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ドラゴンディセンダント  作者: ドクターわたる
竜の迷宮
108/265

3-4-9.竜の迷宮⑨

「な、何が?」

我ながら声が上ずってしまった。


この場所・・・異次元の街はずれで魔族の死体だらけの中で突然、予想外の名前だ・・・なんで?


緑川尊は義理の妹・・・如月葵のチームメイトだ。

今では第三高校の最強チームになった“ドラゴンディセンダント”の初期メンバーだ。

何故か今年の春に緑川は亡くなっている。


目の前の第一高校3年生の高成崋山と緑川は戦闘はしていたがそれほど絡んでいないはずだ。


一息ついて目の前の甲冑を着こんだ男はやや重く話しだした。


「負けるなど微塵も思っていなかった・・・1年生などにな。俺の目標は桔梗様だ。下らん恋愛感情などではない。命の限り敬愛しているのだ。あの方に認められるのが俺のすべてだ。あの方に仕えても“蒼天一刀流”は教えて下さらん・・・だがな盗めと言うのだ・・・貴様と私が同じ戦士だと言うなら教えることは何もないが盗めと・・・どれだけ見ても構わんと言う・・・もう数年前だ。そして俺は何年も何千時間もあの方の後ろに着いて白蓮塔に張り付いて・・・命を賭けて見はり盗み・・・刀を自分を研ぎ澄まし・・・試行錯誤したのだ。そしていつの間にか“ホーリーライト”のレギュラーになり降魔十傑に名を連ねるようになった」


何を話す気なんだろう?・・・心を開いている的な感じだろうか。

辺りはもう日が完全に落ちて暗くなってきている。

夜はヤバいのがうろつき出すのだが高成弟には関係ないようだ。


「だがな・・・何かが足りなかったのだ・・・俺は・・・ずっと開眼しなかった。その時出会ったのが緑川尊だ。正論を吐く小賢しいガキだ・・・ガキだと思った。だがな、俺は負けた・・・完敗だ。大津留と2対1だったなどというのはどうでもいいことだ」


なんだか権藤先生といい緑川、緑川ってそんな重要人物だっけ?

彼の死についてはあんまり興味なくてまだ調べていない。


「奴はな・・・緑川尊は・・・俺が欲してやまない桔梗様の“蒼天一刀流”の奥義で俺に勝ったのだ。その前に撃った覚醒魔法“終息”もすさまじい威力だった。もっとも愕然とした事実・・・これは・・・あの1年生は・・・手加減したのだ。俺は緑川も大津留も殺すつもりだった、一切手加減しなかったのにな・・・加えて奴は一回だ、たった一回だけ桔梗様の奥義“一死”とレマの覚醒魔法“終息”を見て・・・見ただけで覚えてしまっている・・・驚嘆に値する」


そう言ってふうっとため息をつく・・・まあ聞くしかないわな。

そんな優秀だったっけ・・・緑川って・・。


「ようやく・・・そしてようやく俺は・・・生涯のライバルに会えたのだ。分かっているさ、俺の方が追う立場だ。それでもライバルの登場は心が張り裂けるほどの歓喜だった・・・影ながら死ぬほど努力した・・・競う相手がいるのはいいものだ・・・充実したよ。そして突然、開眼したのだ。緑川とおなじ技に到達した。奴が居なければ一の太刀“一死”は覚えられなかっただろう」


目を開き中空を見る目はなんだろう・・・何が言いたいのだろう。


「あの日夜遅く・・・緑川尊が殺されるまではな・・・あの日の昼にお前が現れた・・・そして世界は何もかも変わってしまった。緑川が死ぬ前は顔を隠し、死んだ後は顔を出したお前は・・・何故か突然表舞台に出てきた・・・桔梗様は “ドラゴンディセンダント”の全員を転校させて“ホーリーライト”に入部させるおつもりだったのだ」


まあ確かに公式戦が突然増えるなんて知らなかったし・・・避けようが無かったけど。


「すべての目論見は崩れ去った。桔梗様は緑川尊が欲しかったのだ・・・見ていても分かった。やつの遺体を前にした桔梗様は意気消沈した・・・当然だろうな。お言葉は無かったが・・・横にいるのが辛かった・・・そのショックが覚めやらぬ前に、たった数時間後に貴様に倒された・・・なんという計算しつくされたタイミングだ・・・」


少し・・・一歩こちらへやって来る・・背が高いなあ。

何か勘違いしているような・・・ショック状態の桔梗を倒したと言いたいのか。


話しは続くようだ。


「桔梗様と如月葵を殺し合わせようと企んでいた奴は・・・緑川尊を軸に“ホーリーライト”と“ドラゴンディセンダント”が融合するのを恐れたのだ・・・緑川尊は降魔十傑クラスの戦闘力だ・・・倒せるものは限られている・・・というか降魔の地にほとんどいないだろう・・・無傷で緑川尊を・・・俺のライバルを倒せる奴はそうそういない」


さらにずいっとこちらへ寄ってくる・・・言いたい推論は何となくわかるが。


「例えば貴様だ。簡単に緑川を殺せるのは。簡単な消去法だ。・・・それどころか貴様以外に誰がいる?」


(うーん。バカじゃないな・・・でもまあ)


「すべて貴様だ・・・貴様が操っている・・・アジ・ダハーカを如月葵に殺させて・・・如月葵を桔梗様にけしかけた。そして緑川を・・・“ドラゴンディセンダント”を操っていたのも貴様だ・・・だが貴様の予想外に緑川は周囲に影響を及ぼし出した・・・そして邪魔になって殺した・・・貴様が殺したのだ・・・それ以外に何がある」


「いや、えっとですね」


久しぶりに僕は声を出したが・・・当たっている箇所もある・・・そこまでバカでもないんだな・・・少し感心している自分がいる・・・でも殺す理由は強引だな。


「キサマが俺のライバルを。生きがいを作り、そして一瞬で殺したのだ。俺も緑川もムシケラだ、キサマにとってはな・・・敬愛する桔梗様はすでに貴様の術中だ。あのお方はただの女になってしまった・・・敬愛する桔梗様も失った・・・全て・・・俺は生きる意味を全て失った・・・いや最初から何もなかったのだ・・・打ち込んだすべては俺の命は無意味だった・・・貴様は俺から最初からすべてを奪っていたのだ・・・会う前からな・・・貴様は敵だ・・・生涯の敵だ・・・滅ぼすべき敵だ・・・だがキサマは強い・・・とても今の俺には殺せない・・・だが報復すべき敵だ・・・すべてを捨ててでも・・・生涯のすべてをかけて貴様を殺すつもりだ・・・ここまで聞いて、どうだ?・・・俺を殺すか?今?・・・たった今?」


絶句だ・・・どうするんだ?この会話・・・。

誤解だけど・・・。


「俺は貴様に必ず報復する!命を削ってでもな!必ず復讐する!・・・さあ・・・今戦うか?今殺さねば後悔するぞ。いずれ俺は貴様を殺す!」


あかん!交渉は完全に失敗だな。目に力があるなあ。

妖刀を抜くなって・・・。


刀を突きつけられたまましばらく無言だ・・・それはそうなるよね・・・何か・・・。


(・・・あれだな・・・あれ)


「今・・・戦う理由がないでしょう・・・」

「・・・だろうな。おれは貴様にとってムシケラだからな・・・」


ここで会話を終了にするか・・・もう少し食い下がるか・・・これも戦闘の一つなら。


(アフロならどうするだろう?・・・まあ頑張るか)


「うーん。小さいな・・・小さいよ・・・」

「・・・なんだと?」


凄む彼は結構こわい・・・だが負けていられない。

こんな風に思われていたなんて驚いたが。


・・・困っている僕は両手を彼に向けて敵意が無いことをアピールしつつ会話を組み立てなければならない。

何から話せばいいんだ?


うーん。


「いやいやまあまあ。落ち着いて・・・僕の知ってる桔梗さんは小さなころから少し乙女チックなところがあったし。小さなころの桔梗さんのこと知らないでしょう?・・・あと緑川尊は“花嵐”とかいう術でブーストしていました。ライバルどころか高成クンの完勝ですよ、実力的には・・・。少し緑川を美化しすぎているのではないですか?葵の話しはいいとこついていましたが、僕らは西園寺グループと戦う必要がありまして・・・」


「・・・竜王家復権に邪魔だからな」


間髪入れずに勘違いをぶっ放してくるな。

なかなかの推測下手だな。


なんとか説得できるかな。


「いいえ・・・竜王家などというモノがあるから利用されるんです。無い方がましでしょう。それより西園寺グループは来年の聖魔大戦でデモンストレーションする気なんですよ」

「・・・」


今度は無言か。

無言はいいサインなのだろうか。


「聖魔大戦は世界中の予想に反してかなりの人間が死にます・・・魔族を装った人造魔などが暴れまわるはずです・・・つまり人為的にね。それを西園寺グループが開発している兵器でそれを鎮圧する・・・要は新兵器を売るためのデモンストレーションを予定してるんです。人造魔を秘密裏につくっているのも西園寺グループですから・・・いつどこで戦うかまで決めることができます」

「・・・」


彼は押し黙ったままだ。


「聖魔大戦はだいたい400年に一度・・・今回は450年ぶりですが・・・。魔族と人間が戦うのは400年に一回。利潤を重要とする軍事企業には少なすぎるんです。だからつまり西園寺グループが売りたいのは対魔族兵器ではなくて対人兵器です。今後ずっと世界中に売りさばきたいわけです・・・つまり魔族を装って例えば都市を襲い・・・それを時期を見計らって通常の部隊や召喚士たちが敗北した後で西園寺が開発したニューラインナップで鎮圧する」

「・・・」


一応聞いてくれているようだ。

まだ交渉はいけそうだろうか・・・。


「かなり昔ですがテログループのゲヘナを造ったのは西園寺グループの科学魔術開発機構です・・・当時はその前身である西園寺超常能力開発研究会が母体でしたが・・・僕と葵は西園寺が戦後開発してきた人造魔族や新型魔装兵器をこの世から消しさる役目があります・・・気の遠くなるほど長く竜王家が封印してきた御所の情報が暴かれて人造魔や新型兵器に応用されているんです。神明家を潰して飲み込もうとしている西園寺グループに復讐する気なんてありませんが、ただ人間が扱うべきでない知識や魔装兵器は消滅させて封印するのが王族の務めだと思うわけです」


多少は彼の目が動いている・・・少しは心に届いただろうか?自分のためだけど自分のためじゃないんだ的な・・・感じなんだけど。


「それから、これは一人ではできないんです。葵と2人でも厳しい。とりあえず今はここから脱出しないと話になりません。一旦くだらないしがらみは忘れて協力してくれませんか?風紀委員総長でしょう?」

「・・・ふふ・・・はは。今の話しが・・・それが事実だとしてなんのメリットがこの俺にあるのだ」


乾いた笑いだな・・・。

ではこういう答えはどうだろう。


「メリットになるか分かりませんが・・・僕の命をさしあげましょう」


「・・・なんだと?」


そりゃ目つきも変わるわなぁ。


「・・・と言っても・・・ああ」


黙ってそのままフィーネの鎧の左肩付近だけ魔装を解く・・・僕の肩が皮膚があらわになる。


「な・・なんだキサマ!なんのまねだ!な!・・・ゆ!誘惑する気か!!」


なんでやねん。


「・・・いやいや?・・・あの肩をよく見て・・・探知能力低くても見えるはずです」

「な・・・む?・・・むう?これは?」


禍々しい呪力の塊だ・・・非常に強力・・・僕の左肩には強力な呪詛が埋め込まれているのだ。


つかなんで赤面してるんだ?


「これは呪詛です。発動しています・・・埋め込んだのは西園寺御美奈・・・桔梗サンの姉です。つまり僕はもう長くありません」

「な?・・・な!」


なんとかなるかな・・・この会話は。


「復讐したければしてもらっても構いませんが僕はもうそんなに長くないんです・・・ああじゃあこうしましょう、僕の亡骸で良ければあげますが・・・その前に・・・」


竜殺槍を音も無く取り出して一閃した・・・ああ、高成弟は驚いて防御をしているが・・・。


シュバッ!!!!


もちろん高成弟を攻撃したのではない・・・。

姿を消して近づいてきていた魔族を叩っ切ったのだ。


3体の中級魔族は実体化するとともに体液を撒き散らしながら絶命した。

話し過ぎだ・・・もう周り中・・・魔族と魔獣だらけだ。




―――そして・・・そして僕と高成弟は背中合わせてしばらく次々やってきた魔族と無言で戦った・。


さっき高成弟が一人で倒した魔族の一団よりもずいぶん強い魔族集団だった。



・・・でもまあ余裕で片付いた。


肩で息をしている彼は妖刀をクルクルっと回して器用に影にしまっている。


「まあ、大声で長時間しゃべりすぎましたね、ここは魔族の巣ですから」

「・・・ふん!」


おや?ひょっとしていい感じなのでは・・・と思ったが?


「こんなことでキサマと俺の関係は・・・何も変わることは無い!何もな!」


もうあたりは完全に真っ暗だ・・・さらに魔族が来るだろう・・・会話は終わりだな。


なんとかなりそうなんだけどな・・・何かないかな。

正直さは・・・どれだけかは意味があるんだろうか。


彼は仲間に欲しい・・・。


少し決心して僕は話す。

もうこれを話すしかない・・・。


「まあ・・・そうかもしれないね。高成くん。西園寺に飲み込まれ消滅しかかっている神明家の生き残りの僕と勝ち組の西園寺に与する君とは生まれた時から敵同士なのかもね・・・一つ伝えることがあるんだ・・・。復讐を否定する気はないけどね・・・僕は・・・僕が5歳の時だ。僕の父、前竜王を毒殺したのは西園寺グループの誰かだった。母も殺された・・・これは霊眼で見たからまぎれもない事実だ。それからこれを正直に言うのは迷ったんだけど話すよ・・・11歳の時。あなたのお兄さんは命令で僕を殺しに来た・・・そしてその時に僕は神経ガスで迎え撃った、まだ僕は召喚士じゃなかったからね、まだ。仲間を助ける必要があってお兄さんは助けられなかった・・・竜王家の墓地に埋葬したよ・・・君のお母さんにもここを出れたら伝えておいて・・・余計なことを言ったかもしれない・・・余計なことついでに今の君より7年前の君のお兄さんの方がまだ強いよ。緑川なんかじゃなくお兄さんを目指すべきだと思うね」


彼は初めて僕の目をまじまじと見た・・・そのまま何も言わなくなった。


最悪のタイミングだっただろうか・・・じゃあ・・・一体いつ伝えるのが正解なんだろう。

貴方の肉親を以前殺していますよ・・・なんて伝えていいタイミングって・・・。


誰か教えて欲しい。


それで・・・高成崋山は仲間になるのだろうか。


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