2-14-1.決勝リーグ①
み・・・
緑川尊・・・?
ん?なんの夢だ・・・一体?
―――ああ、決勝リーグ当日の朝だ・・・。
デラックススイートのベッドはとても気持ち良かった。
となりのベッドからブロッコリーがはみ出ている。
まあ起きて長い青髪を整えるとしよう・・・。
寝ぼけながら僕は上半身を起こす、やっぱりまだアフロは寝ているようだ。
しかし昨日の夜10時半から始まった作戦会議は・・・まさかだった。
うーん。まさかこんな・・・こんな隠し玉が・・・。
反省しよう・・・反省する必要がある。
僕の目は節穴か?生きるのに戦略を練るために見落としは避けないといけないのに・・・。
だめだこりゃ。
竜王の墓地の合宿から帰ってきて・・・確かに何度か思ったよ・・・“Z班”部室の旧美術講堂の周囲や内部がやけにキレイだなって。掃除していた人も霊眼で見た覚えがある。フード被った女性だったな。
今思えばそれはおかしいわな。
それにしてもルールブックを隅から隅まで読んでないと思いつかない・・・。
だとすればこれは戦略・・・アフロの戦略か。
髪を櫛でとかしながら鏡の自分を見る・・・ふう・・・あんまり自分の容姿は好きじゃないのだ・・・鏡は普段見ないのだが。
こんな女性のような風貌だからあんな変な夢を見るのか・・・夢?
・・・もう思い出せないな。
さっさと熟睡しているアフロを起こして支度しないと・・・しかし熟睡って、大丈夫なのか今日の決勝リーグは。
これから半日後には今年のインハイ団体戦優勝チームが決まる・・・。
―――さてと、僕は霊眼で見渡す・・・国立闘技場内部は広い・・・3日目だからさすがになれた光景だが・・・今日はこの1階のみで決勝リーグを行うのだ。観客も今日はぶっちぎりで多いみたいだ・・・もう声援らしきものが聞こえる。
“Z班”の連中はもちろん全員来ている。
これから決勝リーグ・・・5チーム総当たり戦が行われる。
実力伯仲・・・難易度満点だ。
今年の最強チームを決める戦い・・・まさかこれに加わるとは。
“ホーリーライト・ザ・ファースト”・・・桔梗率いる極悪な強さの常勝チーム。
“DD-stars”・・・レマや姫川樹奈、カンナや纐纈君・・・とてつもないレベルの最強チーム。
“ドラゴンディセンダント”・・・校内戦出ずに地区大会から上がってきた。
“Z班第2部・王下竜騎兵団”・・・城嶋由良たち各学園の強豪の集まり。
“Z班”・・・うちら・・・成長著しい・・・けどどう考えてもダメチーム。
そうなんと・・・インハイ始まって以来だろう・・・決勝リーグは5チームともだ、降魔六学園所属のチームになった。
普通に計算すれば、いくらダークアリスの抜けた穴に補充があってもだ・・・。決勝リーグで1勝することすら難しいだろう。
少し詳しく考察しよう。
第1高校“ホーリーライト・ザ・ファースト”のレギュラーの西園寺桔梗、更科麗良、高成崋山、天野哲夫、安福絵美里に加えて次鋒をすることが多い準レギュラーの佐薙亮一、仁久崎星真、土斐崎之平と全員竜族で非常に優秀だ。佐薙、仁久崎、土斐崎はそれぞれ火、雷、土属性のスペシャリストだ。桔梗以外なら・・・うーん僕は勝てる・・・普通に戦えば1勝4敗・・・それ以上望むのは厳しい。
第3高校“DD-stars”は確かに校内予選で我々は倒したが、姫川樹奈の天敵であるダイブツくんのお陰だ。僕がなんとか倒したレマの潜在能力は凄まじい・・・校内予選のように勝てるとはとても思えないが・・・なんらかの対策があるだろうし。姫川さんが副将に固定で出てくるとは限らない。
もう一つの第3高校のチーム“ドラゴンディセンダント”は最近覗いていないから知らないがきっと色々あったのだろう、校内戦に出ずに地区大会から上がってきた。しかも大津留ジェニファーがまるで緑川尊の穴を埋めるように転部している。ポイントゲッターとして、さらに凶悪な攻撃力となっている如月葵、そして停学が解けた秋元未来、四肢の特殊魔装で異様に攻防が伸びた大津留ジェニファー・・・この3人は脅威だ、僕以外ではまず勝てない。特に如月葵と秋元未来の戦闘力は恐らく“DD-stars”の不知火玲麻クラスだ。
そして第6高校から参戦の“Z班第2部・王下竜騎兵団”だ。“神の目”花屋敷華聯に攻撃を当てるのは至難、ダブルスのガリバー兄弟、神取・瀬川ペアは“ホーリーライト”の天野・エミリーペアに迫る強さ、数値上だがプリン西川は高成弟と互角に成長している。泉麻希も“ホーリーライト”の仁久崎と変わらないほどの雷竜の召喚士となっている。そしてまあ反則技でレベルアップした我がZ班を除いてではあるが、ここ数カ月で最も伸びたのがなんと城嶋由良だろう・・・雷属性を変異させた麻痺属性を操るが・・・竜族召喚士すら麻痺を蓄積させて倒している、ダメージはいらない、麻痺した時点でダウン扱いになり勝利が確定する。今大会でも格上をバサバサ倒しまくっている。長足の進歩を遂げている三守沙羅より少し伸び率が上だ、驚異的だ・・・もともと才能あるのだろう、羨ましい話だ。
もう1チームが第6高校の落ちこぼれ“Z班”だ。夏合宿で全員の召喚獣を強力な召喚竜にグレードアップして、誰一人を見ても城嶋由良より強化率は上だ。びっくりするほど成長している。ああもちろん僕は著変無しだけど。でもね、TMPAはほぼ戦闘能力と同義語だけど・・・Z班のTMPAは―――つまりダークアリス、アフロ、オールバッカ―、青木君、村上君は―――2~2.5万だ。TMPAが変動する星崎さんはおいといて、魔法攻撃を吸収するダイブツくんはTMPA1万くらいだがこれもおいといて、まあ明らかに他のチームよりも低い数値だ。TMPAは一昔前に高校生でTMPA3万こえれば全国大会優勝狙える時代だったのだが・・・Z班以外のチームはほとんど全員TMPA3万以上だ。3万いってないのは三守沙羅と御堂路三男くらい。
そして昨夜、Z班に加入した金竜の使い手、華曾我部茜はTMPA33000くらいだ。今真横にいるショートで茶髪の女性だ。
うーん。驚いた。
四国のチンプンカン高校といえば4万円を踏み倒し、女神様、女神さまと意味不明なことを言っていた連中だが、六道召喚記念大会の全国の3回戦で当たったのがその高校のこの華曾我部茜だ・・・まさか7月に第6高校に転校してきているなんて。僕らはもう竜王の墓地の合宿に出発した後で転校してきてZ班入部を希望、雑用でいいのでとZ班の準メンバーになっていたらしいのだ、きちんと入部できるのは準メンバーとなって3ヵ月後なのだが。そして転校後は、つまり準メンバーである3ヵ月間は公式戦に出場できないのだが怪我や病欠でメンバーが8名を切った状態なら特例措置で参加可能となる・・・そんなことも昨日知った。
アフロめ、僕だけじゃない・・・全員に華曾我部茜のことを黙っているとは。タイガーも教えてくれたらいいのに。それにしてもダークアリスが離脱するのも計算の上では・・・まさかね。
―――というわけで・・・5チームが整列して・・・偉い人のお話しも終わっていよいよ決勝リーグ開始だ・・・そして歩く僕の目の前には華曾我部茜の背中がある。身長は僕より少し高いなあ。
「あっあ!神明様の前を歩くなんて私としたことが申し訳ありません」
「いやあ、好きなとこ歩いていいと思うけど」
何て言うんだったかこの髪型はショートボブだっけ?茶髪で目は大きいし、まあかわいい部類だろう。そして直立不動で、ビシッとお辞儀をしてくる。
「いいえ不遜でした。お許しください。昨日も言いましたけれど私などが本戦出場させていただける機会を与えて下さるなんて本当に寛大な方です。茜は神明様に一生ついていく所存でございます」
「出場できるのはアフロの采配だし、えっとそんなに長いことついてこなくても・・・」
(一生って・・・大丈夫か。この人・・・)
「茜はお話しできるだけで昇天しそうです」危ない目で何を祈っているんだ?
(・・・大丈夫?)
ドスドス近づいて来るのは青いジャージのタイガーだ。華曾我部茜と僕の間についっと入ってくる。
「じんめちゃん。準備運動を一応しましょうね」
「おはようございます。鳥井教官さま」そう言って茜は深々とタイガーに頭を下げている。
髪をかき上げつつ乱れていない金髪頭を整えつつエセ不良がやってきた。
「おうおう!頑張ろうぜえ!茜ちゃんよぉ。もけちゃんもなぁ」
(おまえが頑張れクズ・・・レークス・・・本当にもったいない)
「はい。オールバッカ―さま、頑張らせて頂きます」
こうしてみると普通に美人に見える不思議少女もやって来る、もうヌイグルミは持っていないのだ。
「みんなを守って。ミイロミューン・・・っは。ま、まさか。もけきゅんとオールバッカ―のパターンもありなんて・・・それは予想外、それはいけないわ!」
(なんのこっちゃ)
「星崎真名子さま、よろしくお願いいたします」
丁寧な人だな華曾我部茜さん、一人ずつお辞儀する気だ。昨日も散々頭下げていたのに。
凸凹コンビはいつもいっしょだ。
「いやあ昨晩は驚きました。ああもう一度、村上謙哉と申します。ふつつかものですが本日もよろしくお願いたてまつります」
「うふふふふ。真名子ぉ、今日はブラの色が違いますね?まさか今晩・・・ああああ!・・・あれっ!華曾我部茜さん。あなたの瞳にイルミネーション、青木エンジェル小空です。星降る夜の恋人とお呼びください」
(青木君と真名子って進展あるのかな・・・すごい熱い視線で真名子が青木君を見ている)
「村上さま、青木さま。ふつつかものは私の方です。心を削って頑張ります」
「ミイロミューン、セクハラ青木は助けなくていいからね。あと今度ブラ見たら殺すよ?ガチでマジで、青木?」これが愛??
僕の数少ない友人、軍師ブロッコリーの登場だ。
誰ともなく円陣ができる・・・タイガーもその輪に入っている。
「キエ~!気合はいるのう。みんな揃っておるな、これが試合順である。あとで確認せい」
「アフロ隊長さま、選手にして頂いて。お仕事をくださって感謝です。神明さまにお仕えできる・・・何物にも代えがたい誇りと喜びを感じます」
「アフロちゃんよ、一発ぶちかまそうぜい。おれっち今日はバリバリだぜ!バリバリィ!」
「でも、みんな強そうですよね、おトイレっ。もう一回いっておいたほうがいいですか」
「真名子。おれのパトスを受けとれぇぇぇえ!この汚れたキャンバスを君にプレゼントするぅうううう!」
「みんな無理しないでね。ミイロミューンに回復はまかせてね。・・・今度呼び捨てにしたらコロスよアオキ・・・」
「先生みんなを信じてる・・・みんなは強い。自信もって。全国大会決勝だからって緊張することない、勝てるわ。ね?じんめちゃん」
「まあそんなこんなでさ、アフロ。お手並み拝見、だね」
円陣を組んでいるみんなの顔がくるっと見える・・・。なんだよみんな、いい顔してるなあ。
緑アフロ隊長の掛け声で・・・珍しく・・・。
「行くぜ!ゴミども!黒川有栖に笑われんなよ!!」
オ―――――!!
珍しくもないのかな?Z班8人のメンバーはまとまった。ここに人間関係引きちぎって生きている自分が入っているのがなんか不思議だ、上手く言えないけど。
「キエ―!皆の者、聞けい!チームの勝敗の心配をするのは、この軍師の役目である。一喜一憂するべからず、それぞれ目の前の事案のみに集中せい。降魔の地のごみ溜めに集いしはぐれものどもよ。・・・今日は凱歌を上げねばならん」
何やら気持ちいいな、僕も目の前の敵にだけ集中しよう、駒として使われてやろうじゃないか。アフロめ。
「それぞれの端末に送っておいた試合順を確認せい、闘技場は一ヵ所のみ。第1試合は“ホーリーライト”対“ドラゴンディセンダント”である、我々は第2試合から出陣である。相手は“DD-stars”である、その後、第6試合、第7試合。そして第9試合と4戦する」僕には送ってくれないのか、そりゃそうか。そもそも霊眼で確認できるし・・・いやいや今日は霊眼は試合中のみに封印するんだったな。
「ちなみにね、第6と第7試合の間に休憩が入りますからね」補足説明してくれているのは26歳独身巨乳のタイガーセンセだ。
第1試合が始まる。西園寺桔梗の“ホーリーライト”に対するは葵の“ドラゴンディセンダント”・・・全く昨日まで決勝リーグなんて興味なかったが・・・アフロがああまで言うのだから・・・とか思うと・・・なにやら緊張すると言うか・・・気にはなる。
ん?誰か“Z班”にやって来る・・・気配がない・・・何者?
「グモ―――!!グモワッシャー!!みんなここにいたのじゃ!!どうしてどうしてどうして起こしてくれないのじゃ!!」
天然パンチパーマの上、寝ぐせがすごい、しかも顔はブサイクで大きい、だけど人間は顔じゃない。
唯一無二の男、ダイブツくんだ!
いやあ、すっかり・・・忘れるわけが無い。
「キエ~、忘れておった・・・」あららら。
っていうかダイブツくんってオールバッカ―と同部屋じゃないのか?起こしてやれよ・・・。
あ!始まってしまったじゃないか!このブサイク・・・。




