2-15.カレシとカノジョの事情と情事
応援に来ていた・・・とういか観戦に来ていた6校生たちにもみくちゃにされるが・・・現実味がない。
「キエ――!次の試合の妨げになるではないか・・・!」
「観客席にもどりなさい!」
アフロとタイガーセンセに逆らうものは皆無で・・・何やら賛辞を投げかけつつ6校生たちは引き潮のように去って行った。
ん?念話だ・・・由良か?
(尊敬するじんめ様。愛しいじんめ様・・・さすがでござました・・・由良です・・・華聯の能力を借りて念話させて頂いております・・・これから試合ですので祝辞を言いにすぐは行けませんので申し訳ありません)
(優勝はアフロ部長のお陰でね、僕は何もしてないよ)闘技場の向こうの端にいる由良と目が合う・・・キツネ目の由良はなんとまあ優しそうに少し笑っている。
(ご謙遜を・・・では後ほど。失礼いたしました・・・)
まあでも優勝してしまった・・・要因はなんだったのだろう・・・最も弱いチームが勝つために必要な・・・ん!
ブルルルルル!!
って、僕の携帯端末が初めて鳴っている・・・そう、とうとうクレアさまに相談して端末を買ったのだ・・・そんな相談いりません・とは言われたが。高額だし相談するのは当然だ。
そう!とうとう買ったのである・・・自分的には大ニュースだ、団体戦優勝より嬉しいかも・・・欲しかったんだよね、学年で持ってなかったのは僕だけだろう・・・ああ、ダイブツくんもだったか。
ふっ、一歩リードだな。ダイブツくんめ。
そんなことはともかくメールアドレス、僕のメルアドはまだ一人にしか教えていない。アフロに気づかれると端末を買うほどの大金を持っていることがバレてしまうし。
・・・記念すべき初めてのメールは・・・やっぱり僕の最も古い友人からだ。
“多目的・・・で待つ”
なんのこっちゃ?
・・・とにかく探さないと・・・ヴィジョンアイを発動させる。
周りのみんなは浮足立っている・・・こっそりポケットのメール画面を霊視で見ているため気付かれていない。
・・・多目的なんだ?
えーっと多目的トイレっぽいものしかない。その上いくつかあるじゃないか、どれだ?
(ああ簡単だった。簡易結界が内側から張ってある。あそこか、なるほどそこそこ広い空間。賢いなあ、やっぱり)
人目のつかない場所に移動・・・17.7秒後には会えるだろう。
“空間覚醒移送”
―――テレポート成功・・・結界内へのテレポートは基本的に不可能なのだが、知る限り僕だけは可能なのだ。
さてご挨拶しないと・・・。
「来たよ。待っ・・・」
「遅いのよ!いつまで待たせるのよ!メールしてから1分も待ってるでしょう?」
「ごめん、ごめん。多目的なんと・・・」
「すぐ言い訳するんだからアキラ」
「わかった、わかった。ごめ・・・」
「2回言うのやめてくれる?」
「わかったってば。麗羅ちゃん」
多目的トイレの個室でカギをかけ結界を張って僕を待っていたのは幼馴染みにして生涯最初の友達・・・更科麗良だ。今はプカプカ浮いていない・・・地面に立っている。
まあ幼稚園が一緒だったのだ・・・父王が毒殺される前までは。
そして、お構いなく会話を進める気のようだ・・・機嫌はいいのか悪いのか・・・それが最大の問題だ。
「でもようやく彼氏が全国一になってくれてうれしいわ」
「さっき副将戦で手加減したよね?あれはそ・・・」
「いいのよ。バレるわけないでしょ。まわりバカばっかなんだから!」
「まあそうだけどさ・・・」やっぱり手加減されてたのか・・・だろうと思ったけど。
「まあ、とにかくやったわ。よかったわ。優勝おめでとう。ああ嬉しい!」
そう言ってピョンとジャンプしつつ僕の右手を両手で握って軽く振ってくる。
うん?顔はうれしそうだが・・・油断はできない。
「いいの?“ホーリーライト”は準優勝にな・・・」
「いいに決まってるでしょ。この日のために第1高校入って“ホーリーライト”入ってあなたのために諜報活動してきたんですからね。あたしはいわばZ班のスパイってとこよ、そこんとこ宜しくね。それより」
「そ、それより?」なんだろう・・・怒ってる?
「模試もおめでとう全国一位だったよね」「知ってるの?」「データアクセスできるからね。ただし数学だけ」「え、あ、うん」「そして国語は200点中90点で現代文は撃沈ね、なんで?なんで?簡単だったでしょ?国語さえできればエミリーにさえ勝てそうなのに、どうして読解力がないのあなたは!」「そんなこと言われても最悪のことを想定してさあ・・・」「違うでしょ出題者の意図を想定しなさいよね!」「ご、ごめんてば」
う~んこないだの模試の話しだったか。なんで叱られているんだ・・・。
でも腰に手を当てて小言を言う彼女は・・・まあ可愛らしい・・・と言えなくもない。
「まあとりあえず、割と彼氏が個人戦も団体戦も桔梗も潰して優勝して、成績も抜群で、顔はかわいいし、最近死ぬほどモテてるし。彼女のあたしとしてはメチャクチャ嬉しいわ」「え?モテてる?誰が?」「ああ、完全にいつもの病気なのね。大丈夫よあたしがいつか治してあげるから。まあ、とにかくあなたはね、あたし以外から全員嫌われているのよ?わかるでしょ?」「ああ、それは分かってるよ」「・・・うーん。嫌われているわけないでしょう?何一つ分かってないわ。重症ね」う~ん意味がわからん・・・この個室はややこしい状態になりつつある。
「どっちやねん」
「あとそれよ、それ。下手な関西弁やめてくれる?」
ギロっと横目で睨まれる・・・いや睨まれてもさあ。
「いやあの・・・これは・・・」
「聞き飽きたわ。3年間大阪の施設にいたからなんだって言うの?」
「そ、それはツッコミの血が騒ぐって言うか・・・」
「何言ってるの?存在自体がボケみたいなのに!」
「おお・・・旨いこと言うね・・・そうかボケ担当なのかな、ツッコミじゃなかったのか・・・」
ツッコミは向いてないのかな・・・そうかもなぁ。
「そんなことよりも桔梗のあの爆発属性みたいのって何?」
「あたしが知るわけないでしょう?アキラが妙な贈り物するからでしょう。あたしには何もくれないのに!」
「いや、あの・・・ごめんね。セレーテッドはどちらかって言うとトラップに近いって言うか、コントロール激ムズなんだよ、だから」
「いい訳なんか聞きたくないわ」
怒っているのか・・・そうでないのか・・・よくわかんないな・・・いや怒ってる?
人差し指を立てている時はなにか気に入らないときなのだが・・・なんだろう?
「そんなことよりもはこっちのセリフでしょ!2人っきりなのよ!何かしたくならないの?何をしに来たの?何をぉ?」えらい剣幕だな。
「えええ?え?」なんのこっちゃ?
意味深に麗良はさらに密着してくる・・・やや心拍数は高め、呼吸回数も高め・・・まあ一応戦闘後だからな。
「男女が密室で2人っきりなのよ?わかるわね?」
肩をペシぺシ叩かれてもねえ。
「うん、もちろん・・・だよ」そう・・・さっぱわかんねえ。
「目の前につき合っている彼女がいるわけよ!はいどうするの?」
パンッっと手を叩かれてもなあ?いきなり難問だな・・・。
「・・・え?」
ん~?・・・難解だな・・・解答が無い。
ああ・・・だめだ・・・ちょっと怒ってる気がする。
「あのねぇ、考え込むようなことじゃないでしょう・・・健全な男子高校生なんでしょ?」
「あ?そういう意味か・・・麗良ちゃん」ああ・・・そう言う意味だったか。一般的な男子高校生の・・・あれか・・・えっと。
困ったわ・・・という顔だが・・・今度は大丈夫だ。
「お互いしたいことをいっせえの、で言いましょう?いいわね?」
「えっと、いいけど?」
「せ~の!」
「キス・・・」「胸が見たい」
・・・。
どうにも訝しい目で僕を見てくる・・・どうしたものか・・・不正解だったか?そういう感じでいいのではないのか?
「・・・」
「・・・」
沈黙は何?
怒ってはいない・・・といいけど。
「・・・何て言ったのアキラ?」
「え?」
「胸が見たいって言った?あたしの?」
「あ?」不正解っぽいな・・・しまったあ。
しかし少し照れているような?・・・やっぱり怒っているのか?
「・・・まあいいけどそこまで見たいなら・・・見たいなら見せても・・・見せてあげようか・・・。でも・・・ちょ、ちょっと待って。よ、良く考えるとZ班が勝つように頑張ったんだから報酬をもらうのはアタシよね?アタシでしょ!そうでしょう!そうよね?」
「え?」どういう理屈だろうか?理屈は分からないが従った方がいいだろう。
両手を後ろで組んでなんのポーズなんだろう?
「そういうこと言ってくれたのは嬉しいけど、今日は報酬のキス・・・してくれる?よね?」
「ええっ?」
「フレンチ・キスでいいわ・・・ただし100回ね?」
「え?フレンチ?」
「・・・実はねフレンチ・キスってディープキスのことなのよ、知ってた?」
「え?ディープ?」なんや?なんやて?
どうにもまた訝しい目で僕を見て来る・・・何かいけない事しましたか。
「・・・」
「・・・」
沈黙が重い。
あー重い。
ゆっくりと彼女の手が伸びて胸元を掴まれて・・・キレてくる感じ・・・いかん、キレてる。
「男子高校生ならディープキスくらい知ってるでしょ!ふざけんてんの!アキラ!」
「えええ?ディープ・・・深い・・・深いキスだね?」考えろ・・・考えろ僕・・・賢いんだから・・・頭を揺さぶられるのが止まった・・・あってる?
後ろを向いて再び謎かけか?
「分かっているならいいわ。早くしてくれる?こ、恋人どうしなんだし・・・も、問題ないわ」
「え?・・・今?僕と?」
え?それって・・・今?まずくない?ディープキスなんてやりかた・・・えっと?いやその前に・・・そもそも。
ん!目を閉じてるし・・・ど、どうしよ。
「あ!」僕はわざとらしく出口を見る、身振りぶりで慌てるように見せかけよう「呼ばれてるよ・・・麗良ちゃん!霊眼で見るとさ・・・」
「待たせときゃいいのよ!」「怒られるって・・・麗良ちゃん優等生なんだからさ」「うるさいわね!」「声大きいって簡易結界じゃ・・・」「じゃあ結界補強しなさいよ・・・」
―――しばらく押し問答し・・・詠唱を短縮化までして僕は“空間覚醒移送”で少し離れた人気のない通路へ・・・多目的トイレから逃げ出した・・・。
(怒ってるかな・・・麗良・・・)
テレポートして逃げてしまった・・・でも仕方ない。
すこし後ろ髪をひかれる気はしつつ・・・麗良は追いかけてはこないようだ・・・まあテレポートしてるけど・・・色々と悩ましい。
恋人でもないのにキスはまずいよね、最近なんだろ・・・演劇の練習に熱が入り過ぎているっていうか・・・本当に僕とつき合っているって思ってるんじゃないかって思うくらい迫真の演技だもんな。
―――かなり前のことだ。
「とりあえずさ、彼氏役してくれない?アキラ?いいでしょ?お互いフリーなんだしさ・・・あたしも彼女役がんばれると思うし・・・」
「麗良ちゃんの頼みなら別にいいけど?しばらくの間?」
「・・・しばらくって言うか。ずっとよ、これからずーっと・・・いままで長いこと不幸だったんだから・・・かならず幸せにしてあげるわ・・・アキラ」
もう2年前か、その時の会話を思い出す。
演劇部ってすごいな・・・まる2年以上も僕は麗良の・・・演劇の練習としての彼氏役をしているのだが・・・長いこと練習するんだな。
でもキスの練習はまずいだろ・・・本当に麗良に彼氏ができて・・・それからで、彼氏としたらいいと思うんだが。可愛いし料理上手いし・・・未来の彼氏は幸せだろう・・・その時もう僕はこの世にいないだろうが・・・そう・・・呪詛のことだけはどうしても麗良には話す気にならないのだ。
・・・いろいろリスクを考えれば麗良と僕が友人なのはヒミツが一番だ・・・密会はバレない方がいい。
あの極悪人の西園寺桔梗に何かされるかもだし。
む?麗良が高速で移動している・・・。
まさかこっちに来る気か・・・僕を探しているとか?
もう一度テレポートするしか・・・気配消してるんだけど。
“空間覚醒移送”
あ、リキャストぎりだ、ヤバ。




