最強最弱の力
「・・・・状況を説明しますので・・・・」
薄紅色の髪に紫紺の瞳を持った美少女がそんなことを言っている。
だが、岳には、ある疑問もがあった。それは・・・・・
「あ、・・・えっと・・・・その前に、あなた誰?」
「ゲフッッ」
「ゲフ?」
「い、嫌ですね〜・・・クラスメイトじゃないですか〜」
「えっ、えっと〜・・・・」
「あ、朝比奈ですよ!朝比奈!朝比奈可憐ですよ!!」
「あっ、あぁー・・・・そんな人もいたような・・・・・」
可憐は、悔しそうな顔をしているが、岳は、苦笑しながら誤魔化した。
すると、可憐は、「ううん!」と咳払いをし、真剣な顔に戻り「では」と前置きをし
「改めて状況の説明します。真面目に聞いてください。」
それから、可憐はゼロから事の説明をしてくれた。
可憐の話を要約すると
この世界には、岳達を以外にも伊能の力を持っている人達がいるらしく、
そんな能力者達を保護・育成しているのが
異能保護育成連盟【フォース】だ。
それで、岳にもフォースへ入団し、異能悪用団体【エアロイド】と戦ってほしいという事だった。
岳は、少し不安だったがその気持ちを払拭し、入る事を決めた。
「分かった。俺でよければ協力させてもらうよ!」
すると可憐は、少し微笑んで徐に立ち上がり岳に立てという仕草をし、美白な右手を前へ出して「それでは」と言い、
「ようこそ!フォースへ。あなたを歓迎すします。」
岳は、差し伸べられた右手に同じく右手を前へ出し、
「ああ。 よろしく可憐!」
岳は、差し伸べられた手を握り、フォースへ入団し、エアイドと戦う事を握手という形で忠誠した。
可憐は、少し微笑むと
「フォース・本部へ行くから付いてきて」
と言い、岳達は、鬱蒼とした森の中をあとにした。
岳は、可憐に付いていくと何故か学校に着いた。
「えっと、可憐。ここ学校なんだけど・・・・」
「あ、あぁー、フォードの本部は岳の学校の地下にあるのよ」
「えぇーーーーーーー」
岳は、一瞬驚いたがすぐに正気を取り戻した。可憐は岳の顔を見て、何故か勝ち誇った清々しい顔をしていた。
岳達は、靴箱を過ぎて土足のまま入って昇降口へ行き、多目的室に入った。
すると可憐が、誰も居ないか周りを確認し出していないことを確認した可憐は、眼の前の壁に手をつき・・・次の瞬間
可憐の手のついたところから放射状に罅が入り始め大きな扉の形になった。
ギィィーー
扉のが開いた。
「付いてきて」
「お、おう」
中は、洞窟みたいな空洞になっていて、暗いが横に光の線が付いているのでかろうじて足元が見える。
歩いていると、先に光が見え始め、近づくにつれて光が強くなり、やがて前が見えなくなった。
目を開けると、そこはとても大きな秘密基地になっていた。
眼の前には、巨大なモニターがありガラス越しに下を見るとパソンコを操作している大勢の人がいた。
(あの人たちも全員能力者なのだろうか・・・・)
そんなことを考えていると横から声が聞こえた。
「やぁ、こんにちは!君が桐山岳君かな?」
容姿は、30代くらいでおそらくここの責任者だろう。
「こんにちは!隊長、こちら桐山岳です。
そして岳、こちら隊長の坂上仁隊長です。」
可憐は、とても丁寧に両者の挨拶をしてくれた。
「こんにちは!桐山岳です。よろしくお願いします。」
「あぁ、宜しくね。早速君に伝えたいことがあるんだ。来てもらっていいかな」
「立ち話も何たがら、客室に来てくれ。あー、可憐君も一緒に来てくれ」
そして岳達は、客室へと向った。
細部まで掃除が行き届いている客室はとえも綺麗で清楚な部屋だった。
岳達は、坂上隊長と向かい合うように座ると隊長が、「それでは」と言って話を切り出した。
「改めてフォースへようこそ!君も知っていとは思うが、此処は、能力者、我々は【リーディス】と読んでいるが、そのリーディスを保護育成する施設なのさ。」
「はい・・・それは、可憐から聞きました。それで僕に話とは?」
「ああ。それは君の能力についてだが・・・」
隊長は、言いかけた能力について一旦行き詰った様な態度を取ったが、意を決したのか、真剣な表情になり
「君の能力は・・・創造力、すなわち【クリエイテイション】だ。」
「・・・・・クリエイテイション・・・・・」
岳は、少し考え込むと、記憶の断片にあるあの記憶が、脳裏を掠め頭の中で再び再生された。
「君はあの時何かを感じなかったかな?」
「・・・・・はい。火を想像しました。そしたらいきなり火の玉が眼の前に現れたのです。」
「そう!それこそが君の能力。想像力を【創造力】に変えて、それを具現化させる。」
すると可憐は、何かに気がついたように驚きの顔をしていた。
「そんな力最強じゃないですか!」
しかし、隊長は、少し顔をニヤけさせ「でもね」と言って、
「創造が出来なかったら、ただのお荷物能力になってしまうのさ。この意味分かるかな?」
岳は、少し考え込む仕草をとり、やがて一つの答えに辿り着いた。
「・・・・・つまり、創造出来なかったら能力が発動出来ない・・・・」
「その通り!すなわち君の能力は、使い方次第では、【最強にして最弱の力】となる」
ーー最強にして最弱の力・・・・・・
つまりこの能力を使うに当たって柔軟な創造力が必要不可欠となってくる。創造出来れば最強、出来なければ最弱、その絶対的不条理がこの力のトリガーとなる。
岳が、そんな考えを巡らせていると、隊長が2つ目の話を切り出した。
「我々、フォースでは、エアロイドと戦うにあたって4人1組のチーム編成となっている。そして君の配属先は・・・・・・可憐君のチームだ!」
可憐のチームは、どうやらメンバーが一人足りなかったらしい。
「そこで、今から可憐君は、メンバーの自己紹介をしてきて欲しいんだ。」
可憐は、何だか少し嬉し気味に頬を赤らめて、岳見ている。
(俺も、知ってる可憐と同じチームになるのは助かる)
岳も、そんなことを思いながら可憐のチームの入団を決意した。
それから隊長と別れた岳達は、可憐がメンバーを紹介すると言ってエレベーターで、三階に向かっていた。
やがて、部屋の前についた。
すると、可憐が扉ををコンコンと叩き、中から幼げな声が聞こえてきた。
「・・・・合言葉は?」
可憐は、面倒くさそうな感じて答えた
「饅頭大好き」
(な、・・・・・何だ!この曖昧な合言葉は!)
岳は、とてもツッコミたい衝動に駆られたが、その衝動を何とか抑えた。
合言葉を言った途端に扉が開いた。
中から出てきたのは、青空を想わせる透き通ったスカイブルーの髪を高い位置で結んでいてどこか幼女のような容姿の美少女だ。しかし、彼女は、見た目とは裏腹にとても馴れ馴れしく挨拶を交わしてきた。
「やぁやぁ!どぉーもどぉーも!」
少し面倒くさそうな可憐を横目に見つつ、岳も挨拶をした。
「・・・・えっと・・・初めまして。今日からこのチームに入ることになったき桐山岳です。」
「ノンノン!タメ口でいいよ!私の名前は望月凛だよーー!モッチーって呼んで!」
「・・・・も、モッチー・・・・」
岳は、自由奔放な凛に戸惑いながら隣の可憐へSOS信号を送った。
それを察した可憐は、部屋に入り込み2人を座られた後に咳払いをして自分を含めた3人の自己紹介を始めた。
「改めて、私の名前は朝比奈可憐。能力は、氷弾【アイスバレット】氷の塊を作り出して自在に操れる能力よ」
「次は、私だね!私の名前は望月凛。能力は、念動力【サイコキネシス】だよ!あらゆるものを自在に操れる能力なんだよー!あと、お饅頭が大好き!!」
「次は、俺だな。俺の名前は桐山岳。能力は創造力【クリエイテイション】強くイメージをしてそれを具現化させる能力」
ドンッ!
いきなり後ろのドアからうるさい音が聞こえた。
ドアの方に目をやると眼鏡を掛けたクール系男子が、立っていた。
しかし、その表情は、穏やかでやなく怒りに満ちていた。
「おい!うるせぇーぞ!」
そんな彼を可憐はあっさりスルーして言葉を続けた。
「丁度良かったわ!新しくメンバーが増えたから貴方も自己紹介して」
すると、彼は岳を凝視し始めて眉を寄せている。
彼は、ふん!と鼻笑いをし面倒くさそうに自己紹介をした。
「俺の名前は、道明寺竜也。能力は陰影
【ロストシャドー】。影を操る能力だ!」
「よろしく!達也」
「ふん!」
「こ、こういう性格なの!根はいい人なんだけどねー・・・・・」
可憐が若干顔を引き攣らせながらフォローをしていた。
そんなこんなで、俺達の自己紹介が終わった。
すると、タイミングよく隊長が部屋に入ってきて、岳達を一通り見回してから笑い、言葉を発した。
「自己紹介を終えたところで、君たちに初任務を与える。」
その突発的で、無茶振りな事実に一番に声を荒らげたのは可憐だった。
「ですが、隊長!私達はまだチーワークも出来ていない。ましてや・・・」
「やりますよ。俺が入れば負けるのは有り得ない。」
可憐の言葉を遮ったのは道明寺竜也だった。
「お、おい!」
岳も反論したが、竜也はそれをスルーして隊長と睨み合っていた。
「場所は、東京の過疎エリアです。バトルスーツに着替えて出発してください。」
そんな命令に岳達は、反論することが出来ずに、戦場へと向かった。
過疎エリアに着いた岳達一行は、眼前にあるコンクリート造りの建物へ気配を殺しながら近付いていた。
しかし、その瞬間!
黄色い稲妻が、地面に轟き、そこから半径3m程のクレーターが出来ていた。
どうやら、相手には敵感知の能力者がいて罠に嵌ってしまったみたいだ。
建物の中から5人程黒いローブに身を包んだ大人達がてできた。
瞬間!
真っ先に竜也が飛び出して行き、手を前へ突き出しながら、走っていった。
手先には、黒いモヤのようなものが渦巻いていた。そこからモヤが棘状に変化し、真ん中に立っていた男の胸を突き刺した。続いて、その横にいた男達の影を縫い付けて、動きを止めて、ナイフを突き刺して、最後に後ろに立っていた男の首を絞めて一分も掛からないうちに全員を暗殺した。
(つ、・・・・・・強い!)
心の中でそんなことを思って、竜也を迎えに行こうと歩き出した・・・・瞬間!
建物中から新たに敵が出てきて、油断している竜也を殴ってぶっ飛ばした。
竜也は、2回3回と転がり身体を疼くめながら、岳達の足元へ転がってきた。
そんな竜也をただ、呆然と眺めている岳を嘲笑うかのようにボスの風格をした男が出てきて、
「さぁ、誰から殺してほしいかな?」
その、男の言葉と共に岳達は死の戦い
ーーデスゲームが始まった。