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ドラゴンディセンダント  作者: ドクターわたる
竜の召喚士
65/265

2-14-10.決勝リーグ⑩

―――そして第9戦が始まる・・・。

切り替えなければいけない・・・誰と当たるか知らないが・・・アフロが書いてる対戦表、こっそり見てやろうかな。


しかし、しかし、しかし・・・だ、僕は顔を上げる。


まさか、まさか・・・ここまで来るとは。信じられないな。


どこまでが計算なんだ?カオス理論ってナニ?

“ホーリーライト”は3戦全勝、何故か“Z班”も3戦全勝・・・。

試合は第10試合まであるが・・・この第9試合を勝った方が・・・。


勝った方が優勝する・・・なんて・・・まじですか?アフロ。

ちなみに引き分けでも得失点差で勝てるな・・・Z班第二部に5戦全勝してるのが大きい。


“ホーリーライト”と“Z班”で事実上の優勝決定戦が始まる・・・!


勝てるものかな?アフロは何を考えてるんだ?

・・・すみません・・・誘惑に負けて覗いてしまった・・・。


先鋒:アフロ

次鋒:オールバッカ―

中堅:星崎真名子とダイブツくん

副将:僕

大将:華曾我部茜


えええ?えええええ?勝てないぞ・・・勝つ采配じゃないの?これでは・・・!

見なきゃよかった・・・悩ましい。

ありがたいことに僕を桔梗からずらしてくれてるけど、えええ?なんでこうなった?麗良にはもしかして僕が勝つとしても・・・後は不可能にちかい・・・。高成弟にアフロが勝つのはゼロパーセントだろうし・・・茜さんが桔梗に勝つのもゼロパーだ・・・?オールバッカ―は誰と当たっても・・・負けるだろう。中堅は未知数だけれど鋼鉄蜘蛛に勝てるわけが・・・。


いいの?これで?


闘技場の向こう側に常勝“ホーリーライト・ザ・ファースト”がいる。うちと違ってスタッフは多いし、何の機械だか設備もすごい。第1高校のほとんどが来ているのか観客席の赤いブレザーの連中はかたまっており行儀よく応援している。


事実上の決勝戦だと言うのは我々はもちろん観客も分かっているわけで霊眼を使用してなくても恐ろしいほどの注視を感じる。


個人戦で桔梗と戦った時ほどの恐怖は無い・・・別に僕が進歩したわけでもないし、まわりに同じチームの仲間風の仲間がいるからでもない。勝敗はアフロにまかせて僕は副将戦だけに集中する。そういう意味で住み分けはできている。


会場は異様な熱気だ。次の第10試合を行う“Z班第二部”と“ドラゴンディセンダント”そして最下位が決定している“DD-stars”も会場にいてこの決戦を見るつもりのようだ。


うちの貧弱なメンバーはアフロ、オールバッカ―、星崎真名子、ダイブツくん、僕、華曾我部茜と青木君だ。黒川有栖と村上君はリタイヤ。スタッフはタイガーセンセだけ。この場にいるだけで不思議だ。非常に稀な確率と言わざるを得ないだろう。


モニターに対戦表が映し出される・・・もう見なくてもいいや。


―――オオオオオ?


ってなんの反応だ?やっぱり対戦表を見よう。


おおお?え?


こ、これを読んでいた?アフロ?予想外。多分初めてだろう、あのチーム“ホーリーライト・ザ・ファースト”が戦闘順を変えてくるなんて。戦闘順を変えてくるのをどうやって読んだ?それでも僕にはまだ勝ちが見えてこないが。


―――先鋒戦だ・・・。

“Z班”の司令塔、緑アフロ隊長に対するは“ホーリーライト”の土斐崎之平だ。

土斐崎は強力な土竜の召喚士だ。天野ほどではないが防御力は高く一撃も強い、スピードは遅め・・・バランス的にはカンナに似ているだろうか。


お手並み拝見・・・予想していたのなら勝てるのだろうか?


どう動く?天才軍師アフロ?

試合開始だ!!


・・・・・・・・・・・・特にいいところも無く・・・・・1分ほどでアフロは負けた。

・・・そりゃそうか。実力的に・・・。

アフロは担架で運ばれていく。タイガーセンセが回復しているが、真名子は中堅に出るためここで待機が必要だし。ああ。アフロ・・・医務室へ運ばれて行ってしまった。


・・・うーん。大丈夫か?

軍師不在だぞ・・・!


0勝1敗だ。


―――次鋒戦・・・。

気を取り直そう・・・というのは無理だろう。

“Z班”オールバッカ―と戦うのは“ホーリーライト”の・・・西園寺桔梗だ!

会場も騒然となっている。“ホーリーライト”が順番を変えてくるなんて初めてなのだ。

読んでいたんだよな?とアフロに聞きたいが・・・気絶中だ。


そう、そうなのだ。何故か次鋒戦に出てきたのだ・・・これは想定外・・・誰も予想していなかったのではないか。読んでいたならすごいが、これがどう?・・・何に結び付く?


「おれっち。やるぜ。もけちゃん」魔装武器、幅の広い剣“ギド”を片手にオールバッカ―は今日一番、リラックスしている。諦めたか・・・まあ仕方ない。誰でも一緒だ。

「うん・・・まあ」まあ絶対ムリだけどね。


まさかのオールバッカ―と桔梗のバトルだ。


これはひょっとして中堅ダブルスも負けて終わるぞ、アフロがいないし僕が何か考えないと。


“氷柱群現”!!

“追加詠唱”!!

“氷柱群現”!!


闘技場でオールバッカ―が何かしているがどうでもいい・・・ってあれ?まだ負けていないのか?


オールバッカ―は自分の周囲に氷柱を降らせまくっている・・・氷の家でも作る気か?バリアのツモリ?


まあとにかく桔梗が相手じゃなくって良かった。きっと負けたのを根に持って酷い復讐する気なのは分かっているのだ・・・。

ってなんで桔梗は攻撃しないんだ?・・・ああ時々可哀そうな相手を弄ぶよな・・・そういえば極悪人だからな。


「覚醒魔法だぜ!!」

いや無理だって、能力的に・・・竜気を完全に操れないと、まだ発動条件も分からないし。僕みたいに常時発動じゃないし、葵のはピンチ時に・・・って?

おおお?なんだこの魔力集中・・・。


凍えろ!“氷紋輪覚醒三倍激”!!


ジャジャッジャ―――――キィキィ―――――ン!!!



またまた覚醒魔法撃っちゃった?どうなってるんだ・・・しかも効果時間が長いぞ・・・魔力消費はどうなってるんだ!

相当なレベルの覚醒魔法・・・なのにさらに桔梗はくらいつつ立っている?抗術だろうけど、いやそれもどうかと思うよ・・・。


オールバッカ―の魔法のくせに恐るべき威力のブリザードの中を平然と歩いて近づいていく。詠唱中で全く無防備なオールバッカ―の目の前で桔梗は大剣バルムンクグレーを構える。


そして振り下ろす・・・早っ!

霊眼発動しないと見えない・・・っつかもう終わったか・・・。


あ!


あれ?オールバッカ―健在???


霊眼発動・・・振動からして・・・バルムンクグレーの上段切り下ろしをギドで逸らした?

いやいや・・・まさかな・・・オールバッカ―だよ?


偶然だよね・・・桔梗相手に偶然って・・・。


なんだ・・・なにかブツブツ喋っているぞオールバッカ―?

「夏美ちゃん。小夏さん。優里ちゃん。忍ちゃん。美羽さん。綾乃さん。明日香さん。夏子―――」

ナニ?ナマエ?誰の?何言ってるんだ?


ギン!!


僕の霊眼でもギリギリ反応できるかという殺人的なバルムンクグレーの薙ぎ払い・・・即死・・・?・・・してない・・・ナンダコレ・・・ギドで受け流した。


なんだ今のオールバッカ―の反応速度・・・。


高成弟クラス・・・もっと早い?


え?え?ナニ?誰だこのオールバッカ―は?

げ?桔梗は三の型“片胸落とし”の構えだ・・・こんな奴にカウンターって?


この状態なんだ?オールバッカ―・・・トランス状態?女性の名前をずっと唱えている?


「あれ?おれっち?」ん?ナニ?今度は?我に返ったみたいな?あれ?無防備?無防備と見せかけている?


ゴン!!!!


な?今度は全く反応できない・・・桔梗のバルムンクグレーの腹部分で殴られオールバッカ―は気絶した・・・。

負けた・・・いやそれ以上に・・・戦ってたぞ?あの桔梗と。


え?この人ナニ?


・・・オールバッカ―もでっかいコブを頭に作り担架で運ばれていった。戦闘の無い青木君が着き添っていく。

何だったんだ一体?

なんか勝った桔梗もを兜を脱いでオールバッカ―の方を怪訝そうに見ている・・・。


あ?目が合っちゃった!桔梗と・・・わ、笑ってる・・・いっそう怖え~。

なんなんだ?氷竜レークスの能力か?だとしたら羨ましい・・・僕の、ああそう。未だに蛹から孵らない甲竜モルネと交換してください。



―――中堅ダブルスだ・・・。

謎しか残らない次鋒戦だった。検証する材料もない、そういう事実だけ・・・。

いやいやオールバッカ―のことは忘れよう、アフロがいないんだ。星崎さんを呼ばないと。

「星崎さん。中堅戦、僕の能力を劣化コピーするんでしょ?どうぞ」

「今日もかわゆいね。もけキュン。大丈夫なんだって部長がそんな必要はない。間違いないって言ってた、じゃあ行って来るね」え?どこへ?何しに?中堅戦へ?


そしてダイブツくんは読んでいた本をパタンと閉じる・・・“坂の上のランナー”って題だが・・・ダイブツくんが本を読む、つまりアフロの策のはず・・・だが。ダイブツくんは読んだ本の主人公になりきってしまうのだが能力が上がるわけではない。“坂の上のランナー”ってまさか試合中に走るなんて・・・いや何も思いつかないな。なにをさせる気?それか勝手に本を読んでいた?それなら・・・かなりマズイ。アフロの予想外のことが起きているのであれば・・・どうしよう。


疑問しか残らない僕をしり目に星崎さんとダイブツくんは闘技場に上がって行く。ダイブツくんは相変わらずパンツ一つの上に透明なハーネスを魔装していてほとんど裸で軽い変態みたいでおもしろ・・・ちがうちがう・・・どうしよう。


ちょ、ちょっと待って。呼び戻すか?どうしよう・・・。


いやいや、一番の疑問はなんで?僕の能力をコピーせずに星崎さんは戦う?

謎だらけの能力だが一つ分かったのは星崎さんの能力は劣化コピーだ。例えば僕の能力の約80%をコピーして今大会では時々勝っているのだ。僕のスピードの80%でもスピード特化型の“DD-stars”の藤崎成城よりもずいぶん早かったし、しかも僕の瞬殺神威まで・・・。


いやそれはまあいい。今はいい。どうやって戦うんだ?僕の能力をコピーしてもキツイだろうけど。つかダイブツくんは何するんだ?鋼鉄の足で踏まれて終わりだ。

おーいアフロ?って・・・いないんだった。


ああ、2人が行ってしまった・・・結界が閉じる・・・終わった・・・。


ああ、中堅ダブルスが始まってしまう・・・0勝2敗なんだ・・・これ負けたら終わりなんだけど?


ああ“Z班”の素人2人が・・・。


“ホーリーライト・ザ・ファースト”の身長2メートルの天野哲夫の左肩には才女である安福絵美里が腰かけている。素人だからって凡ミスするような2人じゃないっていうか凡ミスを100回してもうちの素人では勝てない。この2人は“ガリバー兄弟”と引き分けたが未だかつてダブルスでは負けたことはないのだ。


聞けばよかった・・・そうか・・・じゃあ真名子は何をコピーするんだ?それともコピーしない?・・・それはないか。


戦闘開始だ・・・絶望的・・・だが。


いつも通り、エミリーは特殊魔装“ゴールデンアイ”という3つの球体を形成して身体の周りに飛ばし光魔法でけん制攻撃・・・そして天野は特殊魔装“スチールレッグス”を構築する、巨大な鋼鉄の蜘蛛である。2人ともその中に入っていく。


そして3つの金色の目が輝くと鋼鉄蜘蛛は完成してしまう。


光属性魔法攻撃は、ダイブツくんには無効・・・あれ?星崎さんにも無効・・・?ダイブツくんをコピーする作戦か・・・無茶だよ・・・それでランナーか。5分間、逃げ回って引き分け作戦か?


この試合・・・落ち着いてみていられない。


いや無理無理・・・ああやっぱり。一目散に裸ハーネスのダイブツくんは敵と逆方向に走っていく。

えええ?結界壁付近を・・・はし・・・走るつもり?ええ?ずっとぉ?


ああ?星崎さんは何をしている?逃げないと・・・。


3つ目で4つ足の鋼鉄の蜘蛛のような形・・・二つの特殊魔装は合体し“ゴールデンアイ・スチールレッグス”が完成した・・・。


金の3つ目から間断無くレーザーのような魔法攻撃が発射されるが“Z班”の2人には無効・・・。エミリーは他の魔術も試すがいずれも無効・・・。

一瞬間があったが本体が動き出す!


そしてああ。当然、星崎真名子は鋼鉄の塊に踏みつぶされて・・・!


ギィン!!!


ん?何の音?


もう一回、スチールレッグスは何トンもの脚で真名子を踏むが・・・。


ギィン!!!


なんだ?なんの能力?真名子・・・?アフロ?なにをさせた?


んんん?鋼鉄の塊?・・・鋼鉄の塊が・・・真名子の周囲にできている・・・。

どんどん大きくなるぞ・・・!鋼鉄の塊が真名子を包んで防御している。


えええ?


まだ大きくなる・・・って。これはこの形は・・・!


“ゴールデンアイ・スチールレッグス”だ!!!?


巨体の鋼鉄蜘蛛が2体になった!真名子がそうか“スチールレッグス”を劣化コピーした?いやいや?あれ?いや?予想外だけど・・・考えろ僕・・・これでは、これでは絶対勝てないぞ!80%戦闘力の“スチールレッグス”をコピーしたって・・・!


しかしメチャクチャ驚いた、僕も、会場も。一番驚いたのが天野・エミリーのペアだろうが。エミリーと天野は切り替えて星崎さんの鋼鉄蜘蛛を攻撃していく。無二の男ダイブツくんは結界壁に沿って走っている・・・どうサポートする気だ?


・・・劣化版では本家には勝てない。当然だ。


ここぞとばかりにエミリーの光魔法が3つ目から斉射されて闘技場は眩いばかりだ・・・なんて威力の攻撃だ・・・溜めもなしで!

ん?どうした?なんだ?何かおかしい。


あれ?星崎さんの鋼鉄蜘蛛も光魔法を撃ってないか?

え・?

あれ?


星崎さんはダイブツくんの絶対魔法防御を捨てて、天野の能力“スチールレッグス”をコピーしたんだよね?“スチールレッグス”を形だけ残して今度はエミリーの“ゴールデンアイ”をコピーした?


え?それにしても?あれ?いろいろおかしいぞ。

なんだ分析・・・。えっと固定概念を崩そう・・・考えろ・・・よく見よう。


エミリーのレーザーは・・・星崎さんの鋼鉄蜘蛛に当たる直前で消えている・・・闘技場の端を走っているダイブツくんの能力をコピーした“絶対魔法防御”は健在、2つの鋼鉄蜘蛛は動いているから天野の劣化コピー“スチールレッグス”も健在、星崎鋼鉄蜘蛛の3つ目は金色でそこからレーザーを撃っているからエミリーの能力“ゴールデンアイ”も・・・。


全部を同時発動している!!

ええええ!同時コピーできるの?


うっそお。


あり得ないぞ・・・“絶対魔法防御”中は魔法攻撃はできない・・・これは・・・コピーじゃないな。


なんだこれは相反する事象を同時に存在させている!

劣化コピーのように見えているだけで本質は別物だ・・・。

なんだこの能力、魔力法則にも自然法則にも反する・・・なんて。


ああ!考えている暇がないな・・・保留してあとで吟味しよう。


それにしても星崎真名子なんちゅう能力だ・・・こういうの・・・あれだ、あれ。そうチート能力だ。さらに恐ろしいのはアフロ・・・いつ気付いた?検証してないでしょうが。


ああ!あああ!そうか!ここまで計算したか?アフロ・・・。“スチールレッグス”は防御力が高すぎるのだ、自身の物理攻撃力に比べて・・・つまり当然、星崎の劣化鋼鉄蜘蛛は本家鋼鉄蜘蛛に物理ダメージは与えられない、そして本家鋼鉄蜘蛛も劣化鋼鉄蜘蛛に物理攻撃が通らない。

その上、エミリーの超強力な光属性攻撃魔法は絶対魔法防御でかき消され、星崎の劣化光属性魔法は容易に、本家鋼鉄蜘蛛を焼け爛れさせる!


100%勝てる、本家の鋼鉄蜘蛛に勝ち目は全くない・・・。


劣化鋼鉄蜘蛛の度重なる光攻撃を受けて、本家鋼鉄蜘蛛は破損、破砕、そこら中から煙が出ている・・・。天野・エミリーの戦闘技術がどれだけ高度でもひっくり返せない・・・。


真名子の鋼鉄蜘蛛には、すべての攻撃が物理も魔術も無効だ・・・。


そしてダイブツくんの存在も不気味だ・・・ずっとほとんど裸で闘技場の外周を走っている・・・。何をさせるつもりだ、アフロ。


・・・本家鋼鉄蜘蛛は光属性魔法を数限りなく撃ち合い・・・そして・・・エミリーは光属性の防御結界を遅まきながら張ったが・・・突然、爆発炎上した。


・・・完勝・・・。

完勝だ。2人ともノーダメで勝ってしまった。

超難易度の中堅戦をノーダメでって・・・。


ええええ?なんだコイツら。


ああ!あああ!まずいぞ!まずい・・・僕までまわってきてしまった!ヤバい、次は僕の副将戦じゃないか。1勝2敗、僕が負けるとチームも負け・・・。


げ!プレッシャーだ!


あ!無傷の星崎真名子が戻ってくる。

「もけキュン、勝ったよ」軽いな・・・高校生公式戦・中堅ダブルスの生きる伝説“ゴールデンアイ・スチールレッグス”を初めて破ったのに・・・この軽さは戦闘後とは思えない・・・そしてもう1人は・・・まだ・・・裸ハーネスのまま・・・まだ走っている。彼の魔装は全く魔力を消費しないので対戦相手からすれば不気味だろうな・・・。

何か言っている。

「グモ~!グモ~!足がもげても走るのを止めないのじゃ」

何言ってんねん!ショックで眠れなくなりそうなことを言っているな・・・ただのデコイ・・・裸ハーネスのダイブツくんはただの囮・・・かよ。本当に闘技場の端を走っていただけ?まじかよ・・・。



―――あらら、副将戦だ・・・。

やばいな・・・僕までまわって来るなんて。

さっさと3連敗で負けると思ったから、集中してない・・・。


ああ、更科麗良・・・ベールを脱いだ更科麗良はとんでもない。基本ずっと空中で変則的に高速移動だ。地上で近接スピード特化型の僕はそもそも戦いにくい。


彼女と戦うとなると、本気でやるしかない。

空中を高速で漂う麗良に僕のスピードでも攻撃を当てるのは至難の業・・・回避されたら隙だらけになる。

つまり“加速一現”と“神速覚醒”この二つの魔術を使わないと確実に一撃入れるのは困難。そう、2回しかチャンスはない。僕の魔術のリキャストが来る前に戦闘は余裕で30秒以内で終わるだろう。・・・彼女の八咫鏡は間違いなくカウンターで使用してくるだろう・・・こっちが一撃入れたら数倍の威力のカウンターを喰らう・・・僕のスピードでも避けれないし・・・“神速覚醒”でカウンターを逃げれば次の攻撃方法が無くなり詰む・・・か。


“加速一現”で確実に一撃!連続技にはできない、そして瞬時に八咫鏡によるカウンターマジックで僕は大ダメージ!“神速覚醒”で麗良の次のカウンターマジックの準備が整うまでに最速でもう一撃・・・!しかない。

“神の目”花屋敷は何もできなかった、つまり回避できないタイミングで麗良は攻撃してくる。長引けば勝ち目はない。予想外のことが何か一つでもあれば僕は負ける・・・。


あれ?春に戦った桔梗より・・・強くないか・・・もちろん攻撃力と防御力は桔梗がはるか上だけれど。


古代竜語魔法はタメがあるし基線細撃は攻撃範囲が狭く避けられる可能性が高い、もう一つ使える古代竜語魔法の自身の命を使う自爆技は結界を余裕で破り国立闘技場の周囲、半径5キロほどが消し飛ぶ・・・。副将戦は引き分けになるけど実用性は・・・無いとは言わないがとても低い。


ああ・・・試合開始だ・・・。

勝っても負けても死闘になる・・・。


彼女の行動は分かっているのだ、光輪を13枚作り8枚をカウンターに5枚を僕にけしかけて・・・そして超高速で空中を漂い・・・距離を取ってくる。


本気でいかないと無理だ!


魔力を集中させる、手加減して勝てる相手ではない。

ヴィジョンアイ・クラッカーモードを発動・・・。


いくぞ・・・本気の僕は手強いぞ。半身もがれても一瞬で再生してやる・・・痛いのはいやだが。


少々のダメージでは僕は止められないぞ。


恐るべき相手・・・更科麗良は光る羽を広げるかのように13枚の光輪を作り出す。


“光輪群現”!!


マスタークラスの光属性魔術は吸い込まれるようだ、美しくすらある・・・。

地を這う哀れな僕は・・・僕の人生は・・・ただただ・・・名も無い雑草のようなものだ。

魔力全開・・・このくだらない試合に命をかけよう・・・。


“加速一現”


研ぎ澄ました僕の加速はジェニファーでも葵でもレマでも麗良、君でも追いつくことはできない、圧倒的な初速で君との距離をゼロにす・・・るるるるぅ?

んん?麗良の顔が近づいて来る!!

まっずい・・・何かを読み間違えた?理詰めでは・・・そんなはずは。

僕に近づく理由はない・・・んだ・・・あ?


なんでこっち来るんだよ。

読み間違えたぁああああ!


って。あれ?


「まいりましたあ」


何でやねん、僕は喋ってないで。

ん?どうなった?どうしてこうなった?お互いストップしている。


今、何て言った?・・・まいりましたあ・・・とか聞こえたが。


・・・副将戦、“Z班”勝利・・・!


え?なに?・・・え?なにが?


ん?


えっと、僕の竜殺槍は彼女の首元に、彼女の光輪は僕にまさに迫る・・・瞬間。

お互い寸止めした・・・?


え?八咫鏡のカウンターは?え?だって?

なんで麗良は間合いを詰めた?どゆこと?

ギブアップしたのは、えっと・・・僕じゃなくって麗良だから・・・。


あれ?負けた?


あ!勝った?

ん?なんで勝った?今の・・・?戦闘したっけ?


いつも余裕でプカプカしている麗良が片膝をついて動けないでる?え?お互いノーダメだよ?ね?なんで膝ついてるの?


あの麗良ちゃん?・・・わざと負けた?


・・・あの・・・ノーダメのはずなのに麗良はゆっくりと自陣へ帰っていく・・・。僕も戻るけど・・・足取りは重い。

何の芝居?何の真似?


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