従軍記者の日記 89
カネミツはM5の展開を見て跳ね上がる。
「脚部アクチュエーターのパワーは十分か。それじゃあパルスエンジンの微調整を兼ねまして!」
上空に跳ね上がったカネミツの動きについていけない民兵組織のM5。ようやく彼らがモニターでカネミツを捕らえられるようになった時にはカネミツの左手にはサーベルが抜き放たれていた。
「まずは一機か?」
嵯峨のとぼけた声がコックピットに響く。クリスの目の前で、民兵のM5が頭から一刀両断にされる。
「次!」
そのまま剣は左に跳ねた。隣でレールガンを構えようとしているM5の腕が切り落とされる。
「あのねえ、同士討ちってこと考えないのかな?」
再び跳ね上がったカネミツにを狙ったレールガンの砲火が腕を失った友軍機のコックピットを炎に包んだ。
「落ち着いて行けば、そんなことにはならなかったんだがな!」
叫び声を上げる嵯峨、滞空しながら残り三機の民兵側のアサルト・モジュールにレールガンの弾丸を配って回る。
「データにもならねえな。こりゃあしばらく試験を続ける必要有りかねえ」
そう言うと嵯峨はカネミツを着地させ、目の前に横穴を空けている古い鉱山跡の中に機体を進めた。クリスはただ呆然とその一部始終を見ていた。今、画面に映っているのは逃げ惑う民兵と技術顧問らしいアメリカ陸軍の戦闘服を着た兵士達だった。
「さてと、どこまで入れそうかね」
カネミツはゆっくりと坑道を奥へと進む。嵯峨は自動操縦に切り替えて、足元のコンテナからアサルト・ライフルを取り出す。
「カラシニコフライフルですか」
嵯峨は折りたたみストックのライフルをクリスに手渡した。
「AKMS。まあ護身用ってことでね」
嵯峨は立てかけてあった愛刀兼光を握り締めている。
「銃なんてのは弾が出ればいいんすよ。さて、自殺志願者もいないみたいですから、奥に行きましょうか?」
とぼけた調子で嵯峨は坑道の奥でカネミツを停止させて装甲板とコックピットハッチを跳ね上げた。