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ドラゴンディセンダント  作者: ドクターわたる
竜の迷宮
102/265

3-4-3.竜の迷宮③

―――ん?星が・・・木が見える、い、生きてる?


生きているみたいだ。

どうやら僕は仰向けに寝ている。

周囲は暗めだが、倒れてからそれほど時間はたっていないのでは・・・。


安全確認が先だ。


一瞬で飛び起きて周りを確認する・・・やっぱりさっきの場所か・・・身体にかかっていたのは毛布か?


「うお!動きはや!すげえ・・・」


こいつは覚えている・・・危ない危ない・・・殺してしまうところだった。

さっきの人の良さそうな男子学生だ・・・驚いているようだ。

辺りにはほかに人影はない。


敵じゃなかったのか。地面にタオルが落ちている・・・僕の枕にしていた?

こんな隙を見せるなんて・・・この慎重な僕が・・・誰でも殺せる隙を見せるなんて。


(でも、さっきの・・あの眩暈は何らかの特殊攻撃としか・・・)

両手をまじまじと見る・・・超感覚で自分自身を・・・周辺をもう一度探る。


「体が軽い・・なんだったんだ?さっきのは・・・」

「よかった元気そうだね。10分くらい寝てたよ。君は」


頭もすっきりしている・・・固定概念にとらわれず仮定をたてて整理する必要がある。

何が起きたんだろう。


だが僕の口から出た言葉は比較的どうでもいい疑問だ。

「どうして助けたんですか?」

「いやあ、なんにもしてないよ。やっぱり人を呼びに行こうかと思ってたとこだけど」


本当にただの人のいい甘ちゃんか?

TMPAは低め・・・火属性・・・魔獣系か・・・弱いな。


「寝てる間になにもしなかったんですね?」

「えええええ!な、な、なにもしてましぇんよ」

「確かにね、なんの攻撃の跡も感知できない」

のわりには何を慌ててるんだ?


少しずつ分かってきた。

・・・もしかして・・・。


まさか・・・。


そうか・・・。


ああ・・・やっと気づいた・・・そうか、そういうことか。


何が起きたのか・・・身体に・・・やっと理解した。

珍しく汗ばむのを感じる、よく生きていたものだ。


(僕はやっぱり攻撃されたのだ、そして予想外のことが起きた、それが僕を救った。そういうわけか)


「―――そういうわけか」

「な、何もしてませんよ」

人のいい大学生は手をバタつかせて何かを否定している。


(予想外のこととは、つまり僕にも攻撃者にもとういうことか・・・だとすれば・・・)

背筋もしゃんとして、僕の状態はほぼいつも通りだ。


「いえ、助かりました。ありがとう」

「いやあ、そういう意味でもなにもしてないっつうか」


どうやって、いつ攻撃されたのだろう。

(攻撃されたのはいつだ?予想通りなら・・・そうであれば他に協力者がいるはず・・・助けを呼ばれたら危なかった可能性はとても高い)


「そうか、であればあいつが参加しているかも・・・迂闊だな。全く」

「あいつ?あいつって?」

「それより助かりました、自分は降魔六学園、第6高校3年の神明全じんめあきらといいます。感謝します」

「えええ?高校生?ああ、自分、あ、俺は高穂大学2年生の忠本央介ただもとおうすけっていうんだけど。高校生参加してるんだねって・・・も、もう大丈夫?・・・じんめ・・・じんめちゃんね」


「研修会にはお一人で参加ですか?」

さっきはどっかの大学生たちに逆に聞かれてたな。


「ああ、俺。いやうちの大学は召喚学部人数が少なくってさ。一人しか推薦枠ないって言われてさ」


なるほど、一人なら話しは早い。彼なら信用できそうだ・・・いつでも僕を殺せたはずだからな。交渉開始だ。


「僕も一人なので組みますか?」

そう言いつつ彼の能力を深く診る。


TMPA4000くらい、魔獣族、トカゲか。やはり火属性で・・・おや?


微妙に照れながら喜んでいるのか、困っているのか・・・締まりのない顔だ。

「ええええ!いいの?」


「サラマンダーでしょう?召喚獣?」

「ええええ?すげえ!なんでばれてるんだ?ちょ、超能力?」


(信用できる人と巡り合う可能性は低い、相補的にいければ十分だが。僕の身体に起きていることを考えると・・・仲間がいる)

それに思ったより使えるかもしれない・・・鍛えている時間があればいいが。


「あなたのサラマンダー伸びますよ、少し鍛えてあげましょう」

「ええええ!と、鍛えるって・・・と、年下の・・・こ、高校生だよね?」


「まあ今晩生き延びられればですけどね?ちょこっと待っててください。霊眼が効きにくいので高いところで大気の流れを読みます」

「生き延びるとか大げさだねえ」


そう言って僕はひときわ高い木の上に飛び上がった。


夕焼けはほぼ消えつつある。

木の上で感覚を集中させつつ・・・そして反省した。


ああ情けない・・・隙だらけじゃないか。

ああ・・・気分悪い・・・いや体調はもう絶好調だが。

すぐ気が付かないといけない・・・。


それにしても予想外にもほどがある、この次元環研修会は・・・安全パイなはずが・・・。


まあいい、気を取り直そう。

そこそこ高い木の上に登って見下ろし、情報を集める・・・ここ・・・この次元環はおかしいのだ。霊眼で遠くまで見えない・・・原因は予想つきつつあるが。


まさか全部・・・僕への罠?なんてことは。


(それは否定的だろう・・・今頃、攻撃者も驚いているはずだ)


「おーい!何か分かりましたかー?」

下の方から緊張感の無い声がする。さっき知り合った但本とかいう大学生だ。取り敢えず無視しておく・・・。




―――木の上でため息しか出ない。

(やっぱりな、間違いない・・・ふう・・・間違いないって言葉がうつってるな・・・アフロめ)


普通っぽい但本君にも木の上に来るように促す。


「登れませんか?」

「お、おう!」


(ここはカノープスじゃない、間違いない。アフロがいればな、もう少し検討できるんだが・・・)


少し下を見て驚いた・・・大学生の但本くんはまさか一生懸命に木を登っている・・・。

まがりなりにも召喚士でしょうに・・・飛んで来いとは言わないが・・・一般人か・・・。


さて僕は観察して検討する必要がある・・・風はほとんどない・・・真っ赤なフルムーンが現れてきている。


(キレイだが・・・怪しい色だな・・・次元環に浮かぶ紅い月って何かで読んだ記憶が・・・)


・・・ガサゴソと一般人と変わらないスピードで彼はやっと登って来た・・・。


「よいしょっと、いい運動になるなあ」


汗かいてるし大丈夫かなあ・・・まあ一応助けてもらったしな・・・登らせた理由は簡単だ・・・助けるのだ・・・お返しという奴だ。


「あの?但本くん?あれが見えますか?」

「く、くん?と、年下だよね。ま、別にいいけど・・・え?なに?あっち?」


僕は数百人がキャンプしようとしているあたりを指さす。火や人口の光で満ちている。笑い声や歌声まで聞こえる。ひときわ大きい火はさっきの文里大のキャンプファイアーか。


「あああ、高い!いや・・・いい眺めだねえぇえ。ろ、ロマンチックだよねえ」

ブルブル震えてるけど・・・冷や汗も出ている。


「・・・怖いんですか?高いところ?」

「えええ、いやあ怖くないよ。少し苦手なだけで」

高所恐怖症かな・・・召喚士が・・・まあ僕も対人恐怖症だけど・・・。


「さっきのお返事を聞いていませんが・・・?」

「あああ、研修を乗り越えるのにチームになろうってさっきの申し出だよね?付き合うとかって意味じゃなくてだよね?」

「取りあえず今晩を生き延びないとどうしようもありませんけど」

「い・・・生き延びるって・・・大げさな」


緊張感無いなぁ、この人・・・ダークアリスにカツアゲされてた6校生に似てるな。

肉食獣に喰い殺される系の人だな。


この次元環に入った人数・・・分からないが・・・ほぼ全員参加とすると2000人以上・・・そのうち何人が気付いているだろう・・・これは研修会ではないことに・・・。

まあ但本君が気付いていないのは間違いないだろう・・・もう木の下は危なかったのだ。


でも・・・。


彼の顔をじっと診る・・・もう少し深いところまで・・・やっぱりな。


「ええええ、なになにじっと、み、見つめて。じ、じんめさんだったよね。じんめちゃんって言った方がいいかな」


「診てるんですよ。やっぱりね。伸びますよ・・・あなた、強烈な才能が眠っていますね」

なかなかの拾い物かもしれないな彼は・・・。


「あははは、そりゃないよ。散々、大学で検査して押された烙印は3流以下でさ。でも他に取り柄もないし。どっかの企業にでも雇ってもらえればラッキーだし」

「企業ってサマハイとかソードフィッシュですか?それか西園寺グループの?」


「あはは、どれも一流だね。そんなとこ目指してないよ。才能何てからっきしでね。俺は」

「才能が無いのは、あなたを診断した検査系魔術医でしょうね・・・悪魔もぶっ飛ぶ火炎術士に育ててあげましょう」


「あはははは。笑えるよ。いいね、それ。でも今晩生き延びられればだよね?」

「さすがに分かりましたか?まあ連中、気配をそれほど消していませんからね。始まりますよ。尻尾が掴めればいいですが・・・周囲に多重結界を張っていますが大声はだめですよ」


攻撃者は最低2グループ・・・しかもコイツ等はお互い認知できていない。

僕をターゲットにしている1グループ・・・もちろん一人かもしれない・・・もう1グループは魔族どもだ・・・これも数は不明だ。

潰し合ってくれればいいが・・・そんなに上手くいかないか。


その前に自分の身体をもう一度詳しく調べる必要がある。


「うお!ま、真下にバケモンが」やっと気づいたのはいいが大声出すなっつうの。


シーっとジェスチャーをするとすぐ通じた・・・オールバッカ―よりもダイブツくんよりも賢いようだ。

この木の真下をさっきから20匹ほどの魔獣がすでに通っていった・・・ほとんど音はしない。

この但本君の索敵能力は一般人並みのようだ。


「ええ、さっきから通ってましたよ。それで木に登るように言ったんです」

「えええ?」

口を押えながら驚いている。


「しゅげえぇ・・・」


カノープスには限られた一部の場所に激弱のゾンビくらいしかいないし、キャンプする場所は円柱結界で守られ安全である。リゲルもアンタレスもいっしょだ。


つまりここはカノープスでもリゲルでもアンタレスでもない・・・おそらく。


寝る場所が結界で守られているかどうかくらいはチェックしないと・・・迂闊だ。

下を通ったのは下級魔族の使い魔である魔獣どもだ。


つまりここがどこだか分かっていない浮かれている大学生たちめがけて魔獣の群れがおおよそ四方向から大行進中なのだ。


「ぇぇぇぇ。研修会のクリアは激ムズだって聞いてたけどねえ。これは怖いな。ありがとう、ありがとう。助かったよ。それで木に登ったのかあ。じんめちゃん・・・いや、じんめさん」


「研修は超簡単だって聞いてましたけどね。教官からは」

「ぇぇぇぇぇ」


間違いなく但本君は僕の顔を知らないようだ。

(それにしてもインハイって動画がネットに転がってるはずなんだけど大学生って見ないんだな。まあ僕も中学生の大会なんて確かに見ないけど・・・インハイ優勝者の顔分かんないもんなんだね)



・・・考察してみよう・・・つまり、我々2000人の研修会参加者は・・・研修会とは関係ない次元環に飛ばされているわけだ。この次元環は瘴気が濃いのだ・・・これに気付かなかったのは訳があるのだが・・・それはまあいい、後で検討しよう。

この次元間は瘴気が非常に濃い・・・ということは4000年前に封印されたといわれる魔族の大群の・・・つまるところ封印先である・・・。

この封印はそもそも現世から切り離され異次元にあるということと・・・4000年前の魔族の攻めてきた一日を繰り返すという二重の封印によって・・・人間の世界を魔族から守っているのだ。つまり今ここには人間界を滅ぼしに来たばかりのいわば新鮮な魔族と魔獣だらけでは・・・そう予想するわけだ。


本来の研修会会場が安全なピクニックレベルであるとするならば、向こうで浮かれている大学生たちも分からなくはないが・・・さしずめ空腹な肉食獣のエサ場に投げ込まれたエサ・・・それが彼ら・・・まあ言いすぎか・・・僕もそのエサの一人だし。


取りあえず目の前の但本君と目が合う・・・2人で生き延びないと・・・。


「こ、こんな時になんなんですけど・・・めちゃくちゃ美人ですよね。じんめさんって」


なに言ってるんだ?

こいつ・・・役に立つかな・・・。

あと・・・まさか髪が長いだけで僕のことを女子だと思っているなんてことは・・・。


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