2-14-3.決勝リーグ③
―――本日、第2試合にして“Z班”の決勝リーグ初陣だ・・・。
決勝リーグだけあって本当に今日は人が多い、有力な召喚学部のある各大学の関係者・・・観客・・・テレビ局・・・応援・・・ソードフィッシュのスカウトマンも来ているようだ。高校生のうちから将来有望なものの目星をつけにきているのだろうか。西園寺グループの関係者もいるだろうか・・・。
だとすると仇敵の西園寺御美奈も・・・?
いや反応無いな・・・僕の左肩に呪詛を埋め込んでくれた御美奈はいない。
団体戦は選手の試合順を用紙に書いて審判部に提出する・・・ペーパーレスの時代だが・・・ここは違うようだ。先鋒は誰が出場、次鋒は誰と書いているようだが・・・。あれ?さっさと1人で書いてアフロは提出してしまった・・・。
・・・まじか・・・これはとんでもないことだ・・・。戦力的に格下なのに。
昨日まではどうしてたんだっけ・・・戦う気になったのは今日からだから全く覚えていない。
両チーム、同時に出すのが暗黙のルールなのだ。提出した表はだれが先鋒でと順番が載っているわけで、魔術で遠隔視すれば見えてしまう・・・もちろん覗かないルールだが。例えば僕や“神の目”花屋敷華聯なら魔術の形跡もなく見える・・・。つまり見てから有利・不利を考えて自分のチームの順番を決めれるわけだ。
だから同時に書いて同時に出す・・・はずなんだけど?
何を考えている?
“DD-stars”が見ない保証はない。一応、覗きは不正だが纐纈君だって姫川さんだって・・・レマだって可能だろう。あれ?昨日までもこうしてたっけ?
「グモファ~」と眠そうにしてるダイブツくんの横顔を見る・・・。君が問題なのだよ。
つまり・・・ダイブツくんは姫川樹奈の天敵なのだ・・・確実にダイブツくんは姫川樹奈にだけ勝てる・・・降魔十傑3位の姫川にだけ勝てるのだ。氷樹界しか術が無い姫川はそれを無効化するダイブツくんに勝てない。だがダイブツくんは姫川以外とあたれば確実に“DD-stras”の誰かが勝利する・・・。
向こうは纐纈君たちは明らかに順番を迷っているようだ。姫川を出すのか出さないのか、出すなら順番を・・・もしダイブツくんとあたると濃厚に負けが見えてくる・・・ダイブツくんが出て来るかも分からない・・・そんなことを話し合っているのだろうか。そして多分・・・だが・・・多分・・・僕は誰とあたっても勝てる・・・もちろんレマが急激に伸びていれば別だが・・・霊眼で確認できなくはないが使わない約束だ。
霊眼さえ使えればいくらでも相手の采配を盗み見れるんだけどなぁ。
アフロがささっと書いていた順番も見ようと思えば見える・・・もう登録されたようだけど・・・でも見ないでおこう・・・お手並み拝見・・・でもちょっと見たい・・・。
―――第2試合・・・“Z班”対“DD-staras”開戦だ!
因縁の試合という程ではないが、長らく“ホーリーライト”以外に負けたことのない実績2位のチームだ・・・この前の学園での予選グループBで“Z班”が勝って以来というわけだ。
そして勝手に僕は緊張している・・・。
緊張の一瞬なのだ・・・対戦順がもうすぐ表示される。
・・・すぐに順番が分かる・・・モニターに映されるからだ・・・うーん、“Z班”で気にしているのは自分だけか?まわりのメンバーはいつも通りだ。
おや・・・この並びは・・・?
「ええ?この順番?アフロ?」
思わず声が出た、アフロを見ると不敵に笑っている。
「くくくく・・・ベッドの黒川を喜ばせてやらんとなあ。もけ」
えええ!まじかよ!
先に出したのに・・・これが狙い?・・・“DD-stars”は遅れて出したのに・・・。
・・・もう先鋒戦が始まる・・・。
華曾我部茜に対するは纐纈守人だ・・・。2人とも勇ましく魔装している。
そうか、2人とも近接戦闘タイプでしかも防御力の高い金竜同士の戦いか!
お辞儀をして両手を広げ両手にはコンバットナイフのような魔装武器を一つずつ逆手に持って茜はスタンバイしている。纐纈君も竜の紋章のミドルシールドとロングソードを構える。
試合開始だ!いきなり茜さんが仕掛けていく!
“桜花乱舞”!!
2本のコンバットナイフを自在に操り攻撃しまくる茜は、いやいや上手だ、さすが個人戦の四国のチャンピオン。僕と戦った時より強いか?・・・いやまあ一撃で倒したからよく分からないけど・・・それもモルネの一撃で。
さて纐纈君は初対戦で情報もなくやりにくそうだが慎重に戦っている・・・だがやはりバランスはいい、崩れないね。
“桜花乱舞”!!
うんうん、茜さんの技・・・いい技だな・・・纐纈君これはガードすると不利なんだが・・・慎重になり過ぎだ。いや、でも相当練習してるな・・・茜さん、僕と戦った時よりずいぶん強い気がする。
なんかこの決勝リーグって今までのインハイと比べても突出してレベルが高くないか?去年のを思い出しても・・・。
・・・試合はお互い防御力が凄まじく高いため、決め手に欠ける・・・。
しかし2人とも少し動きが硬いか・・・初戦だからな。そういう意味では秋元未来は強かったな。
前半は茜さん、後半は纐纈君のペースだった。
試合終了・・・判定だ・・・見なくても分かる・・・纐纈君やや有利だったがギリギリ引き分けだ。
会場は拍手でわいてる。
あの十傑5位の纐纈君と能力差はほとんどないとは。茜さんかなり強いね・・・まあ疲れる“武神モード”を纐纈君は封印しているが、先は長いからな。あれ?“狂神憑依”つかった麗良は大丈夫か? “武神モード”と“狂神憑依”は全く同じ術だ。疲れるかわりにTMPAが上昇する。
うーん、更科麗良が少し気になるが霊眼は封印だ・・・今日は。
―――そして次鋒戦・・・。
煩悩の塊の青木小空に対するは乙女の塊の武野島環奈だ。
ミスマッチな気がするが・・・?
「硬い硬い硬い勝利を真名子にぃいいいいい!」こっちを向いて何かいっている・・・対戦相手を見ような。
そしてうるさい!あと絶対勝てん!
「殺されたいの!アオキ・・・セクハラで5回は訴えますからね・・・」
う~んケンカするほどとかいうし、星崎さんの愛なのかな・・・?
試合開始した瞬間!
変顔で青木君は鋼鉄の像となった!
そうだろうな・・・これしか無いからな・・・。
どういうつもりだ?アフロは?敗けてもいいのかな?
ゴンッ!!!
いい音がして鋼鉄坊主は転がっていく・・・闘技結界の端まで!
ブラストハンマーで横薙ぎに殴られたのだ。
ダメージはないが・・・カンナの技には鋼鉄坊主を傷つける技がいくつもある・・・優勢負けになるぞ・・・。
鋼鉄坊主の青木君は闘技場の端で頭が少し床にめり込み、足が結界に触れて結界がビリビリしている。
当然、カンナは詰め寄ってきて、ふぅっと一息ついた。
「冗談じゃないのよね。もうちょっとイケメンならいいけど。これを5分殴り続けるのはメンドーだわ、メンドーなのよ」
“加速一現”!!
突然青木君は頭が下のまま鋼鉄変顔でカンナへ飛んでいく。
重いし遅いが・・・「ぇえええ!」カンナは驚いて防御した。
ガシィイ!!
ええ?ナニコレ?
一瞬だけ鋼鉄じゃない普通坊主に空中で戻りカンナに逆様向きで抱きついて・・・そして・・・また鋼鉄坊主になって・・・?当然ダメージは無い。
「きゃあああ!なによ!この変態!変態!」
んんん?カンナの声がこだまする・・・。
あれ?この体勢って青木君ハンマーを抱き込んでるし。
青木君はカンナの腰あたりを両手でつかみ両足でさらに胸あたりを挟み込んでいる。
がっちり密着しており・・・ハンマーは全く動かせない。
「きゃあああああああ!なによコイツ!なによコイツ!いやああああ!」
「お嫁に行けなくなるわ!」
「コイツ反則よ!反則なのよ!」
「いつまで抱きついてんのよ!!」
「だれかあ!反則ですぅ!!ケーサツ呼んでくださいってぇ!」
ルール上は反則じゃない・・・けどぉ・。
―――4分ほど経過―――
ハンマー以外の術や技ではへばり付いている青木君にダメージはない。鋼鉄坊主の青木君は現在500Kgくらいでカンナは倒れればダウンを取られる可能性があり、ずっとフラフラ立ったまま。
騒がしいカンナは大声でずっと怒鳴り続けている。
「はあはあ、お願い離れてください。お願いよぉ、ちゃんと戦ってよぉ」
ハンマーを一回影にもどしてさ。
「もういや。もういあやああああ!」
だからハンマーを影にもどしてもう一回ハンマーを出してさ、それでも厳しい体勢だけど。
「ひどいわ!ひどいわ!あんた絶対ゆるさないからね!」
それでハンマー使った強力な技を何かやってほんのかすり傷でも青木君に負わせれば優勢勝ちになるけどね?思いつかないかなあ。
―――試合終了・・・引き分けだ。ここまで2分けだ。
これほど失笑が漏れた試合もないだろう・・・。
ただの何もしてない引き分けなのに超々大歓声だった!!
満面の笑みでツヤツヤして青木君は帰ってきた・・・何か大きなことを成し遂げた男の顔だ・・・星崎真名子に流し目をしている、投げキッスもだ・・・武野島環奈さんは・・・崩れるように闘技場で座り込んで放心状態だ。
「いやっ!近寄らないで、変質者の仲間じゃありません。生理的に無理です」イヤイヤしている星崎さんは照れているようだ。ん?本当に怯えているようにも見えるが?まさかね。愛だね。
本当に可哀そうにカンナさん・・・。でもさすがだ・・・青木君・・・精神的ダメージを考えれば引き分けじゃない完勝だ。
―――ああ、中堅ダブルスだ・・・ん?
「グモワッシャー!!!」
気合入ってるなこのクズ。
アフロめ中堅ダブルスでダイブツくんを使うなんて・・・こんなの思いつくか?
ペアを組むのは・・・なぜか・・・僕。
僕とダイブツくんの超貧乏ペアと戦うのは・・・不知火玲麻と姫川樹奈の十傑2位と3位の超麗人ペアだ!!
これ読んでたの?アフロ・・・?すげえよ・・・お前。
・・・戦闘開始だ・・・闘技場は大きくなる。
戦闘開始のその瞬間・・・僕はダイブツくんのバトルスーツの首あたりを掴んで抗術ですこし内養功を上げてやって姫川樹奈に時速数百キロで投げつけてやったのだ。投げられたダイブツくんはあらゆる魔力障壁を無効化して無敵の肉弾と化し飛んでいる。
これでレマと僕は一対一だ。
不知火玲麻・・・天才だ・・・雷属性最強・・・少し伸び悩んでいるが・・・纐纈君に多分脅されて僕なんかに多分罰ゲームで告白しに来て可哀そうな子だ。ここで僕に負けるともっと纐纈たちに多分いじめられるかもしれない・・・やっぱり負けてあげよう。そうしよう。
・・・いやそんな訳にいかないな。
真面目にやろう、ヴィジョンアイ・クラッカーモードはもう発動している。試合中は霊眼使ってもいいって話しだったし。
何が来る?覚醒魔法“終息”か?何でも来い・・・レマさん。手加減はしない。
あれ?どこを見ているレマさん?
ああ?ダイブツくんがもう少しで姫川樹奈さんに激突する寸前だ・・・。僕はそのダイブツくんを超速で追い越している。
油断してるな・・・レマさん・・・こんな美人に酷い罰ゲームさせるなんて纐纈君なんかとは別れた方がいいよ・・・今度忠告しよう。
まあでも試合だし、心窩部に一撃いれるか。怪我はさせない程度に。
樹奈さんにダイブツくんが泣きながら叫びながら激突するのと、僕がレマさんに掌底を叩き込むのはほぼ同時だった。
ドン!!
―――ん?霊眼を切ろう・・・なんだ?
中堅戦・・・“Z班”勝利です!!
あ、あれ?レマさん・・・倒れてる?気絶か?どうして?
まあ油断してたから・・・かな。疲れているのかもしれない・・・可哀そうに。
樹奈さんも気絶だ・・・可哀そうに。
そして闘技場の端でダイブツくんが「グモン!グモン!」と唸って転げまわっている・・・骨折したかもしれないが・・・それは仕方ない、大丈夫そうだ。
僕はすぐに抗術で回復した・・・変なものを投げつけられた可哀そうな姫川さんと油断していた可哀そうなレマさんを・・・だ、もちろん。
女性が先だよ・・・さっさと全快させる。意識を取り戻したレマさんが透き通るような目で僕をみている・・・キレイな人だな。
「試合中なのにありがとう。じんめクン・・・すごく嬉しい・・・回復してくれるなんて」
「いえいえ、当然ですよ不知火さん」
よし次はダイブツくんの番だ・・・。
うーん・・・僕は「グモングモン」と唸っているダイブツくんの足をひきずってもどる・・・そうだな。
先は長い、回復はタイガーセンセにまかせよう・・・大丈夫、ダイブツくんは唯一無二の男だ・・・普段は元気だし。
「グモ~!いたいいたい!いたいのじゃ!なにが起こったのじゃ!すごい攻撃をくらったのじゃ!見えない攻撃じゃ!グモハァ~ッチョ~!」
「ちょっとじんめちゃん。あたしは嫌です」キッパリとタイガーは両手をクロスさせて回復を断った。
―――副将戦だ・・・。これ勝てばうちの勝ちだ。負けてもダブルス取ってるからアドバンテージありだし・・・うちが有利か・・・。
星崎真名子に対するは藤崎成城だ・・・古武術と拳法の達人で素手では最強クラスだ。バイト生活でランク戦をあまりやっていないがジェニファーと変わらないスピードで且つ戦闘力だ・・・。降魔六学園の男子生徒では纐纈君、高成弟、プリン小川、天野哲夫に次ぐくらいの実力者だ・・・佐薙や仁久崎より強いとは思うが・・・あれ?僕はどうなるんだろう・・・男子生徒で勝てない人はこの中にはいない・・・かな?いやいや油断は禁物だ。
さて、チームの勝敗はアフロに一任しているせいか、あまり緊張無く試合が見れるな。
試合は開始される・・・予想通り超がつく高速戦闘だ・・・。
あまり有名じゃないが藤崎君はトップクラスのクイックネスを誇る。そして星崎真名子は僕の能力をコピーしてる。TMPAは35000を超える超スピード特化型の戦士に真名子はなっているわけだ。
僕の能力のだいたい80%だが、それでもスピードは藤崎君より2枚は上だ。
相変わらずビンタしかしないが・・・「キモイアオキ!」と掛け声に愛する?青木君を呼びつつ真名子は高速ビンタをぶち込んでいる。そしてなんだ?何かする気だ!
真名子が空中で相手を指さした・・・?
“瞬殺神威”!!
闘技場は一瞬暗くなる・・・。
いやだからさ。真名子さんその技は相手の心眼の死角から・・・。
ああ、まあいいや。藤崎君の顔面に打撃をキッチリ15発入れてる・・・。
っていうか少しできてるから腹がたつな・・・僕の奥義、どうやって覚えたんだ?
「今日もカワユイもけキュン、勝ったよ」
超強豪を倒して無傷でルンルン戻ってくるけど・・・この素人さんは・・・。
どういう才能?どういう能力?
「すげえぜ!星崎ちゃんよ!おれっち夢を見てるみてえだぜ!」
「すごいです!いい身体してますよ!真名子ぉおおお」
「価値ある1勝だわ。すごい!先生、鳥肌が立つわ」
「すごいです。皆様、茜は足を引っ張ってしまって申し訳・・・」
「余裕であろう、華曾我部。全ては布石である。間違いない」
「すごいです、でも緊張して、おトイレ行ってきていいかな」
「グモ~なにが起こっているのじゃ」
「余裕か・・・アフロ、さすがだ」
あっさり副将戦・・・勝利だ。2勝2分け、大将戦負けてもうちの勝ちだ。
おお?やっぱりアフロが動く・・・大将戦は棄権するのか。2勝1敗2分けだ。
んん?校内予選に続いて“DD-stars”に勝利してしまったか。
決勝トーナメント1勝すら不可能に近いのに・・・大した手腕だ・・・アフロ。
華曾我部茜の加入は限りなくデカいな。纐纈君と戦えるとなると降魔十傑クラスだ。
そして中堅ダブルスを取ったのもすごく大きい・・・多分・・・姫川樹奈は絶対にダイブツくんには当たりたくなかったはず、多分レマも僕に苦手意識があるのかもしれない。対戦表がモニターに出たとき僕も驚いたけど、“DD-stars”は衝撃が走っていたもんな。
あとよくわからない・・・“DD-stars”が遠隔視してこないってなんで確証があった?
まあ・・・さて次の出番は第6試合なのでしばらく時間がある・・・“Z班”の控室にみんなで一旦戻るとしよう。
タイガーが肩をくっつけてくる。
「じんめちゃん、控室でマッサージしてあげるからね」
「あの・・・僕はダメもないし疲れてませんよ、先生。余力があるならダイブツくんを治療して欲しいんですけど、彼は回復魔法が効かないので内養功で・・・」
「じんめちゃんのマッサージは先生の仕事なのよ」
「あの・・・内養功の仕方わかりますよね?」
「知ってるのよ。君ばっかり見てるからね。今日はちょこっと緊張気味よね・・・こんな時こそ先生を頼ってね」
「いやあのダイブツくんを・・・」
「ああ・・・奉仕する喜びに目覚めるなんて自分でもオドロキだわ」
ゼンゼン聞いてないし・・・何を言ってんねん・・・ダイブツくんを治してくれないかな・・・。




