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ドラゴンディセンダント  作者: ドクターわたる
竜の召喚士
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閑話.決戦前夜

(3人か・・・全員女性。第1高校の制服だ・・・外に誰か来てるな・・・まあいい、今日は本当に散々だった・・・左脇もまだ痛いし・・・桔梗に振り回されたからか・・・それか葵に抱き潰されたか・・・)


そのうち1人が化学室に手慣れた様子で入ってくる、そして化学準備室のドアを開けたここは第6高校更生学園の文化部である科学部の部室なのだ・・・部長は僕・・神明全・・・。他にも会ったことのない幽霊部員が2人いる。


科学準備室の床にボーっと座り、孤独に黄昏ているのだが来訪者だ。


彼女は僕に近づいて来る。


「おまたせ。アキラ・・・待ったでしょ」

「・・・」


黒髪の間から近づいて来る彼女の足だけが見える、僕は床に座って科学系雑誌だらけの本棚を壁にしてもたれているのだ。

壊れた人形のように手足には力がない。


お願いしても無いのに僕の黒髪をかき分けて頭の後ろで束ねているようだ・・・肉眼で彼女の顔が見える。


「ばぁー。大変だったね。かわいい顔にこんにちわぁ」

「麗良ちゃん・・・」

「このまま黒髪のままにするの?あたしはどっちでもいいけどね」

「そんなことはどうでも・・・」

どうも納得がいかない・・・さっきのは。


現れたのは第1高校からやって来た三つ編みの更科麗良だ、降魔六学園執行部の総書記を務めている偉い人だ。ついさっきも会ったばかりだが。


木曜日は第5高校と第6高校の視察日なのだ。毎週毎週来ている、潰れかけている当科学部の指導が公の理由だ・・・残り2人の執行部員が他の文化部を視察しているようだ。


チャーミングな笑顔で僕のどうでもいい顔を覗き込んでくる。


「やっぱり、ひっどい顔してるわね。落ち込んでるかと思ってさ、心配したのよ」

「今、目立つのはまずいんだって・・・」僕は極度の対人恐怖症だがさすがに今更、麗良に顔を見られてもなんともない・・・保育園からだから付き合いは長い。


「止められなかったのよ・・・あのバカ女」そう一瞬後ろを睨みつつ麗良は僕の伸ばしている脚にまたがり腰かける・・・最悪の気分なのに・・・三つ編みの麗良は楽しそう・・・だ。


そう、さっきというのはゴリラ以上の怪力女の葵に抱きつかれて極悪人の桔梗に振り回されたことだ。


「あたしのカレシをぶんぶん振り回してくれちゃってあの女は・・・」そう言いつつカバンから包みを取り出す、さらに包みを開けて・・・。


「はい、あ~ん」


「自分で食べれるよ・・・」


そう、こんな感じで毎週木曜日の放課後はサンドイッチを差し入れしてくれている・・・。


更科麗良がいなかったら餓死しているかもしれない。


週一でも夕飯がタダなのはありがたい。後見人からは頼みもしないが一円も支給がないのだ・・・古いルールだが一応、竜王家直系はバイトも禁止・・・。



―――いやバイトの面接は行ったことがあった・・・きちんと髪を束ねて顔も出して服も借りて、割りが良くって1日限定だそうで・・・事務所のようなところについて行って・・・時給6000円だと言うので。


・・・浅黒いオジサンのカメラマンが喋っている・・・お金さえもらえればどうでもいいのだが。

「いや~かわいいね。モテるでしょ?モテない?うそうそ・・・」

「・・・いえ全然です―――」

「とりあえずビタミン剤だからこれ飲んで撮影しようね・・・」

なんだ、写真を撮られればいいのか楽勝だな・・・これで6000円なら・・・。毒でも6000円のためなら飲むしかない・・・。


ビタミン剤とやらの毒性は大したことなかった、ベンゾジアゼピン系とバルビタール系がミックスされているようだが・・・睡眠薬は僕には効かない・・・なるほど対象物をリラックスさせるための薬で・・・それをわざとビタミン剤と言っているのか・・・うんうん賢いな・・・こういう撮影ってのはリラックスさせるのが必要なのか・・・。でもこれ・・・もう販売されていないはずだけどな、禁止薬剤だったような・・・撮影ってこういう準備も必要なんだな。


「―――眠いかな?じゃあそろそろ上着を脱いでみよう」

(・・・上着を?)

うん?と僕は小首をかしげた―――。


うんうん・・・思い出したくない・・・一銭にもならなかった・・・なぜかカメラマンもあれで・・・さらにややこしくなり・・・というか逃げた。いいバイトなんてなかなか無いんだな。



おや顔が近い・・・麗良ちゃんか。

「―――聞いてるの?アキラ。もう!上の空なんだから。ふざけてんの!いつもそうだから―――」

「聞いてるってば・・・」

なんだか僕の伸ばした両膝あたりに真向かいで軽く腰かけ麗良はブーブー文句を言っている。


「―――そういえばさっき・・・大丈夫だと思うけど、なんともなかったのよね?桔梗にぶん回されて、怪我してないでしょうね」

心配そうに見てくれる。


「ああ・・・そうそう、肋骨折れてた・・・」

「・・・は・・・はぁ?」


げ!ヤバ!


そのままの態勢でフワリと麗良は浮き上がり・・・目つきがやばい・・・。


天井を向きながらブチ切れた・・。


魔力の回帰波で化学準備室は揺れる。


「待ってストップ、ストップだって・・・」

「あのブス!・・・人の大事なカレシになんてことを、100倍にして返してやるわ!」

どう見てもスカートの中が丸見えだが・・・そんなことはどうでもいい。


っていうか西園寺桔梗のことをブス呼ばわりしているのは学園でも麗良ちゃんくらいだろうか。


「大丈夫・・・もう治ってるし・・・そもそも葵に抱きつかれた時のかもしれないし」

なぜか激おこになった彼女をなだめるのはその後大変だった・・・。



演劇の練習だろうが・・・散々、愛の言葉を吐いて・・・そろそろ時間になったようだ・・・。


「し、仕方ないわ。戻るわ、一緒にいたいけれど・・・ひとつ言っておくわ、あたし以外は全員敵だからね」

「それは分かってるよ」

「・・・あと言い忘れたわ、明日の準備はできてるのよね?」

「大丈夫、大丈夫だって」明日って何かあったっけ?


「それよりも例の秋元未来が仕掛けたオリジナルの爆弾のことなんだけどさ―――」



・・・そしていつも通り「きっと幸せにするから安心して待っていてね」そう言って去って行った。

サンドイッチは夜の分まである・・・友情ってすばらしいな。


ひどい話で桔梗も葵も相変わらず覗けないし・・・なんとかあの2人をぶつけてその隙に・・・なんだけど・・・はあ、困ったな。


それより今晩はゲヘナの残党を狩るかな、もう残り少ないし・・・香樓鬼さんからの情報で場所はほぼ予想つくし、皆殺しにしたほうがいいけど・・・どうしようかな・・・あっと、魔鈴も調整しないといけないし・・・そう、“ミスプリント”にも情報を提供しておかないと・・・。



来年の聖魔大戦・・・4000年間で11回目の・・・聖戦。

観測では最小規模になる。“蜃気楼の塔”は世界でたった3ヵ所にしか現れ無い。魔族側が投入できる魔力量もたがかしれている、文明が発展した人類には魔族の攻撃は何も通じず・・・企業のデモンストレーションは成功し、指揮した人物は勲章を貰い・・・もちろん何の懸念もなく人類側が勝つ・・・。


多分そうはならない・・・霊眼がみる朧げな未来は・・・霊眼で知覚したものを数値化しても観測センターのものとは乖離がある・・・それはいい。


ただ何か妙だ・・・こちら側に問題があるのかもしれない。


それに竜王の霊眼にしか見えない?だとすれば人に伝えるのは難しいだろう。魔族の侵攻が簡単にすんだなんてことは過去十回の聖魔大戦で一度もない。魔族側に与する人間が確実にいるのだ。そういう人間は自分が魔族側にいることさえ分かってはいない・・・ゲヘナがいい例だ・・・そしてあの人造魔族は・・・ひょっとして・・・。


ふう・・・しかし麗良は優しいな・・・でも・・・言ってこないけどお見合いがあることは分かっている・・・倉持なんとかとかいうお金持ちと・・・もうすぐここには来る暇も、必要も無くなるだろう。演劇の練習用のカレシ役・・・僕の役目はもうすぐ終わるのだろう・・・孤独は安全だ・・・別に・・・それでいい・・・はずだ。


はあ、なんか変な感じ。

あ、そうか。

スパイカメラのように葵と桔梗のメインクリスタルにつけておいた印が消えているせいだ。

最近は意識せずに24時間、桔梗か葵をずっと覗いていたからな・・・それで変な感じかするんだな。


騎竜モルネの能力は封印しているのでTMPAが44000から3000まで下がっているのだ。

通常の探知魔法をされても今は竜族の召喚士であることは分からない妖蟲族の召喚士だと誤認されるだろう。


まあしばらく覗いても仕方ないか。


少し仮眠して今晩はゲヘナの残党を片付けておくか。




そして次の日だよ・・・何もかも狂ったのは・・・。

朝っぱらから桔梗と戦うなんて・・・。


知らないよ、六道召喚記念大会なんて。

そして試合後に僕の染めている黒髪は生まれた時の色・・・青い色(ノーブルブルー)に戻った。


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