2-14-2.決勝リーグ②
ああ、もうダイブツくんのせいで一手目が見れなかった。
第一試合の・・・西園寺桔梗が率いる“ホーリーライト”と如月葵を部長とする“ドラゴンディセンダント”との激突だ。いきなり好カードと言ったところだろう。絶対無敵常勝無敗の“ホーリーライト”と1年生中心の異常な成長スピードの“ドラゴンディセンダント”だ。秋元キャサリン未来のことでは浅からぬ因縁がある。
先鋒戦は高成弟VS大津留ジェニファーだが、この2人はさらに深い因縁がある・・・。
何度も何度もジェニファーは敗北しているがあの時一度だけ勝利している・・・。
おお!やっぱり2人とも早い・・・一般人が肉眼で動きを捉えるのは困難だろう。
そうあの時だ・・・秋元未来を助けるために緑川と高成弟が戦っていたらジェニファーが助けに来て、あの時のジェニファーは高成弟に歯が立たなかった。結局、緑川が特殊なブーストした魔力で覚醒魔法と一の太刀で高成弟を倒したんだったが。
そう・・・緑川尊な・・・成長が見てみたかったが仕方ない。
・・・いやあしかし・・・金髪をなびかせているジェニファーは・・・強くなってるぞ。
水晶のような外観の四肢の特殊魔装は鋭さを増している、ムリな体勢から強引に加速したり急停止したりしている・・・鏡のダンジョン以来、何か心境の変化でもあったのか、冷静さが増して戦闘の組み立てに幅がある。
対する高成弟の妖刀はクリーンヒットすれば試合の勝敗がつくほど危険だ・・・緊張感がある・・・妖刀は相手の防御耐性を無効化する特殊能力がある・・・近接戦闘では恐るべきアドバンテージだ。
よく避けている・・・ジェニファー・・・そんなに上手だったか?フェイントもすべて読んでいる。それどころかジェニファー自身がフェイントを入れているな・・・まっすぐ突くしかしなかったのに。
闘技場の至る所で火花が散っている。
・・・息詰まるほどの熱戦だ・・・お互い近接戦闘タイプだから密着して攻撃し合っているのによく回避できている・・・2人ともすぐプロで通用するだろう。
今までジェニファーは団体戦で中堅か先鋒をすることが多く、個人戦でも何度も高成弟と戦い、全敗しているのだ。まだ高成弟の方が僅かに上だろうがジェニファーは戦士として数ヵ月前とはまるで別人だ。
“リーサルスタブS”!!
目にもとまらぬジェニファーの必殺突きだ。火花とともに高成弟の左肩の魔装鎧を貫いて結構ざっくり攻撃が刺さった!
一瞬・・・2人とも距離を取る。
「ふう、高成崋山。今日は調子悪いわけ?あたしのバトルスーツは今日は傷一つついてないわけ!今日は何故か裂かないわけ?」
「格下が!!ぬかせ!!」
“鬼相血縫い”!!
“リーサルスタブD”!!
ああ、いい勝負だったのに。自力から言うとまだまだ勝敗わからないはずだったのに。
安い挑発にのって大声出して筋肉が硬直したところをジェニファーに狙われた・・・。技の選択もミスったな。
ガードしつつ近づく高成弟の斬撃はジェニファーの諸手突きで文字通り突き破られた。
ガカッ!!
結界の外まで響く衝撃だ。
カウンターが直撃したのだ・・・ジェニファーの攻撃をもろに喰らい・・・魔装が爆散していく・・・!
そのまま連続攻撃をもらって高成弟は敗北した。
「ふう、借りは返したわけ。あたしには尊がついてる・・・そういうわけ」右手を腰に当てる金髪美女は様になる・・・高成の技、読んでいたな・・・まあでも、いい勝負だった。
ウワ――――――!!!!
勝利した金髪美女に、朝っぱらから会場中は大歓声だ!!
おお!そして“ホーリーライト”が先鋒戦を落とした。今大会初めてじゃないか。
―――次鋒戦・・・。
“ホーリーライト”は雷竜の仁久崎、対するは“ドラゴンディセンダント”の水竜使い・・・三守沙羅だ。あれ?沙羅は少し髪が伸びたな・・・伸びたのは髪だけじゃない・・・戦闘力も跳ね上がっている。にやけている仁久崎に対して沙羅は冷静そのものだ・・・精神的にも成長している?
近距離戦の仁久崎と防御寄りの三守の攻防だ。
“反鏡群現”!!
“念装雷光”!!
ほぼ同時に術を発動する。おおお・・・鏡を10枚も作るとは・・・本当に成長したな沙羅、TMPA19000か。
雷光をまとい追う仁久崎と離れて防御する三守・・・と思ったのだが・・・。
密着しても強いぞ・・・三守沙羅。水属性の攻撃魔法・・・自分から仕掛けるのか。
“蔧落群現”!!
真上からの水属性攻撃でガードも回避もしにくい。しかも自分ごと攻撃して自分への攻撃は鏡で反射してさらに仁久崎に連続攻撃していく。
防御はもともといいもの持っている・・・攻撃が多彩になった・・・。
・・・ジリジリした攻防が続くが格上相手に三守はよくやっている、仁久崎は回避に回避で反撃は鏡でガードされ決まらない。
残り時間僅か・・・仁久崎は覚悟を決めたようだ・・・。
“雷光覚醒陣拳”
“追加詠唱”
“雷光覚醒陣拳”!!
と強引に被弾しつつも両腕の雷光で鏡を割って攻撃した!
スマートに勝つことを信条にしている仁久崎がまずやらない戦法だ・・・。
そして5分フルに戦って・・・両者立っている・・・判定だ。
結果は仁久崎の優勢勝ちだ・・・表情だけみれば仁久崎の方が負けてる感じだが。
ん?仁久崎の方から近づいていく・・握手する気か?
「いやあ強い強い。君強いね。とても1回生とは思えませんね。そして素晴らしくチャーミングですね」そういえば仁久崎はよく女性にモテるらしいな・・・リア充は死ねばいいのに。
「苦心惨憺にして一意専心・・・」そう和風美人の三守沙羅は応えた・・・学力の高くない仁久崎はある意味負けたようだ・・・チーン。
「・・ああ・・う、うん」
うんうん、沙羅・・・分かりやすく言う気全くないね、つまり全く相手に伝わってないよ・・・でも敗北感は与えている。
―――中堅ダブルスだ・・・。
両チームから2人ずつ出てくる。
ダブルス最強の天野哲夫と安福絵美里ペアに対するのはハオ・ランとズー・ハンのペアだ。
戦闘は開始される・・・。
予想通り、エミリーの“ゴールデンアイ”―――3つの金色の球体―――がハオ・ラン、ズー・ハンを襲い、その隙に天野哲夫が“スチールレッグス”を創造していく。
ズー・ハンの遠距離攻撃は“ゴールデンアイ”の結界で防がれる。
そして必勝の形・・・公式戦無敗の“ゴールデンアイ・スチールレッグス”が完成してしまう。
金の3つ目の鋼鉄蜘蛛だ。天野とエミリーは堅固な鋼鉄蜘蛛の中にいるのだ・・・まるで操縦するかのように。
防御力も攻撃力も半端ではない。
少し不思議だ・・・スチールレッグスを破砕できる空破拳の使い手・・・ロミオを出すべきだと思うが・・・。
近接戦闘のハオ・ランと遠距離戦のズー・ハンでいくらバランス良くても鋼鉄蜘蛛を崩すのは不可能だろう・・・。
戦闘時間が長くなればさらにエミリーの強化魔法で手が付けられなくなる。
全く対策なしでは戦闘にすらならな・・・あ?あれ?
ハオ・ランの魔力がおかしい・・・これって・・・まさかまさか・・・僕の好きな自爆技だ!
いや、好きって言うかさあ。
でも安全第一の公式戦全国大会で自爆技ってハオ・ランの心臓が止まると・・・生命危機を感知した防御結界が魔術的救命に入るため試合終了になるかも・・・。
おや?ズー・ハンもなんだ?
“限定解除”!!
限定解除って戦闘不能になるぞ・・・つまり初手にすべて賭けるのか・・・。
“二倍激”
“破岩覚醒精射”
強力な攻撃魔法だが“スチールレッグス”の装甲の上からではそこまで効かない・・・つまりハオ・ランの自爆技で穴を開けるわけか!!!
“アポプトーシス”!!
“アイテオー・―――”
まじか!やっぱりハオ・ランの自爆技だ!!命を媒体にして術を練り上げる・・・死ぬ気?
“強制詠唱”
“熾光覚醒陣”!!!
エミリー・・・割り込みで覚醒魔法を詠唱した?そこまで強力じゃないが周囲に光属性の範囲魔法だ・・・!
“スチールサイクロン”!!
キュィイイイイ―――ン!!
おおお!鋼鉄蜘蛛が超高速回転だ!
勝負ついた・・・あっという間。
ハオ・ランの自爆技は見てからエミリーが高速詠唱で阻止してダメージを与えて!
同時に詠唱していたズー・ハンの2条の覚醒魔法はスチールレッグスを直撃・・・なんと分厚い装甲を貫いて穴を二つ開けた・・・なんだこの術?そして天野のスチールサイクロンでハオ・ランは吹き飛ばされて・・・限定解除を使ったために動けないズー・ハンに直撃・・・ハオ・ラン、ズー・ハンは戦闘不能となった。
オリジナルの覚醒魔法だなズー・ハンの術・・・そうか・・・ロミオか。スチールレッグスと戦っているからな。スチールレッグスの装甲の情報から、対スチールレッグス専用の覚醒魔法術式をゼロから組んだのか・・・通常は数ヵ月はかかる・・・まあ僕なら20分もあればだが。
数秒で勝敗ついたが紙一重・・・怖い試合だ・・・。
中堅ダブルスは“ホーリーライト”の勝ちだ。
“ホーリーライト”の2勝1敗だ。
それにしても自爆技って、それも第1試合で?蘇生できても次の試合はとても出れないぞ?
通常、心肺停止時の蘇生魔法の救命率は70%ほど、自爆魔法後だと15%まで下がる・・・蘇生魔法を失敗すると肉体は消滅するため・・・一回しかチャンスはない。アジ・ダハーカ戦の葵は自爆魔法を3重にかけて心肺停止後もしばらく戦闘できる火神の魔術で戦闘したのだが、葵の蘇生魔術的救命率は1%ほどだった・・・まあ僕の“三重奏”“光子覚醒降誕”ならほぼ100%蘇生率になるが。同じ自爆魔法は基本的に2度と使えない・・・葵の自爆技は西園寺グループと戦う時の切り札だったのだが、アジ・ダハーカは使わないと勝てなかった。
まあしかし、自爆技なんて葵がこの2人に指令を出す訳が無い・・・ハオ・ラン、ズー・ハンは勝手にやったわけか・・・。
なんなんだ?両陣営めちゃくちゃ気合がというか・・・激闘だ。
―――副将戦が始まる・・・。
これに負ければ“ドラゴンディセンダント”はチームとして負ける。
プカプカ浮いている更科麗良と・・・こっちも浮いている秋元キャサリン未来の試合だ。
魔装変えたな、紺色っぽい色の魔装の麗良と黒いレザーの質感の未来だ。
両者は実は対照的なのだ・・・降魔六学園最強の光属性の使い手、麗良と、最強の闇属性の未来の戦いなのだ。光属性は珍しく、強い闇属性はさらにほとんどいない(闇落ちするとレベルが上がりにくくなるのだ)。
この試合。多くの観衆は降魔六学園十傑4位の更科麗良の圧勝だと思っている・・・違うのだ・・・秋元未来は通常状態の如月葵とほぼ互角だ・・・つまり・・・降魔十傑2位のレマよりも多分強い・・・。TMPAも未来の方が上、もともと対テロ用のランクAサマナーのチームを一人で倒せる戦闘力だ。もし僕が順位付けするなら降魔六学園“新”十傑は1位・桔梗、2位・葵、3位・未来・・・こんなところだろう・・・僕は何位くらいだろうか。
・・・見たこともない闇属性魔術が闘技結界内を蠢き・・・なんだこれ?複数の幽体?・・・13枚の光輪がそれに対処をしている。
長杖は巨大な闇の魔術を蓄えて、未来が振り回すたびにホーミングする闇の槍のようなものが飛び出している。
凄い数だ・・・幽体も麗良に襲い掛かってくる・・・おびただしい物量だ・・・対処は難しい・・・幽体は恐らく捕まればダメージは少ないが行動を抑制される。
さらに闇の槍―――相当な攻撃力の―――をバラまいてとても対処が・・・。
対処が・・・対処が・・・できてるなあ。
本当に凄い技術ですね、麗良さん。
2人とも魔装を解けば可愛い女生徒にしか見えないだろうが戦闘能力はとんでもないレベルだぞ。
そんなに制御力高かったっけ?麗良の動きは・・・魔術は隙が無い・・・不必要なことを何一つしない・・・先読みというか計算している?いつももっと適当なのに・・・。いやいやいつも戦闘中にギブアップして棄権する相手の姫川樹奈や不知火玲麻よりも明らかに未来が強いことを気付いているはずだよね・・・。
え?じゃあ普段なんでわざと負けてるんだ?
・・・凄いな・・・過激なほどの闇属性の攻撃が一撃も入らない・・・未来の方は何度も光輪で攻撃を受けているが抗術でダメージを抑えている・・・。
・・・少しずつ未来がダメージを負っていくが戦闘は膠着状態だ・・・2人ともプロの召喚士なんか比べ物にならない、相当強いぞ。
そして歓声ももの凄い・・・人気だな・・・未来の方が声援が多いようだが。
負ければチーム“ドラゴンディセンダント”も負ける・・・まあリーグ戦だし終わるわけじゃないけど・・・プレッシャーはあるはず。なのに負けかけている秋元未来・・・脈拍が変わらない・・・緊張していない・・・どういう鍛え方しているんだ?怖い女だ。ああ、少し霊眼使ってしまったか・・・そう、そういえば未来のママの香樓鬼から最近連絡ないなぁ、ミスってないといいけど。まあその時はその時だ、まあ仕方ない。
そう・・・仕方ない。
父王の毒殺、母は犯されながら殺されて、僕はもうすぐ左肩の呪詛で呪殺される・・・仕方ない。できる限りのことはするが、まあ仕方ない・・・。
乗り越えているとは思えないが、ダメージが大きすぎて・・・緑川尊が亡くなって・・・“ドラゴンディセンダント”は色んな意味で強くなっているのは間違いない。
友人などいらないのだ僕は・・・緑川が残したダメージを考えれば・・・誰とも、なんの関係性もなく僕は消えていく必要がある・・・償いを・・・11名の償いを・・・お??
・・・おっと!もう残り時間僅かだ!勝負に出るな!
異様な闇属性魔力を集中させている・・・秋元未来・・・僕の予想より、さらに上だな、修正しなくては。
“滅ビノ言ノ葉”
“第六天魔王・煉獄”!!
おいおい・・・まじか・・・闘技結界がトぶぞ・・・。
“狂神憑依”
“光皇覚醒輪廻渦”!!
涼しい顔している麗良のも知らないよ“リンネノウズ”ってなんだ?
光の覚醒魔法と闇の覚醒魔法(?)の撃ち合いだがどっちも威力が半端じゃない・・・!
国立闘技場が消し飛ぶな・・・!
ん?権藤先生が“疑似異界化覚醒結界”で介入する気か・・・無理だ・・・僕の“次元覚醒隔離”じゃないと・・・権藤先生の術はジャマだ・・・キャンセルしておく・・・。
闘技結界内が白と黒にスパークしている!!
えええ?あああ?
あれ?・・・?
ああ!・・・相殺した?可能か?
ウワ――――――――!!!
オオオオオ!!!
ってすごい歓声だけど・・・おまえら・・・今、全員死にかけていたよ。
しかしこれは・・・麗良か・・・わざと相殺したな・・・背筋がぞっとするほどの威力と・・・制御力だ・・・もし全開で麗良が撃っていたら・・・。
ああ、ごめんなさい・・・権藤先生がすごく驚いている・・・覚醒魔法キャンセルしてやったからな、僕だとは気づかないはず・・・。
しかし、あれ?もしかして西園寺桔梗よりもひょっとして・・・麗良・・・。
んん?桔梗と麗良で僕の頭の中で仮想試合させると・・・互角以上?・・・まっさかね。
「―――ざけんじゃねえぜ!桔梗!!」
えええ?紅い鎧の葵が突然吠えている・・・。
なんで?
ああ、えっと。桔梗が大将戦棄権するらしい。まあ“ホーリーライト”はすでに勝っているし当然の選択。
「勝負しろよ!テメ――!」
気持ちは分かるが“ドラゴンディセンダント”は負けた。“ホーリーライト”は葵を無視して控室に戻っていく。
ずいっと僕のとなりにブロッコリーがやって来る。
「キエ~、おかしいのう。もけよ」
「え?そう?」
「おかしいとは思わんか?あの桔梗が棄権するなど今までにない、と思いきやだ。今大会はほとんど棄権だ」
「ふーん、調子悪い・・・わけがないね」
「この軍師はこう見るのである、今大会ではなく、もけに負けてからずっとであろう」
「う。嫌な予感しかしないね・・・」もしかして僕にリベンジってことか・・・情報を漏らさないようにして?僕の真似か?・・・怖ええ・・・病欠したい。
ヤバくなったらタイガーに言って病欠に・・・無理か・・・。
第1試合は“ホーリーライト”が“ドラゴンディセンダント”を倒した。




