3-4-8.竜の迷宮⑧
―――地下ダンジョンを攻略する前にすることがある。
この“マルカブ”内は見えない壁だらけ・・・僕にすら結界の向こうが見えない。
ここに入り込んだ人間をできれば一人も漏らさずに調べたい。
何らかの取引をしながらコミュニティを形成する必要がある・・・情報の共有化と言う名のスパイ活動だ。“Z班”の連中が来ていれば問題なかったのだが。
あの但本くんが使えるようになるまで・・・せめてTMPA13000超えるまでは危なくて何も頼めないし。
今何がこの次元環に漂流している召喚士に必要だろうか。
とりあえず挙げてみよう。
取り敢えず食事や住居、魔獣や魔族からの命の保証・・・。
どうしたら現世に戻れるのか、そう・・・この“マルカブ”から脱出する方法だ。
他にもいろいろありそうだが。
困ったときは第6高校で身に着けた処世術だ・・・つまり物々交換だ・・・取引相手の必要な情報と“その日のごはん”を交換してきたのだ。
つい最近まで常に激烈貧乏でいつもお腹が空いていたわけだが、人間不信の僕だったが顔さえ隠していればなんとか他人とも会話できたので・・・誰かに今日狙われているとか、抜き打ちで持ち物検査がありますよ、とか・・・まあ主にお金持ちの例えば変態青木君などに情報を売っていたわけだ。
アフロと違って下手だが交渉術を行使しよう・・・なにせ僕は超頭がいいのだ・。
この次元環で水を造れる術者は少ない、手っ取り早く水と交換でもいい。
育てなくても最初から強いのを仲間にできれば・・・。
そう・・強い召喚士を交渉で仲間に引き入れよう。
―――辺りはもう薄暗い・・・周囲には魔族の死体だらけだ。
「俺は貴様に必ず報復する!命を削ってでもな!必ず復讐する!必ずだ!」
怒声は響き渡る・・・周囲の魔族に聞こえるんじゃ・・・。
うん。
うん・・・交渉は失敗だ・・・ああ向いてないのかな。
思いっきり僕は向かいにいる男に刀を抜かれて脅されている、報復ってなんで?何をしたって言うんだ?
交渉術を行使していただけなのに・・・。
―――
―――
―――
―――刀で脅される数時間前。
男女7名のチームを廃都の端で見つけたのだ。
全員ボロボロで魔装も破損している。
会っても大丈夫だろうか・・・交渉するには会うしかないし。
フィーネの鎧を纏う僕は不審人物とは思われないだろうし、顔も出しているし・・・ああ、女性には間違われるかもだが。
僅かでもいい、テロの手がかりのようなものや、それに彼らはそこそこ戦えそうだから。
同盟を組むのもいいかと思って・・・といってもこっちは2人で、さらに但本君はとても戦力にならないが。
魔獣だらけの街の中心から突然やってきた来た僕はおもいきり怪しまれた。
「あの、こんにちは」とせっかく知らない人達に勇気を振り絞り声をかけたのに。
ウォオオオ!!
7人の大学生は奇声を発しながら全員抜刀した。
話しにならなかった・・・僕が無傷なのが腑に落ちなかったのと。
どうも人間同士、サマナー同士で争ったばかりのようだ。
「悪魔の幻術だ!目を見るな!」
「あいつらの仲間だね!」などという始末だ。
交渉したいのに・・・。
なるほど。
わざわざ出口のない次元環でお互い遭難中なのにサマナー同士で戦ったのか。
建設的じゃないな。
この7人にリーダーがいないのも良くなかったようだ。とうとう怒声とともに魔法を撃ってきたのだ。
ああこれが・・・。
これが恐怖・・・か。
・・・しばらく攻撃を避けて・・・離脱した・・・交渉用にとわざわざ持っていた水の入った袋・・袋は、これは民家で見つけたのだが・・・その水袋は置いて来てやったが・・・。
「水ですよ、まあ良かったら。毒なんてはいっていませんから―――」
おっと・・・また撃ってきた・・・マジックボールか、無効化してさっさと離れよう。
交渉は失敗だ。
しばらく離れたところで腕を組んで考えているのだが。
(うーん。困ったな。魔獣に追われサマナー同士で戦い、仲間を失い・・・疲弊して恐怖も重なりまともな判断できていない)
こんなのばっかじゃないだろうけど。
・・・その後・・・やるせない気持ちだったが抗術で気配を消し別の人の気配を探って移動を繰り返した。
数ヵ所で数人ずつ見つけたが先ほどの失敗もあり慎重に観察だけした。
交渉しないといけないんだろうけどな。
最初の一ヵ所めは5人で今後どうするかいがみ合い・・・移動する意見と・・・救助を待つ意見。
弱そうだし・・だめだこりゃ。
さらに数キロ移動・・・また見つけた。
次の所は6人だが怪我人だらけ・・・しかも奥に魔獣が眠っている洞穴で休んでいる・・・夜になれば喰われるな。
だめだこりゃ。
さらにさらにその次は岩陰でまた別の男2人が絶望している・・・うなだれて魔装もできないレベルか。
近くに木の上で爆睡している男1人・・・。
とても必要な情報を持っているとは思えない。
移動しよう・・・戦力になりそうな人材を探さないと。
こうやって探してみると交渉してよさそうな人ってなかなかいないな。
・・・次の一団は12人でいいチームだった。
男性9名女性3名・・・荒野を移動中だった。
恐る恐る僕は近づいて挨拶したが攻撃もされなかった。霊視すると水も食料も十分あるようで半数は魔装して半分は私服を着て移動している・・・つまり交代で戦っているのだろう・・・魔力温存というわけだ。
いや・・・なかなか優秀そうだ。
リーダーらしき人の話しでは2つの大学の混成チームとの説明だった。
彼らのうち一人は危ないから一緒に来ないかと言われたが仲間がいると言って断った。
だが貴重な情報を得た・・・検討が必要だろうが。
どこからの情報かわからないが魔族や魔獣の寄り付かない地区があるらしく・・・それにしても、この結界内で長距離念話をするとは大したものだが・・・中継するアイテムがあるのだろうが念話は傍受される可能性がある、まあ慎重にね。
そして先行している3人の仲間と合流予定とのことだった・・・15人のチームだったわけっだ。
アタッカーにサポーター、人気のないヒーラーも2人もいる。
うん、バランスいいな。
・・・とてもいいチームだった、便宜上“フューリー”というチーム名で構想しているとのことだったが、チーム“フューリー”・・・挨拶できてよかった。
今度会った時に何か面白い情報が聞けるかもしれない。
フューリーは憤怒とかって意味だったっけ?この“マルカブ”の惨状にはよく似合う言葉だ。生きて戻れたらミランダ先生にラテン語系なのか聞いてみよう・・・そういえばタイガーセンセの部屋にもう2週間近く行ってないな。
結婚ってまさか本気かな。
ふ。この僕に懐かしい故郷なんてないのだが・・・ミランダ先生のよく分からない外国産の抱擁とそれを見てブチ切れながら料理を持ってきてくれるタイガーセンセを少し懐かしく思い出していた。
・・・さらに人材を探したのだが・・・しばらく誰とも会わず、暗くなってきて・・・次が問題だった・・・街から少し離れたところに“砦”があったのだ。
多分4000年前の見張り台か何かなのだろうが、石造りでかなり大きい。
十数名のチームだが・・・問題だ・・・他にも砦の外で遠征している仲間がいそうだ。
要は・・・だ。ここへ来て10日ちょっとで、まさかだが。
分かりやすい言葉で分類すれば、これは武闘派だ・・・山賊といってもいい・・・マフィアの幼生と言ってもいいか。
山賊と言えばかわいく聞こえるが組織的に魔獣・魔族も狩っている・・・が・・・周辺を通る人間も狩っているようだ・・・食料や水・・・アイテムを奪うため・・・まじか。魔力探知・結界で砦を守り・・逃げ場のない山道で待ち伏せして攻撃・・・そして捕らえた人間を自作の独房に入れている・・・生きている者はだ。
犯罪者ギルドといったところか・・・。
これも一つの適応か?
うーん。
この過酷な環境に強引に適応しつつあるのか。
人間を倒しても“マルカブ”から出れないだろうが。
・・・あんまり酷いことは・・・ん?
頭を上げて振り返る。
かなり遠いがこの感じ・・・戦闘だ!
僕が着た方向からだ。砦と真逆・・・戦闘を感知した瞬間もう僕は走り出していた。
(人間同士じゃない、魔族と召喚士の反応だ。誰かと魔族が戦っている。ブルーデーモンか?気配的には)
戦いの気配を追った・・・。結界のせいで通れない箇所が多く・・回り道だらけだったがスピード特化型の僕は早い・・・。
荒野を音も無く走る。暗くなってゾンビが活性化、どこそこで動いているが無視だ・・・。
今もゾンビの脇を潜り抜けた・まさしく疾走だ。
(この方向はひょっとして・・・)
見通しの悪い丘を越えて木々がこの辺は全部枯れている・・・嫌な雰囲気だ。
街だ、街の一角が見える。行ったことのない地区だ。
荷台などの残骸が多い・・商業の要所だったのだろうか。
さらに気配を消す必要がある。
複数の魔族の反応を感じたのだ。
基本的に魔族は3の倍数の数で行動する。感知できない個体もいるはずで、かなりの数になるだろう。
戦闘の反応は北へ北へ移動している。
魔族の数が多く撤退戦をしてる?人間の反応は少ない。
(しかしこの方向は・・・)
慎重に少しスピードを落として安全を確保しながら僕は進む。
井戸と水飲み場がある・・・円形の広場で・・・やっぱりここは交通というか商業の・・・。
あ!
あああ。
驚いた・・・声は出していないが。
何か倒れているのは知覚していたけど・・・そうか彼らは・・・さっき別れたチーム“フューリー”・・・だ。
1、2、3・・・。
全滅か・・・。
12人倒れている・・・全滅しているようだ。
やっぱり彼らの反応だったか、いいチームだったのに。
惨殺だ・・・一方的な戦闘だったようだ・・・数名がトラップにかかったな・・・。
つまり待ち伏せされた、この一方的な戦闘は。
先行している3人はとっくに攻撃されていて念話できる術者が操られたな・・。
っち。
さっき念話は危ないと言うべきだったか・・・魔族は念話に敏感なのだ。
人間と変わらない知能を持っていると思っておく必要がある。
長距離念話できて凄いでしょという緩い平和な感性は、4000年前に召喚士を皆殺しに人間を皆殺しにやって来た魔族の一切加減のない強い一貫性の前にただの隙でしかないわけだ・・・。
大学生召喚士としては優秀な方なのだろうが。
やるせないな・・・もう彼らと情報交換できそうもない。
無意味なことだ・・・ここで立ちすくむのは・・・まわりに魔族の反応は無い・・・ゾンビも魔獣もいない・・・上手に誘い込まれたものだ。
ん?
僕の超感覚はもう一つの生命を感知している。
人間の反応だ。
この先で手練れが生き残っている。
この円形の集会所に倒れているのは12名。
井戸の中に1名・・・これが操られていた念話の術者か・・・では残り先行していた2人がまだいるはず。
“フューリー”・・・1人でも生き残りがいればいいが。
もう1人の気配を追うか・・・。
一瞬で僕の姿はかき消えた。
―――気配は消しながらも加速して戦闘の気配を追う・・・。
ここはさらに結界が多いな・回り道だらけだ。
さらに魔族のトラップも結構ある・・・探知系の隠術も潜んでいる。
やれやれ・・。
“フューリー”のレベルを考えるとブルーデーモンに勝てるとは思えない。
手遅れかもしれない。
追っても無駄かもだが・・・まあ行くか。
おや建物が崩れてる・・・1名やられてるな・・・体温が低い・・戦闘があったのは数時間は前だな。いや1名じゃない、2名だな。体の損壊が激しいが2名だ。
あれ?“フューリー”は15名じゃないのか?
これで全員では?
戦闘の気配は続いている。
15人以上いるのか?
久しぶりにやるか。
魔力集中。
“加速一現”
少々の気配が漏れるのは仕方ない。
・・・スピード重視で・・・そして気配に追いついた。
ズシャシャ!!!
ちょうど一体の魔族が一刀両断されていた。
(おお!強い!一撃か)
まさしく魔族と召喚戦士の戦闘の真っ最中だ。
召喚戦士は1人のようだ。
予想と裏腹に召喚戦士は優勢だ、かなりの数の魔族に囲まれてはいるが。
建物の上、遮蔽物に隠れながら近づく僕に気付く魔族はいない。魔族は全滅寸前、それどころではないのだ。
感覚の目でみるとこの召喚戦士は建物の壁から壁へ飛び移りつつ多角的に攻撃している。
相当な腕前だ・・・この召喚戦士。空中でガードしそのまま切り伏せる・・。
そうか。大地に捕縛の術がかけられている・・・それで空中戦か。
建物の側面から側面に飛び・・・余裕で魔族を切っている。
鎧武者のような恰好の戦士だ。
この“マルカブ”で会った召喚戦士で間違いなく一番強いな。
いいな・・・。
この戦士なら僕と組んでも全然遜色ないぞ、“フューリー”のエースだろうか。
魔法攻撃も余裕で防御し、跳ね飛ばして。他の魔族に当てている。
ズッバババ!!!
ここまで振動が来る。
・・・おお!すごい範囲攻撃だ。
残りの4体・・・一気に倒したな。
少し離れたところにいる僕だが、自分が屋根の部分に隠れている建物まで範囲攻撃に巻き込まれて崩れていく。
(ああ、崩れるなあ・・・どうしよう、なぞの召喚戦士の目の前に出ることになる・・・攻撃される可能性があるかも)
舗装されている道に少し距離を取って飛び降りる、捕縛の術式は既に消えているようだ。
術者の魔族が倒されたのだ。
・・・僕は音も無いし・・気配を消しているから例の召喚戦士から見えないかも。
その間にどうやって声をかけるか考えないと・・・。
そもそも彼の背中側だし・・・いきなり姿を現して挨拶するかどうするか。
うーん。
“フューリー”の人たちとは知り合いでとか言えばいいか・・・まとまらない。
だが謎の召喚戦士は振り向きもせず気配を消している僕に話しかけてきたのだ。
探知力も驚くほどに高い・・・教官たちでさえ気配断ちしている自分には気付けなかったのに。
「キサマ、神明全だな・・・」
驚いた・・・だれ?
突然名前を言い当てられるなんて・・。
「え?」そう言った瞬間、僕は気配を現した。
姿が見えているのか?っていうか名前。
ああ名前はインハイ優勝してるし知ってても―――。
「なにをコソコソしている。我が妖刀には隠し立てできんぞ」
「いえ、コソコソなんて」
まあコソコソしていたか。
って。
なぞの召喚戦士の兜部分だけ物質化が解かれる。
知ってる顔だった・・・なるほど・・・魔装鎧が形が変わってる・・・グレードアップしたのか。
「ああ高成・・・くんか」
やばい、高成弟って言いそうだった・・・こっちに来ていたのか。
「キサマ、神明全・・・」
げ、戦闘終わったのに全く闘気をおさめていない・・・じゃないか。
今年インハイ団体戦の決勝戦を戦った“Z班”の神明全と“ホーリーライト”の高成崋山は魔族の死体だらけの廃都で真正面から向き合うことになった。
(すっげえ、会いたくないのと会っちゃったな。そりゃ強いわな。降魔十傑じゃないか・・いや最新の十傑には、えっと入ってたっけ?)
全く闘気が衰えない・・・そして一部の隙も無い感じだ。
「いい身分だな、高見の見物か」
ニコリともせずに鎧武者はそう言う。
「いえ、そういうわけでは・・・」
「さっきから見ていたではないか、俺が負けそうなら魔族に加担する気だったなのだろう」
「ま、まさかそんなことは・・・」
何言ってるんだ、すぐに戦闘に参加はしなかったけど。
彼も人間不信なのかな・・・だとすれば仲間だな・・・。
妖刀を影に戻しつつこっちへゆっくりやって来る。
全滅していた“フューリー”とは全然関係なさそうだな。
そして、どう考えても僕の顔をジッと見てるな・・・ガンつけるというやつか・・・不良は嫌いなんだよな・・・この人って不良と戦う風紀委員のはずなんだけどな、それも総風紀委員長だったっけ、風紀総長だったか。
「そうだろうな。それはないだろう。俺程度はいつでも殺せるのだからな」
「な、なにを言ってるんですか?」
本当になんなんだ?
本当に人間不信かもしれないな。
「事実だろう?いつでも殺せるはずだ。キサマには天地がひっくり返っても俺では勝てん」
「・・・いやあの何・・・」
何の話しなんだ?
「キサマはそうやって3年間ずっと俺を、周りの奴らをバカにしていやがるわけだ」
「何を言ってるんですか?風紀総長さん、それよりここは―――」
言葉は遮られた。
「一度話したいと思っていたのだ!・・・全くバカにするのも大概にしろ!キサマァ!」
「・・・いえ全然バカにしていませんけど」
は、迫力あるなあ。
不良って嫌いなんだけどな・・・。
「キサマは卑怯者だ・・・あの時、初めてキサマに会った・・・。あの時だ。貴様は如月葵と一緒にいただろう・・・いつもだ・・・いつも存在を隠しいいところだけ持っていく。計算しつくしているのだ」
「ああ、はい。六道記念大会の前日でしたっけ?」
由良の襲撃のあった時か・・・アフロと一緒に・・・の?それが何?
何が言いたいんだ?この人は?魔族の死骸だらけのここでなんの話しが始まっているんだ?
困ったな。
「キサマは優越感に浸っているだろう・・・桔梗様の婚約者で・・・第一竜王子で・・・如月葵の師匠だと・・・優勝したZ班も・・・そして第二部とやらも・・・勢力拡大しているようだな・・・順調か?王になる道は?なにもかも踏み潰していくのは快感なのだろう?」
「は、はい?」
どちらかというと踏み潰される人生ですけど?誤解しているならそれを解けば形上、仲間にでもなれる?
腕組みしている彼は防御態勢の現れなのだろうか、どこかに落としどころがあればいが。
いけるかな交渉術は・・・。
「勘違いしているようですけど。存在を隠していないと命が危なかったんですよ。何度も命を狙われて・・・桔梗さんとの婚約は西園寺グループが勝手に作ったもので僕は知りませんし・・・桔梗サンと高成クンはお似合いだと思いますけど」
これは本当だ2人とも長身だし、まあお世辞ととられるだろうか。
「・・・それから?」腕を組んだまま目を閉じている・・・聞く態勢になったか?反応が読めないな、表情は硬い・・。
「え?それから・・・それよりここは多分“マルカブ”という名前の次元環で・・・多分ですけど。何らかの条件を満たさないと出れないはずです。それを調べている最中でここにいるわけで」
「それから?」
うん、うん困ったぞ。こんなとこで揉めている場合ではないのだ。
何を言ったらいいか思いつかない。
「いえあの・・・良かったら組みませんか?」
「・・・それだけか?」
「ええ、はい。よ・・・良かったら」
うーん、強引かな・・・この交渉は。
高成弟はまったく身体を動かすことなく表情も変わっていない。
「疑念と執念だ・・・俺を動かすのは・・・つまり空虚な復讐なのだ」
「は?はい?」
突然なんや?
なんのこっちゃ意味が全く分からない。
「緑川尊だ・・・」
吐き捨てるように彼はそう言う。
いやいや余計に意味がわからない・・・緑川尊が・・・ナニ??




