なジェット旅客機が成田空港を目指して飛んでいるのが霊眼では見える。プライベートジェットである。マッハ2.2でアメリカ西海岸から飛んできている。
中では優雅に女社長が取り巻きとドリンクを飲んでいるようだ。
かなりの高度で飛行しているために非常に外は寒いはずだ、空気も薄いだろう。
(美しい・・・)
そう思いつつ僕は・・・神明全は・・・空を逆様に見上げている。足元には星々がうっすら見え・・・そして雲の海が頭上に広がる。
竜殺槍を右手に持ち重力でひっぱられるままに頭を下にして落ちる・・・落ちる。
(ニルヴァーナ戦で洋上の静止衛星をいくつか潰したのが役に立つとは・・・ね)
フィーネの鎧を魔装して・・・重力に身を任せてフリーフォールしているのだ。この真下をプライベートジェットは通る予定だ・・・何事も無ければ。
大気は澄んでいて美しい、これほどの高度からのフリーフォールは初めての経験だ。あたりは一面雲で頭から落ちていると世界は真白だ・・・。魔装していれば寒くはない、心地いいくらいだ・・・酸素は薄いが。
ああ。気持ちよくて酔いそうだ・・・お酒は飲んだことないがこんな感じだろうか。
もうしばらくこの景色が続けばいいのに・・・そんな想いに浸っていても仕方ない。
(時間だな・・・)
タイミングをもう一度計算する・・・大丈夫のはずだ・・・肉眼ではまだ見えない。。
“加速一現”!
“神速覚醒”!
二つの術を相乗させる。
一気に視界が狭まる・・・爆発的な加速だ・・・少し方向を変えつつ神明全は槍を構えてミサイルのように飛ぶ・・・。
―――そして・・・竜殺槍を構えた僕と真っ赤なジェット機は相対速度マッハ4以上で正面衝突して、太平洋上で派手に真っ赤な爆炎を上げて散った。
―――京都・奈良への修学旅行初日はまさしく波乱の幕開けとなった。
―――「それは本当か、向こう側からお通ししろ。くれぐれも内密にな」
スーツ姿の男・・・50代・・・中肉中背・・・せわしなく歩き、動いている。
イリホビル内部の見晴らしのいい部屋・・・一面はガラス張りだ・・・夜にはさぞ夜景が綺麗だろう。
秘書と思われる女性がお茶を慌てて用意しにいって広い部屋にはスーツ姿の男性一人なのだ。顔面は少し日に焼けている・・・ゴルフに先週末行って来たせいだ。腕組みし目はおどおどして部屋の中を行ったり来たりしては止まっている。
(しかしチャンスかもしれない。2人とも海外なのは運が向いてきたか)
また携帯が鳴っている。1秒も待たせずに通話となる。
「はい。森崎です・・・ああ。そう・・・その方がいいか。すぐ伺うとお伝えしてくれ」
秘書はもどってこないが知ったことではない・・・足早に窓の外は見晴らしのいい科学魔術技術財団技術統括部部長室を後にする。
―――ネクタイを部屋の前で直して緊張した面持ちでほとんど使用しないVIPルームに入る・・・この部屋は窓が無い・・・といって殺風景というわけではない・・・小さめの応接室の一つだ・・・地上55階と56階の間にあるヒミツの部屋だ。
その部屋の中ほどにいる女性にすぐに頭を下げてご挨拶した・・・森崎はここではナンバー3、エライのだ・・・つまり頭を下げるのは比較的珍しい状況だ。
「森崎です入ります。申し訳ありませんでした、西園寺社長。すぐに手配しましたものを・・・お前たちは一旦席を外してくれ。このことはトップシークレットだ!いいな!」
比較的狭い応接室はすぐに高級そうなスーツ姿の女性とこの森崎だけになった。
やや威圧するキツめの目つきでその女性・・・西園寺御美奈社長は話し始める。
「余計な情報を漏らす必要は無いでしょう、おかげでジェットを失っただけですみました」
「そ、それは内通者がいるという意味でしょうか?」
「そうは言っていませんが少し調査する必要があります、それに西園寺のジェットが落ちたとなると信用問題となりかねません、株価にも影響が出るでしょう。この件はしばらく内密になさい」
先代の西園寺孝蔵の作った魔術科学技術財団の一部長だった森崎は人心掌握術とゴマすりでのしあがった男だ・・・当時、女子高生だったころから西園寺御美奈にはさんざん贈り物や情報を流している・・・そう言う意味で現社長との関係性には確固たる自信があるのだ。
「事故のあった海上は封鎖しなさい、ジェットが撃ち落されたことは公表しないように・・・それと―――」「撃ち落されたとしますと―――」
まだ20代の女性だが世界トップクラスの企業の社長だ・・・森崎は一言一句聞き漏らさないようにしている・・・やや大げさに何度もうなずいている。
「最近、静止衛星がいくつか故障していますが恐らくそれも一連のテロの可能性があります」
「なるほど、3つ連続でしたからおかしいとは思っておりました、もちろん通信には全く問題ございませんが」
それには答えず西園寺グループトップの御美奈は腰かけて紅茶を飲み始めている。
「テロ組織“ニルヴァーナ”が動いているようです、調べなさい・・・ああそれとXシリーズをすぐ出せるようにしなさい。アレの調査行程はすこし遅延しても構いません」
「おお!やはり“ニルヴァーナ”の・・・恩義も忘れた狂犬ども・・・Xシリーズを使用せずともすぐに対処いたします」
「それと私がここにいることも伏せておきなさい、“ニルヴァーナ”には例の能力があります、念のためXシリーズを用意なさい」
「つまり御美奈さまが生きていることを伏せる、という意味ですね。承知いたしました。Xシリーズをすぐ再編いたします」
(Xシリーズを使わずに対処したほうが株が上がるかと思ったが余計なことを言うんではなかった。怒ってはいないようだが・・・気を付けよう。社長命令だ、Xシリーズの担当者は2人とも海外だし隠密に事を・・・とのことだ。連絡をする必要は無い。おおおおおお!いよいよ自分に運が向いてきたか)
防音の完全な密室で2人きりなので必要ないが森崎は必要以上に後方から御美奈に密着した。
わざと耳元でヒソヒソ話す。
「それとお耳に入れるほどのことはないと存じますが少し前にイリホの正面でイザコザがありまして・・・所属不明の召喚士と例の吟悟会のものがモメまして、警察沙汰にするのもと判断で所属不明の召喚士は一時拘束してあります、まあ小物でありましょう」
「所属不明の召喚士?タイミング的には気になりますね」
「そうですね。こちらで取り調べて問題なければ警察に引き渡しますか?」
一口、御美奈は紅茶を飲んだ。
ふーっと息を吐く。
「いえ、私が直々に調べましょう、とにかくここに私がいることは内密に。それと結界を最高レベルにあげなさい」
「かしこまりましたレベル4に上げます。とにかく社長を襲おうとしたのが外部のものなのか内通者がいるのか早急に調べ上げます。しかしながらご無事で何よりでした。襲撃を読んで民間機で来られるとはさすがです。ジェットに乗っていた影武者には気の毒ではありますが。いつ襲撃に気付かれたのでありますか?」
その問いに西園寺御美奈は答える気は無いようだ。
「それと・・・カペラとスピカ、そしてポラリスの全権限をこちらに一時回しなさい」
「は!・・はい!作業が遅れますが何とか致します」
―――エレベーターを降りて会釈する社員を見ながら唇をへの字にしている森崎は肩をいからせてズイズイ歩いていく・・・。
(これは幸運だ、社長はしばらくあの部屋を動けない。支部長どもが留守なのもいい。恩を売るチャンスだ!一気に日本支部のトップになるチャンス!おおお!すばらしいチャンス!)




