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ドラゴンディセンダント  作者: ドクターわたる
竜の召喚士
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2-18.月夜に吠える

―――その後写真など散々取られた後だが、Z班とZ班第二部のメンバーは旧美術講堂前に集合した。


我々の帰還を待っていた六学園生徒たちはタイガーセンセに帰宅するように言われて・・・なんと素直に帰っていった・・・というか着いてくるものはいなかった。


「拍手の花道も悪くないのう、もけ」

そういうものなのか・・・?



旧美術講堂の階段の上、講堂の玄関前に緑アフロ部長が立つ・・・簡易の壇上というわけだ。

もう一人の部長の由良は登らないようだ。


緑のアフロが少し風になびく。


「キエ―――!諸君!お疲れさまであった!ご存知の通り結果は十二分であろう!大したものである!納得いかないものもいるであろうが、であれば明日からの鍛錬に生かせばよかろう!全国大会の決勝リーグ出場するのは極めて困難、勝つのはさらに艱難辛苦の道のりである。自分は成長したか?持てる能力は存分に発揮できたか?今後の課題は見えたか?それが財産になるだろうと思われる!・・・城嶋由良部長?補足があれば?・・・無い?では鳥井教官!締めて頂けますか?!」


今度はヒラリと青いジャージ姿のタイガーセンセが壇上に立つ。


「えー。みなさん。おめでとう・・・疲れたでしょう?本当にお疲れ様でした。この大会で得たものはみなさんの自信になるでしょう、人生をより豊かにするでしょう。えー堅苦しいことは抜きにして・・・先生は感動しました。人間として生徒と教師は対等です。対等な人間として先生は心からの喜びと感謝を送ります。今日はゆっくり休んでください、まだ実感わいていないでしょうけれど・・・全国大会優勝と4位入賞・・・本当にみなさんおめでとう」


アフロが由良に目配せしているようだ。

なんだかんだで2人とも優秀だもんな、ひょっとして付き合ったりして・・・。


「では皆様。疲労もあるでしょうけれど気を付けてお帰り下さい。打ち上げは城嶋由良にお任せください。ええ。期待して下さって構いませんよ・・・では解散・・・です」

とはいうものの結構みんなはまったり話し込んで・・・眠くなったものから・・・つまり村上君と青木君から順に帰っていった。



由良と華聯が手を振って帰っていき、アフロと僕とタイガーセンセが残った。


全く興味なかった全国大会・・まさか本気で優勝目指すとは・・・しかも優勝してしまうなんて。


この緑の頭は何を考えているのだろうか・・・。

「有言実行だったね。本当に優勝した」

「うむ。上出来である」


「・・・カオス理論だっけ?勉強してみようかな?」

「適材適所、もけ。貴様にはいらんよ」


もう少し話したかったがタイガーセンセが眠いと言うのでなぜか僕が送っていくことになった、まあいいけど。


美術講堂玄関前にはアフロ隊長が最後に1人残っていた・・・いつも1人でなに考えてるんだろうか。


なぜかタイガーセンセと僕はゆっくり歩いている。

・・・魔力を使って走れば、それか飛べばもっと早くタイガーのマンションまでたどり着くが、まあ歩いて帰るようだ。


もうあたりはすっかり真っ暗・・・星明かりはあるが・・・ああ、月もあるな。


多少風がある。

夜空には下弦の月という奴かな・・・結構キレイだ。


神明家・・・つまり竜神明王家には月の加護があるのだと言う・・・そんな迷信はどうでもいいが、月を見るとなごむのは昔からだ。


・・・そろそろ動かなくてはならない。

リスクは承知だ、Z班のメンバーは驚くほど成長してそして少し手伝ってもらうことになるだろう。


御所のある次元環を封印する。ついでにいくつかの事例を片付けないと。

少なからず命をかけることになるだろう。

原始の船が使えるといいのだが。


何かタイガーセンセがずっと喋っているがあまり頭に入ってこない、変な夢を見たからかもしれない。

「じんめちゃん?本当はね。みんな長期戦は初めてだから少し心配だった、一番体術を教えた黒川さんは入院させてしまって力不足だわ・・・それにしても、ふふ。そのジャージずっと着てくれてるのね。ひょっとして先生のことスキ?」

「ええ。これ。すみません」そういえばきちんと断ったことなかったな、勝手に借用して、だが謝ろうとしたが遮られた。


「いいのよ。アキラなら何をしたって。ついでに本当の本当ははあなたさえ無事なら・・・ね」

「先生ってなんで僕に優しいんですか?」

「ふ~ん本気で聞いているのなら・・・今度、心と体に朝まで理由を教えてあげますね」

なんのこっちゃ・・・まあ女性は謎だ・・・別にそれでいいや。


「ところで成り行きとはいえ・・・城嶋さんと腕を組みましたね?先生の目の前で・・・」

「はい?」

「どうして先生とは腕を組んでくれないの?」

「は?はい?」

なんかこの流れは麗良と話しているかのようだ。


・・・そしてなぜかタイガーセンセと腕を組んで帰ることになったわけだ・・・ややこしい。


どういう心理なのか?


ひょっとして・・・もしかしてタイガーって僕に好意があるんだろうか?


・・・まさかねえ。


・・・インハイは終わった・・・後はとにかくやれるだけやって、あとはアフロか麗良に引き継いでもらう・・・それしかないだろう。


多分・・・僕はもう長くないのだ。


って?ん?

何か近づいて来る・・・。


おかしい・・・。見落とすなんて!なぜ見えない?


竜王の霊眼で見えないなんて。


こんなに接近を許すとは。


「―――ねえ聞いてる?アキラ?」

「先生、何か来ます右斜め前の林から近づいてきます」

「え?なに?こわぁ~ぃ」

えーい!緊張感の無い先生だな。霊眼で見えないということは相当な手練れ、強敵だ!


タイガーセンセの腕を振りほどいて前に出る・・・何が来ても対処してやる。フィーネの鎧をいつでも纏える・・・集中だ。

スピードは大したことないが・・・ここまで気配を消せるなんて、何者だ?


ガサッ!!!


そいつは暗がりの草むらから飛び出してきた!


黒いシルエットは両手をブンブンと威嚇している!

「グモ~!どおして起こしてくれなかったのじゃ!バスの停留所まで行ってしまったのじゃ!」

どうも激怒しているようだ。


ゴスッ!!!


あ!タイガーセンセが黒いシルエットに殴りかかった。

天然パンチの顔でっかいダイブツくんは凄い右ストレートを顔面にくらってぶっ飛んでいった。


ああ、忘れもしない。ダイブツくんじゃないか。


「いや、あのセンセ。ダイブツくんですって。気配がしないわけですね」

あれ?さらに空中から滑空しながらキックで・・・追撃しようとしているぞ、タイガーセンセ?


「あの?センセ?あの?おし・・・教え子ですよ。あの?」キックをぶち込んでさらに振りかざしている右手を僕が掴んで止めたがまだセンセはやる気だ。


・・・かなりのスピードで打撃を加えている。


なんでこんなに戦闘モードに突入してるんだ?


「グモ―――!!!グモ―!!」

「いいとこだったのに邪魔するなんて~」

なんだ?タイガーセンセが怒っているような・・・そしてダイブツくんの顔が腫れあがっていく。


えええ?え?


―――とにかく戦闘はようやく終焉をむかえた。


「見間違えました。ごめんね。ダイブツくん」

そんなにいきなり可愛く喋ってもさあ・・・センセー。


「おもいっきり顔を見て殴ってきたのじゃ。暴力教師じゃ」

「暗かったから仕方ないでしょう」

えっと・・・み、見えてたよね?


月明かりの中・・・そりゃダイブツくん・・・相当怒るよね。


「どうなっているのじゃ。もけ!このメス教師が暴力を振るったのじゃ!」

ああややこしい。


「まあまあ、そんなことより何がどうしたって?」

「グモ~!だれも起こしてくれないからバスの基地みたいなとこまで行って走って帰ってきたのじゃ。仲間!起こす!運転手!起こさない!気付かない!なんで誰も気付かんのじゃ!」

「それは良かったね、ダイブツくん・・・えっと足が丈夫で・・・ねえ。えっと・・・マラソンの極意を極めているもんね?」

なんか褒めよう、とりあえず・・・それで適当に話題を変えよう。


「なんじゃ、一体・・・マラソンなどと素人が生意気なのじゃ!マラソンというのは昔ギリシャ!走る!一人の兵士が42.195Kmの距離をじゃ・・・」

「うんうん。うん?最初は36キロくらいだったらしいよ?」

なんだ?タイガーセンセが後ろから身体を密着させてくる、息がくすぐったい。


「グ!グムウ?それならマラソンという都市があってじゃ」

「うんうん。マラトンの戦いのマラトンだよね?それを英語読みしたのがマラソンだね・・・さすが物知りだね。ダイブツくんは」何?なんで胸を押し付けてくるんだタイガーセンセは?


センセが殴るからややこしくなってるのに。


「グムウゥ?ふ、ふん!もういいのじゃ!帰って寝るのじゃ」

どうも少し落ち着いたらしくダイブツくんは去って行った・・・あれ寮に向かってないけど林で野宿するの?さすが唯一無二の存在だ・・・わけわかんねぇ。


そしてタイガーセンセもわけわかんねぇ。

「ねえねえ。あきら、あたしたちも一緒にお風呂入って寝ましょう・・・ね?」

「はい?」この人も分かんねえ。


世界を内向きに閉じなければ・・・僕は空を指さす。

「まあでもいい月夜ですよ。先生」

「・・・そうね」


でも一緒にはお風呂に入らないよ・・・恋人でも作ってください・・・センセ。






Z班に逃げ込んで・・・逃げて逃げた僕は。

隠れ蓑にしていたZ班に借りがある。

全員を竜族にしてあげて・・・まあそれの手伝いをして。

借りは返すことができたのだろうか。


タイガーセンセ・・・鳥井大雅先生もだ・・・サンザンご馳走になっているし。

他にもいろいろ借りがあるが。

これでいいのかな・・・まあ良かったとしよう。


左肩の・・・自身の身体に同化している呪詛は待ってくれないだろう。

僕の人生は残り少ない。


鬼塚紅亜さんには後見人になってもらって。

すごく助かった、僕も何かできればいいが。

まあ原始の船もあげるし、僕が持っているあらゆる権限を可能な限り譲渡しておこう。


更科麗良は最初にできた友人だ。

借りだらけで返せそうにないくらいだ。

それどころか最後まで迷惑かけるだろう。


如月葵・・・如月神明睦月葵は・・・血のつながらない妹だが・・・。

伝える必要はないだろう・・・アジ・ダハーカ戦も命をかけさせたが・・・。

もう一回くらい命をかけてもらうことになるだろう。

そして・・・葵を次期・・・竜王にする・。


アフロにもとんでもない迷惑をかけるだろうが。

引き継いでもらわないといけない。


それから・・・。

なぜか優しい城嶋由良・・・。

僕を利用する気じゃなかったのか。


罰ゲームで僕に告白した不知火玲麻。

幸せになってくれるといいが。


するべきことと、したいことは異なる。

どとらが重いかはわからない。





僕は夢を見ている。

夜の海の神殿の夢・・・。

いつからここに来て、いつまでいるのか分からない。

遠い水平線は青く輝き、星は見えない。ただ繰り返す波の音は心地いい。

やるべきことがあった気がするのだ・・・はるかな未来かあるいは過去に。

なにも思い出せないのが救いなのだとすれば、ここは穏やかでただ気持ちいい。


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