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ドラゴンディセンダント  作者: ドクターわたる
竜の召喚士
55/265

2-13-7. インターハイ全国大会⑦

さて何故か・・・“Z班”は・・・召喚戦闘公式戦でも最難関のインターハイを・・・そう何故かここまで2日間も続けて全勝だ。当然・・・明日の決勝リーグに駒を進めることになった。


決勝リーグ・・・まあ僕は出たくないし、出る意味も見いだせないでいるが。


残っている高校生召喚戦闘チームは“Z班”を入れて5チームだ・・・インターハイ予選は2000チーム以上が参加、全国へ来れたチームは80チーム・・・考えると5チームに入るというのは大したものだ。


我々“Z班”は歩くとこ歩くとこ、ギャラリーが追いかけてくるようになっていた。降魔六学園の生徒以外の他校の生徒や一般人まで注目してくる。テレビ局も来ているな・・・。

スパイというよりは流行りものに興味津々といったところだろうか。


まあ“Z班”はキワモノ揃いだからなぁ。


手を振ってオールバッカ―と青木君は声援に応えている・・・いっしょに写真を撮ったりしているようだ。

・・・とにかく人のいないところに行きたいな。

右隣のアフロは何を考えているのだろう。


疲れを残さないための配慮だろうが一日の試合数はそれほど多くない・・・国立闘技場の入り口にまだ夕日が眩しく差し込んでいる。


闘技場外壁も周囲の木々もオレンジに染まり・・・いよいよ・・・夜の都会観光に行きたいのだが・・・。


運転手のような人とタイガーセンセが話しているのが見える・・・?

「なんだ?これは?アフロ?」

「ふうむ?・・・もけの関係者の手配ではないのか?」

「僕の?」思いつかないが。


―――国立闘技場の外では・・・なぜか僕たちZ班を真っ黒いタクシーが8台で待っていた。1人1台?いくらするんだ?


罠・・・ではなさそうだ。

「キエー!この人間不信ダメ王子め。罠なわけあるまい」


そしてなんと、ホテルが超豪華にレベルアップしていたのだ。

昨日泊ったホテルに荷物を取りに行き、そして向かうホテル名は東京オニツカグランドホテル・・・なるほど。しかもどうも昨日のホテルのキャンセル代も支払われているっぽい。

・・・さすがはクレアさまだ。僕らZ班が全国大会中ということを知ったらしく、ご自分の経営されるホテルの部屋を取ってくれたわけか。僕なんかの後見人には勿体ない・・・何がどうなっても決してクレアさまには迷惑をかけないようにしなくては。


うーん、“Z班”のメンバーはホテルで息をのんだ。明らかに昨日のホテルとはグレードが違う。

何もかも高そうだ。


そしてなにやら案内されてメッセージカードがあるとのことだった。


神明半月全(じんめはんげつあきら)殿下 御侍史 

大変お疲れさまでございます。

決勝リーグ進出まことにおめでとうございます。

仕事の都合で伺えませんがお許しくださいませ。

僭越ながらホテルを手配させて頂きました。

ご自由にお使いくださいませ。

必要なことがありましたら何なりとご用命ください、お願い申し上げます。 

オニツカグループ 鬼塚紅亜 拝”


うーん、この借りはどうやって生きているうちに返せばいいのだろう。


5部屋とってあるようだった。

ホテルは豪華すぎてZ班の人間はまるでソグワナイ感じがするけど・・・。部屋割りはそのままで2人で一部屋だったが・・・だったが。あれ?アリスいないし一部屋あまるか?


・・・クレアさんやり過ぎだよ・・・。

そしてエレベーターで案内されて・・・呆然とした・・・。

「なんちゅう広い部屋じゃ・・・こりゃ・・・もけ?」

「これいくらするんだ・・・汚したら大変だ・・・」

「こりゃあもけ。スイートってやつと違うんか?」

「さあ?・・・壊したら大変だ・・・」

何だこの部屋は・・・普通の一軒家が余裕で入る面積だ・・・いやこっちも部屋あるのか、広い・・・。


「・・・デラックススイートって奴みたいだのう?」

「高そう・・・これ売ったら高そう・・・」

「キエ~!飲まれるなよ!もけ!」

「あ、うん・・・絨毯も高そう・・・」


結局部屋の片隅だけの床面積でですべて事足りた。

そして18:30から予約されていた食事は“荘襄王”なる中華料理だった。


エレベーターでアフロと2人で降りて・・・お店の前まで行ったら店構えがヤバくて帰りたくなった。

「えっと第6高校“Z班”と言いますが・こ。この店に予約がしてるらしく・・」

「存じております」オールバッカーなどと違い上品な黒髪オールバックの人が案内してくれた・・・個室だ・個室に通された。残りのメンバーは来ていない、僕らが最初みたいだ。

「おまえな。もけ。おまえの後見人のホテルであろう。おまえが喋れ」

「無理だよ。知らない人と喋りたくない」


次に来たのは星崎真名子と鳥井大雅先生だった。2人とも何て言うんだ・・・スカートはいている。

というか着飾っている?なんかちゃんとした私服に着替えている。


「2人ともドレスコード大丈夫だったの?ジャージで・・・」星崎さんがとんでもないことを言う。

うーん、アフロと顔を見合わせ、お互いのジャージも見るが何の情報も無い。

「星崎さん、ドレスコードって何?」

「おまえはだまっとれい。もけ。問題なかったようだがのう星崎。・・・しかしお前に常識を疑われるとは世も末・・・キエ~~~!」

「大丈夫よ、じんめちゃんは全体的に上品なんだからね」フォローになっているのか。どうなのか。・・・そもそも着替えずに降りてきてるし、ジャージじゃだめなの?あと制服しか持ってきてないのだ。


・・・よかった・・・残りのクズたちはみんなジャージレベルだ。青木君も村上君もジャージ、オールバッカ―はやぶれたジーパンにTシャツだ。顔がテカテカしている村上君は借りてきた猫のようにガチガチだ。オールバッカーは「たいしたことねえぜ!」とか言って鏡のようになっている壁の部分に顔を映して髪を整えている。


さて場違いなことに“Z班”は高級中華の個室の円卓に取り敢えず座った。

「よしみんな揃ったのう。鳥井教官、食事開始の合図か何かあるので?」

(それは重要な質問だ。そもそもメニューは?どうやっていつ頼むんだ?)

「大丈夫よ。・・・みんなあの・・ふふ。不安そうね・・・あははは。そうね。慣れていないもんね。コース料理というのはね、もう注文済でね・・・」


勢いよく個室のドアが開くと一斉にみんなそっちを見る・・・。

「ご案内ありがとうございました」

(誰だコイツ?)

高そうな黒いタキシードに蝶ネクタイ・・・背は低い足も短い・・・頭は天然パンチパーマ、顔はデカくて目は細い。


!!!


全員絶句している・・・。

「だ、ダイブツくんか・・・」思わず口にしてしまった。

えええ・・・ダイブツくんがみんなをみて「ぷっ」と笑っている。

「田舎者どもなのじゃ!」


しまった負けた、これが必要なのか。ダイブツくんに何かで負けるなんて。

「タキシード、タキシードだあ・・・ぁあ!あはははは!はぁはぁ・・」

しかしダイブツくんを見てタイガーセンセだけは捧腹絶倒(ほうふくぜっとう)で笑っている。


「それではお飲み物はなんにいたしましょう・・・」

飲み物?・・・ってえっと・・・?

全く作法が分からないが中華料理のシェフお任せコースなるものが始まってしまった。


「じゃあZ班のみんな。乾杯しましょうね。まああの全国大会中日(なかび)ではありますけど」


乾杯・・・。


―――聞いたこともない食材だらけだったが・・・いやあ美味しかった・・・なんか知らないけど美味しかった・・・。5歳まではパーティとか行ったことあったのにな、でもドレスコードなんて聞いた覚えもない。父王が亡くなるまで僕専属メイドが10人いて何をその日着るかなんて知る由もなかったからな。

・・・そう父王は自分の死期を知っていた、毒殺なのに知っていた・・・なんでだろう・・・知っていたのに避けなかった理由は。5歳まで僕は父と2人で大きな大きな屋敷に住んでいた、前妻の娘の姉上でもなく正妻の息子の同い年の弟でもなく父は僕と住んだ、まあ執事やメイドは50人以上いたが。5歳の僕の仕事は父の好きそうなネット番組を見付けて父のアカウントに登録することだった。ある晩僕は得意げに明日配信される面白い番組を見付けたんだと父に言った。父はしばらく無言で・・・そしてもうそれは必要ないといったのだ。そして父は人には役割があるといった、おまえの役目の一つは葵を守ることだと言った、その時妹がいることを初めて知った。そして竜王家の古いコインをもらってこれは決して無くすなといった。父の顔は暗くてよく見えず、僕は父が初めて怖いと思った。そして次の日、晩餐会で父は特殊な毒を盛られ亡くなったのだ。


・・・死ぬのも役目の一つならば・・・僕は・・・。


「もけ!全部うまいのう!すべての料理が異常に旨い!」おっと考え込んでいた。

「っん?ああ、そうだね。おいしいねアフロ、霊眼で見るとこのコース一人3万2千円なんだけど、じょ、冗談だよね?」

「さ、さ、さ3万か・・・」

「見間違いだと思うんだけどね」

そんな高いわけがない・・・多分。


「―――みんな注目―――黒川有栖さんと繋がったわ」

タイガーセンセはタブレットでテレビ電話する気らしい。


ベッド上で身体を起こしているアリスが映し出された。

「アリスちゃん大丈夫?ごめんね。頭まだ痛い?」

「今晩はってのも変だけど。真名子先輩もうダイジョーブ。聞いたよ。じんめセンパイ、さっすが。センパイたちお疲れっす。3戦目全勝だってね」

「黒川、もういいのか?」

「点滴が外れねえんだけどさ。明日には復帰すっからさ」

「だめよ黒川さん3日は点滴がいるってお話しでしょう?」

「センセはだまっててくれ!あと先輩に触らないようにな!もうあたしは大丈夫だ!」

本気で来そうだな・・・それは無理だ、あんまり人の行動にあれこれ言うのは僕の主義に反するが。

「黒川有栖・・・格上に5連勝は大したもんだ。僕の予想を超えてた。いい戦士だ。この大会で君より成長した奴はいない。だからこそ言おう、君の役割は明日は治療に専念することだ。僕の目はごまかせない、君の脳浮腫は軽くない。覚醒抗術で治療した僕が言うんだ間違いない。一週間は絶対安静だ。自己管理できないものはいい戦士じゃない。・・・頼むよ明日は寝てくれ」

「・・・う・・・グス・・・ごめんみんな離脱しちゃって。ごめんな・・」その後アリスは喋らなくなって通信は終了した・・・超不良女・・・泣いてたか?

「あ、ありがとう神明ちゃん・・・いまの本当は先生の役目なんだわ・・・ゴメン先生もちょっともらい泣き・・・」タブレットを持つタイガーまで軽く泣くという・・・。


「キエ――!もけ、旨い食事であった。くれぐれも後見人の鬼塚さんにはお礼を言っておいてくれい。みんな疲れたであろう。風呂でも入って休んでくれい。黒川のところに見舞いに行きたいところだが時間が惜しい。夜10時半に明日のことについて作戦会議を行うので俺らの部屋に全員集合してくれ」

「今から先生は黒川さんのところに行ってきます。まだ面会時間に間に合うから・・・必要なら連絡してください」

「ラジャ!」敬礼するハゲの青木君はいつにもまして頭が光っている。



―――みんなと別れて僕とアフロはデラックススイートなる部屋にもどってきた。この部屋はアフロが調べたところ一泊15万円超える部屋らしい。

もう値段のことを考えるのは辞めよう、気が遠くなる。


綺麗な夜景が見えるデカい窓だ。スイートに似つかわしくない僕とアフロは外なぞを見ている、みんなが来るにはまだまだ時間がある。

「時にもけ、少し話そうではないか」

「ああ、僕も話があるんだ。アフロ」

「・・・ほほう。聞こうではないか」

「黒川有栖の状態は僕のミスだ。あそこまでやる子だとは予想を超えてた・・・カタキでもなんでもない相手との戦闘に命を捨ててた。なんのためなのか多分僕には分からないが。アリスは来年は強くなるだろうと思った。今年不必要な技を強引に覚えて強引な結果を出す必要なんてないんだ・・・そう思っていた」

「うむ」

「十分じゃないか・・当初のZ班の目標は・・・公式戦でたった1勝だろ?もうすんだじゃないか・。それどころか予選グループB優勝してインハイ全国大会にも出ている。推薦もらうんならこれ以上はない・。決勝戦何位だから入れる大学が変わるなんてないさ。インハイ全国出場だけで例えば自衛大学は確実に入れる。他にも召喚学部があって推薦狙える大学もあるだろうさ。でもこれ以上は・・・明日の戦いに何の意味がある?」

「うむ。もけ。お前の言っていることはすべて正しい。だがな・・・俺も正しい。黒川も正しいのさ」

(うん?)

「・・・うん、それで?」

「おまえが何で苦しいかっちゅうと人の分まで背負うからなわけだ。戦う理由は人それぞれだ。いつ何と戦うか、いつ自分と向き合うか。んなもんはな個人の勝手だ。たとえお前に竜の召喚士にしてもらったとしてもな。アリスが命張るのを止めることはできん」

「・・・背負うなんて・・・」僕は他人を背負ったりしない、人間関係なんて全部投げ捨ててきたはずだ。

「硬く考えすぎであろう。インハイ決勝リーグなんざ。おもしろい玩具(おもちゃ)だ。クズごみの集まりZ班の俺らが出てるなんて奇跡だがな。例えば俺の理由をはなそう。圧倒的に明日の決勝リーグは不利だ。5チーム中ぶっちぎりで弱い。おれはそのZ班でも個人では弱い方に入るだろう。そうじゃねえんだよ。おれは軍師だ。圧倒的不利を覆してこそ軍師であろう」

「んん?」

「百も承知なのさ。全国大会なんざ退学寸前の俺らには不似合いだ、おこがましかろう。だがこの圧倒的な形勢不利・・・覆すが戦略だ。縦横無尽に固定概念なく戦略を練る、キエ~!それは俺にとって命を賭けるに値する」

「・・・なるほどそうだったねアフロ・・・細心かつ大胆に・・」

「ああ、もけ。仮定は多ければ多いほどいい・・・」

「固定概念を廃せ・・・」

「感情を殺せ・・・」

「それが真実へたどり着く近道になる・・・」

最期はハモってしまった。もうこいつとは長いこと友人をしてるな。

眼下の都会の夜景は美しい・・・なるほど・・・。


「なるほどアフロ。計算上決勝リーグは一勝するのすら困難、それを覆す気か。友人が戦術の勉強のために明日盤上で勝負すると言うなら僕は盤上の駒になろう。他のみんなが戦う気かどうかは僕の知ったことではない・・・。いいだろう戦う理由ができた・・・しかし戦略と言うと僕の目で情報を集める必要が・・・」

「いや、もけ。霊眼は封印してくれい」

「はあ?」

「だが戦闘中は好きに使ってくれい、霊眼での情報集めは俺の戦術を試すには足かせになる。霊眼で情報集めて勝っても仕方あるまい?」

「あは。最もぶっちぎりで弱いチームの長所を一つ潰すのか。霊眼で敵チームの情報集めてなお、勝つのは困難極まりないが・・・ちなみに5チーム中何位を目指す?」

会話中に笑うのは僕としては珍しい・・・不思議な感覚だ。

「優勝以外なかろう」

「あはは正気?・・・まじか0%だね。計算上は・・・いいだろう付き合うよ。僕は目の前の敵に集中しよう。チームのことを考えないのであれば自分の敵だけに集中できる。・・・アリスは離脱、アフロ?分かってないと思うけど村上君は・・」

なんか面白い・・・本当に面白い・・・。

「ああ赤ノ巨人は出れて一戦だな。バーサクモードは負担がかかり過ぎる。2日で6戦は限界超えとる、・・・それにしても。もけは最近たまに笑うようになったのう」

「分かってたのか。アリスは入院、村上君も恐らく明日は途中で離脱、6人ギリギリだよ。うちのポイントゲッターは僕とアリスと村上君だ。分かってると思うけど星崎さんは・・・」

「ああ安定しない・・・星崎は格闘技経験ほぼないからな・・・だがそれでも勝つ・・・それが兵法だ」

「なるほど、自分は駒・・・それは気楽でいいな・・・まあ乗せられてやるよ」

勝つか負けるかはアフロまかせ・・・それなら楽だな・・・。

「キエ~!」

緑アフロ隊長は夜景を見下ろしながら不敵に笑う・・・。

決勝リーグか・・・楽しくなりそうだ。


「ところでもけ?“残影”の部長とはなんの話をしておったのだ?」

「ああ、動物園の田宮君がうまか棒50本とか100本で負けてくれ的な話しでね」

「なるほど買収か。ところで田所な?名前。田宮じゃなくてな。動物園?・・・・・・時に本当にうまか棒と言っていたか?」

「ん?50本いや100本で勝たせてくれだったかな、うまか棒以外ないでしょう?」

「くっくく。もけ・・・うまか棒1本10円か。・・・1本って100万円のことではあるまいな・・・」

「まっさかぁ、100本で1億円ってこと?・・・5000円でも負けてあげるよ」

楽しそうに且つ悪そうにアフロは笑う・・・。

「そうかそうか。うーむそうか。買収されなかった褒美に5本、うまか棒を買ってやろう」

「まじか。・・・じゃあ明太子とチーズがいいな、ああコンソメもいいな・・・あと・・・あと何にしようか。ピザ味ってあったっけ?」

「知らん!」


さて、そろそろみんな来るはずだな・・・どんな作戦かこうご期待なわけだ。

(・・・今日はきっとよく寝れそうだな)




僕はきっと夢を見ている。また夜の海の神殿に来ている、広い広い砂浜の海岸だ。僕は裸足で砂の感触が心地いい。ここに来るのは何度目かも分からないがきっと僕はここが好きなのだろう。不意に気配がする、海を眺めている僕の後ろからだ。ああ烏女(からすめ)か、彼女も大抵ここにいる。まあどうでもいい、海に入ってみようかな・・・。

「人殺しめ!」今日は烏女の言葉がはっきり聞こえるな・・・。

「おまえがみんな殺してしまった!」人殺しとはどんな意味だっただろうか。誰か他人をという意味か。みんなとは誰?おまえというのは僕のことか・・・「じゃあ僕は誰だ・・・」

烏女が近づいているのが分かる、見ようとすると消えてしまうのでもう見ないようにしているのだ。「おまえは何?いったい何でこんなことをした?言え!言え!!」僕は何?彼女は、ああそう彼女は女だ、では僕は・・・。ん?あれ?そういえば僕の身体はまるで、まるで女性じゃないか。スカートのようなものを着ている・・・髪も長い・・・乳房もあるようだ・・・ワンピースというんだっただろうか。僕は女?女だった?女なのだとすれば誰だ・・・僕は誰?「そうだ僕はじんめ・・・じんめ・・・じんめ?・・・じんめまどか?」「僕はじんめまどか?・・・そう、あたしは・・・あたしは神明円(じんめまどか)・・・」「そうだ忘れていた・・・あたしは・・・あたしは・・・会わないといけない・・・探していた・・・彼と・・・彼と会わないといけない」烏女が驚いているのが分かる、いまなら振り向いても逃げないかもしれない。そしてあたしは烏女に振り向いてこう告げた。「あたしは緑川尊に会わなければならない・・・それがあたしの使命・・・2匹の猫とともに・・・この世界で彼を助け・・・そして・・・結ばれる運命・・・」

烏女が唐突に強い力であたしの首を絞めてくる。「なにを口走っている、おまえは最悪の最悪の最悪の神明全でしょう、こん――世界——崩壊させ―――人々―殺し―――おま―――」ああ・・・また消えていく、あたしの首を絞めながら締めている手も身体も烏女が消えていく。

ここは“じんめあきら”という響きだけが残る世界・・・そうここは夢の中・・・記憶は手から零れ落ちる砂・・・なにものも留めることはできない。


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