閑話.スピーカーズコンテスト①
「スピーカーズコーナーって言うかスピーカーズコンテストって知ってるでしょ。誰か出してくれませんか?」
何をいいだすんだ・・・26歳独身の巨乳女教師タイガーセンセは?
少し手を止めてチラッと美術講堂入り口を見る・・・仁王のように姿勢よく立っている。
よく声が通るなぁ。
そしてZ班の部員は誰一人聞いていない。旧美術講堂には全員いるようだが。
青木君と村上君はオセロ中・・・アフロは雑誌を読んでいる、なになに月刊誌“南極ポイント”・・・・な、何が書いてあるんだろうか、しかも月刊誌とは興味深い。真名子は携帯小説を読んで涙ぐんでいる。退院したダークアリスはずっと体捌きの練習をしている・・・不良が努力して・・・どうするんだ?こいつら絶対聞いてない。オールバッカ―もギドで練習・・・え?練習してる。
ガチ不良少女と不良のなり損ないが練習している・・・世も末だな。
さて・・・僕もネットで調べることがあるし、香樓鬼さんに返信しないといけないし。
“分かりました。共闘しましょう”送信っと。
ああ“ミスプリント”の連中からもメールが来てる・・・返信しないとな。
「もしもスピーカーズコーナーに採用されれば15点、優勝なんかするんだったら30点あげましょう・・・毎年6高からは誰も出してないって問題みたいでね、明日締め切りなのにうちの高校からはゼロなの・・・。うちのZ班だったらできますよって言っちゃったのよ」
だから誰も聞いてないってば・・・。
「来週のスピーカーズコーナーに応募するだけで次の国語の期末テスト10点あげましょう」
全員がタイガーセンセの目の前に集合した「えええ」タイガーセンセ、驚いている場合じゃあない締め切り明日でしょう・・・。
「キエ―!鳥井教官。概要の説明を求めます」
「15点ぁればよぉ。10点でもよぉ、赤点脱出だぜ!もけちゃんに再試験の勉強みてもらうのも悪りいしな」前回は合宿前だったからで今回は知らんからな。
「そんな、いけないわもけキュン2人っきりで何て・・・」
「本当に30点もなんですか。国語自信なくって」でかい図体でウザい。
「この詩人である青木小空・・・スピーカーズコーナーと聞いては黙っておれません、真名子の肌がいかにきめ細かいか溢れるパッションを歌にして・・・うぉおおおおおおおお!創作!そうさぁく!」だまれハゲ、タイガーセンセの話しが聞けないじゃないか。
「先生、よろしくお願いします」センセ・・・まじまじと僕を見ている場合じゃない。
「あらじんめちゃんまで。今日は一段と凛々しくて先生、気絶しそう・・・」
「なにいやらしい目で見てんだよ!殺すぞ!鳥井!」
「あら黒川さん、先生に向かって殺すぞはだめよ。殺すぞは」
(いいから早く話しをすすめようよ・・・)
全く興味なかったので知らなかったが第1高校で毎年弁論大会みたいのがあったらしく、一昨年からスピーカーズコーナーと名前を変えたらしい。まあやることは一緒で5分ほどスピーチして面白いか競うらしい。話す内容は個人を攻撃するものや下品で無ければなんでもいいとのことだ。
この手のイベントは第3高校イベント部が主催することが多いが・・・第1高校生徒会がバックにいるらしい。まあつまり頑張っても1高生が優勝するわけだ。
応募するだけで10点、採用され15名の弁士に選ばれれば15点、さらに優勝すれば30点・・・。国語の期末テストの点数が上がるとなると・・・取り敢えず出すしか無い。
と言ってもみんなの前で言いたいことなんて何もない・・・取り敢えず参加して10点もらうのが吉・・・か。周りの連中も無い頭を捻っている「おれっち何にも思いつかねえぜ」だろうね・・・。
「日頃思っている事とか、得意なこととかなんでもいいのよ。題名と内容を簡単に教えてくれる?」
「“ケンカのイロハ”・・・」
「黒川さんらしいわね。おおまかな筋書きを教えてね、ほんとの喧嘩じゃないんでしょう?」
「説明するぜ!まず仲間がいないことを確認して弱そうなやつを後ろから襲う。武器は隠して・・・」
「・・・却下よ、却下。思い切り公序良俗に違反します」
「コウジョってなんだよ」
うん、黒川に難しいこと言ってもねえ。
「思いついたぜ!次はおれっちだぜ!いくぜ・・・“ナンパのイロハ”」
「却下!しかもイロハって黒川さんの真似してるでしょ。ナンパって・・・会話の仕方とかもうちょっと演題名を考えて・・・」しかしこの不良と不良もどきは・・・真面目か?
また手を挙げている。
「考えたぜ!」
「黒川さん、ヤル気があるのはいいことだわ」
「題は“戦闘の極意”・・・」だろうな。
「まあそうなるよね、では内容をどうぞ」
「まず弱そうなやつをトイレに連れ込んで・・・」
「・・・却下よ、先生を驚かせたいの?・・・それ人前で話す気なの?」戦闘って言うか襲撃だよな。
そして青木君が立ち上がった。
「いきます!“それってデジャヴュ”・・・です!」
「いいわね。なんか引き込まれるわ。それでは内容をどうぞ?」
「はい!青木小空・・・行かせて頂きます!・・・ランデブーポイントを追加せよ!音速ヘリはサヴァンナを駆け巡り・・・・・・2人の男女はもつれあい・・・・・・一方、七色の紅葉が実るとき・・・・メロンでできた化物と・・・銀河は・・・惑星がぶつかるときに出ている光線が重なり合い・・・シンクロすることにより流星物質イプシロンは」
「い、一回落ち着こう・・・青木君・・・あの・・・もうちょっとまとめよっか・・・」おお?タイガーセンセが困っている、勝負なら青木君の勝ちか・・・。
また手を挙げている。
「おれっちの番だぜ。“会話の仕方”・・・だぜ!」
「却下!あのね。もうちょっとオリジナリティを入れよっか。“会話の仕方”って題の演説を聞きたいですか?聞きたくなるような題をまず考えましょう」
「わけわかんねえんだよな・・・」だろうな赤点男め・・・オールバッカ―には勝てそうな気がする。
まただ、青木君が立ち上がって敬礼した。
直立不動の構えだ!・・・隙だらけだが。
「できました先生!」
「勢いがあっていいわ。いきましょう」
「題は“あらゆる過去の因縁からの失墜”・・・です!」
「そうね青木君。引き込まれるわ。どんな話しだろうって。じゃ、じゃあ大まかな内容をお願・・・」
「青木小空、行かせて頂きます・・・・キャー女性の嬌声がこだまする!そいつは突然障子の向こうからやってきてマシンガンを乱射した。スポーツ選手だった父の面影がある・・・燃えたぎる眼でそつがない、そつがないと繰り返すその姿はまるで・・・焼き鳥屋のご主人にコーヒーの原産地を聞くがごとく・・・」青木君の熱弁は続く・・・意味は分からないが確かに引き込まれる・・・そうか、こんな感じでいいのかな。
「・・・あの・・・あのね・・・えええっと。スピーカーズコーナーって言うのはね。自分の思いを吐露するところなんだけど。もうちょっと自分の周りのね。あの普通の現実の一つのことに注目して・・・普通のね」
(なんでもいいって言ったのに難しい・・・)
おお?また?自分は全然思いつかないんだけど。
「先生できました」
「星崎さん、よかったわ。ではどうぞ」
「・・・あの恥ずかしいので。読んでもらっていいですか」
「スピーカーズコンテストよ。みんなの前で話さないといけないの。恥ずかしがっていては仕方ないけど・・・まあいいわ。ちょっと見せて」うーん、星崎さんもできているのか急がないとな・・・。何やら原稿を手渡ししている・・・もう、あんなに書いてるのか・・・何も思いつかないもんな。
・・・。
「・・・」タイガーセンセはかなりのスピードで読んでいる、反応良さそうだ・・・初の合格者になるか・・・。
「ほ、星崎さん・・・」「ハイ」
「これはダメよ。人前で読んでは絶対にダメ・・・途中から完全に・・・男の子どうしのあの小説になってるわ・・・絶対にだめよ。どうなったらこうなるの?あのね。スピーカーズコーナーって言うのはね・・・分かる?・・・ええっと」
思った以上に難航した・・・一人も合格者が出ないのだ・・・。
「“俺流海辺での会話術”」
「却下!」
「“ムカつく奴は関節を壊せ(退院が長引く)”」
「却下!」
「“ロックスターはギターの先から撃滅光線を出す件”・・・」
「題はいいですけど・・・内容をまとめましょう、青木君・・・熱意があるのは分かるの・・・ただ」
「“人肌恋しい@男子校@”」
「却下・・・そういうのはダメなの・・・星崎さん・・・分かって・・・」
「“掃除するときのホウキの持ち方とは”・・・」
「村上君・・・掃除に思い入れがあるのは分かるんですけど・・・いいんだけど・・・平凡っていうか・・・まあ・・・却下ね」
これは・・・ダメだな・・・。
って・・・おお!とうとう緑アフロ軍師が動く。
「では鳥井教官・・・いきます。題は“幽霊奇譚”・・・」
「!!・・・合格・・・」
えええ――!!
(内容はいいのか・・・題だけで合格するのか・・・さすがアフロ)
「いいわ。聞きたくなるし。面白そう・・・合格よ」
どうも不良と不良もどきは納得いかないようだ・・・そりゃそうだ。
「まじかよ。内容聞いてねえじゃねえか」
「ひいきはよくねえぜ!鳥井」「先生を呼び捨てにしないの」
まじかよ・・・一つもできてないの僕だけじゃないか・・・。
そしてピンっと青木小空君が立ち上がった、やる気満々だ!
「“老いたライオンは機械仕掛けのバンビの夢を見る”・・・」
「題はいいのよ・・題は・・・では内容に行きましょう」
「青木小空いきます!・・・文明は崩壊した!いたるところで強奪が繰り返され、降り注ぐ太陽の光は大地を焼き尽くす・・・略式カオスの時代に立ち向かえ・・・ゼロゼロの勇者よ・・・逃げ惑う無実の暗黒の民を焼き払え!・・・アーノ、ウーノ、マーノ・・・術が完成したら奴らが復活する・・・キャーあたしの下着を返して・・・」
「・・・却下・・・」
いかん・・・なんでもいいから出そう・・・。
「せ、先生・・・」
「なあに、じんめちゃん。できたのぉ」険しい顔のタイガーの顔が緩む・・・いけるか。
「あ、はい。内容とかまだまだなんですけど・・・」
「いいわ。どうぞどうぞ」
「題は“学問のおすすめ”で・・・内容は・・・」
「合格!合格よ、じんめちゃん。合格・・・いいわ。学問とか今日久しぶりに聞いたわ。先生心から感動した」
え?
まじ?やった・・・10点ゲットだ・・・しかし僕に甘くないか・・・まあいいか・・・僕は賢い・・・デキが違うのだよ、デキが。
それでもって、やっぱり納得いかない様子だ、コイツ等は。
「ひいきじゃねえかよ!おれっちだってよ」
「てめえ鳥井・・・」
「黒川さん、じんめちゃんに何か文句でもあるの?」
「あ、あるわけねえよ。先輩なら当然だしよ」ダークアリスは一瞬で静かになった。
―――熱意がある・・・間違いなく・・・仲間の僕らにも何言っているのか分からないが青木小空・・・大した奴だ・・・タイガーセンセと深夜遅くまであの調子で作成していたらしい。ちなみにさっさと僕とアフロは帰った・・・つき合いきれん。青木君の声が最後まで聞こえていた「下法には下法で立ち向かえ!サンシャインリーダー!―――自爆スイッチは一人二個まで―――二個までです!―――お洒落怪盗のタッコングは添い寝しながら双子座の内政干渉を良しとせず―――」「却下・・・」




