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ドラゴンディセンダント  作者: ドクターわたる
竜の召喚士
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閑話 もう一つの約束

「そうっす。緑川尊といいます。夕方6時から最低6時間でお願い・・・・・・ええ、取り敢えず増えるかもっすけど9人で6時間でいいっす」やや浮かれてリズムをとっている緑川尊は自室で電話中だ

(みんなにはメールしとけばいいっすね。まさか全員で・・・まあ未来ちゃんはまだ取り調べ中で無理っすけど・・カラオケに行けるとは思わなかったっす・・・ジェニファーのお姉さまも参加してくれるとかで・・・天にも昇る気持ちっス)


「いやあ可愛いっす」

そして携帯の如月葵の写真や動画を見てにやけている。


(それにしてもっす。こんなに早く肉親の方に紹介していただけるとは・・・この緑川尊・・・これはチャンスっす)


「まあでも驚いたのはメチャメチャ驚いたっすね」

(なにせ、如月の姐さんのお兄さんが、あんな髪の毛の塊・・・いや、もとい・・・仲良くならなければいけないっす・・・あれで西園寺桔梗さんの婚約者が務まるもんなんすね・・・竜の召喚士でもないみたいっすけど・・・恐ろしい事実っす)


「隣にいた緑のアフロの人も変わっていたっす、最初は緑アフロの人がお兄さんかと思ったっすけど・・・そうっすね。どうするかっすね」


(交際を認めてもらうためになにか贈り物をするべきじゃ・・・うーん、いい考えっす)


「いい考えっす」先ほどから緑川尊は自室を1人で行ったり来たりしている。

ここ数日、“ドラゴンディセンダント”は正しく正念場だったのだ。


あの最強チーム“ホーリーライト”と揉めるのは・・・本来は自殺行為だが。

第3高校の先輩チーム“DD-stars”が介入、どころか命がけで助けに来てくれて何とかギリギリ戦闘といえる状態に持ち込めたわけだ。

次の日、満身創痍の如月葵と西園寺桔梗の戦いは熾烈だったが・・・西園寺桔梗に軍配が上がった。

そして“ドラゴンディセンダント”はコーチも含めて今日全員が第1高校に呼び出されたのだ・・・緑川尊は全員の退学・退職を覚悟していたのだがそうはならなかった。


そう。


今日は嬉しい日だ・・・肩の荷が下りたが非常に疲れているはずなのに気が高ぶって仕方ないのだ。


「それにしてもジェニファーのお姉さま、ひょっとして俺に気があるそぶりだったっすね。高成先輩に勝てた充実感が恋を呼ぶっす・・・まさかあの犯罪おっぱいが・・・フフゥ」

さらにニヤけながら自室を行ったり来たりしている。


「それにしても最近はいいことばっかっす、未来ちゃんは超法規的措置とかいうやつでなんとかなりそうっすから・・・一番ラッキーなのはあれっすね・・・ゲヘナがタイミングよく潰れてくれてラッキーっす。まあ“ドラゴンディセンダント”ごと第1高校に転校するだけなんて・・・言うなれば緩い罰っス」


「ひょっとしてタイミングよくゲヘナを潰したのは如月の姐さんの超人師匠かもっすね・・・いやいや十分ありえるっすね、恐ろしい人っす。一回お会いしたしっす」


ウロウロ歩き回っていた緑川尊はハッと気づく。

「そうっス!整髪料がいいっすかね・・・お兄さんへの贈り物は・・・この時間ならダッシュすればドラッグストアにギリ間に合うっす」

(善は急げっす・・・今日中に仲良くなりたいっす、お兄さん・・・将を射んとする者はまず・・・えっと)


「ことわざは沙羅ちゃんに聞かないと分かんないっすね」


さっと紺色のジャケットを羽織り・・・茶髪をかき上げて緑川尊は自室を後にする。


(そうっす・・・如月の姐さんとのツーショット写真か動画を用意しておく必要があるっす・・・ベストショットがいるっすね。お兄さんにもう恋人ですアピールを目に見える形でガッツリする必要があるっす・・・お兄さんの部屋はもう調べてあるっす・・・待っててくださいっす)



マンションを出ると夕日は沈んだばかりでまだ少し明るい。


“念装疾風”!


魔力をまとい超速で緑川は駆けていく。







―――6時間後。

ドラッグストアとは真逆・・・神明帝のSPである髪がモコモコした郷田と葵が戦ったあたりよりもさらに少し南の林・・・。


人工物が少ないためにかなり暗い・・・1人歩いている。


手足が血まみれの緑川尊が足早に歩いている。

学校とも自宅のマンションとも逆方向へ歩く・・・。


「冗談じゃない・・・冗談じゃないっす・・・気付いているか気付いていないのか・・・」


「こんな能力が存在するんすね・・・本人は気付いていない可能性が、だとしたらヤバいなんて言葉で片付けられないっす・・・ヤバいの100倍でも追いつかないっす、ああ・・・ああ・・・アスモちゃんには悪いことしたっす・・・アスモちゃんが居なかったら代わりに俺が・・・死んでた・・・っす」


足元はおぼつかない。

能力者が歩くのすら厳しい状態・・・。


「あの時おかしいと思ったっす・・・そうおかしいと思っていたっす・・・そんな意味だったなんて・・・ああ2人いるのに気付くべきだったっす・・・クソ!・・・1人なわけないっす・・・そう・そっちもっすね・・・思い込みっす・・・どっちかが多分・いや年齢から言えば・・該当者は・・・恐ろしいっす」


小声で独り言を言いながら林の奥に進んでいく。


「あの女・・あの女は人の命なんてなんとも思ってないっす。騙されてるんす、葵さん・・・」


「あぁあぁ・・・こんなに時間がかかって申し訳ないっす・・葵さん・・・気付かないなんて・・・もっと早く・・・俺が・・・俺が・・・俺が気付いてあげられれば・・クソ!」


時々つまづくのは視界が悪いせいだが暗いからではない・・・少なくないダメージを負っている。


「あぁ・・・出生を調べるんじゃなかったっす・・・いや・・・いや・・・俺じゃないと」


「俺ならもっと早く・・・もっと・・・」


茶髪のロン毛は血のりで頬にこびりついている。


「・・・まずいっす・・・まずい・・・今は思いついてるんす、もしこれが正しい考えなら・・・あの女に心を読まれたら終わりっス・・・」「・・・あの女は・・恐れている・・・」


少しだけ立ち止まり、ふーっと一度深呼吸をした。


「なんとか伝えないといけないっす・・・迷ってはいけないっす、葵さん・・・」


肉体的なダメージよりも重い何かを引きずりつつも眼光は鋭い・・・高成と戦った時よりも。


「心を読まれるまえに・・・死ぬ必要があるっす。蘇生されないように・・・死ぬ必要がある・・・そしてあの女にバレないように・・・伝える必要が・・・ある・・・バレるわけには・・・あの女が恐れて・・いる間に」


「伝えることがある・・のに・・・心が読まれれば・・・あいつは心を読む・・・伝えた相手も・・・では・・ふふ。難易度の高い話しっすね」


ヨタヨタ歩くが動きには力がある・・・思いを込めて何かを求めて・・・。


なんらかの決意が緑川を突き動かしていた。


「あいつは今・・・疲労しているはずっす・・・回復されたら・・・覗かれて終わりっス・・・」


あるところで足を止めた緑川は目を閉じて、それから空を見上げた。


「この辺でいいっす・・・ね」


「命をかけるのは怖くないっす・・・・・・ただもう一回会いたかったっす・・・・・・会いたい・・・美人で可愛くって・・・騒がしくて・・・陽気で・・・怖くて悲しい人に・・・」


「好きなんす・・・葵さん・・・」


(俺のメッセージを受け取ってくださいっす・・・分の悪い賭けっすね・・・)


(どうか違和感に気付いて)


血まみれの右手を掲げる緑川尊は真上に攻撃魔術を展開する・・・攻撃方向は通常とは逆・・・つまり攻撃対象は自分だ。


(そうか・・・つまり逆なんす・・・最初から逆だ・・・それさえ)


“限定解除”

“火蜂群現収束”


誰も見ていない暗くて小さな林に炎のシャワーが降り注いで輝き・・・周囲は少し燃えて・・そして明かりはゆっくり消えた・・・。


静かな闇だけがそこに広がっていた。


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