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従軍記者の日記 86

「ホプキンスさん。どうします」 

 ただ立ち尽くしているクリスに振り向いた嵯峨は子供のような無邪気な笑みを浮かべて尋ねてきた。

「別に良いんですよ。俺がシャムを今回の作戦から外した訳もわかったでしょ?今回はかなり卑劣な手段を取らせてもらうつもりですから。なにせ人民派ゲリラの中にはうちとは組みたくないと言ってる連中も居ますからね。それに対する牽制も兼ねて今回はかなり卑劣な作戦になる予定なんで」 

「その機体は複座ですか?」 

 クリスが搾り出した言葉にすでにパイロットスーツを着ていた菱川の技術者が戸惑っている。

「菱川の人。今回はデータ収集は後にしてくれますか?」 

 その嵯峨の言葉に青いつなぎの菱川の社員は一歩引いた。クリスは嵯峨の隣に立った。エレベータが上がり、冷却装置で冷やされたカネミツから白い蒸気が上がる中、コックピットの前に到着する。端末を片手にコックピットを覗き込んでいたキーラが顔を向ける。彼女は出来るだけ感情を表に出すまいとしている。クリスは彼女を見てそう思った。

「火器管制ですが……」 

「まあ良いよ、実戦で調整するから。それより四式のオーバーホール頼むぜ。もうちょっとピーキーにした方が俺には合ってるみたいだ。遊びがありすぎてどうも」 

「わかりました」 

 クリスから顔を背けるようにしてキーラは降りていく。

「あいつが責任感じることじゃねえんだがな」 

 嵯峨は頭をかきながらクリスに後部座席に乗るように促す。コックピットに入るとひんやりとした冷気がクリスの体を包んだ。嵯峨はそれでも平気な顔をして七分袖のまま乗り込んでくる。

「寒くないですか?」 

 そんなクリスの言葉に、嵯峨は笑みで返した。

「おい、出るぞ」 

 そう言うと嵯峨はコックピットハッチと装甲板を下ろす。鮮明な全周囲モニターの光。クリスの後部座席にはデータ収集用の機材が置かれている。

「あの、嵯峨中佐。本当に私が乗って良かったんですか?」 

「ああ、その装置は自動で動くでしょ?こっちはこの機体の開発にそれなりの投資はしてきたんだ。わがままの一つや二つ、覚悟しておいてもらわないと」 

 そう言うと嵯峨はカネミツに接続されたコードを次々とパージしていく。

「さて、戦争に出かけますか」

 嵯峨は笑っている。クリスの背筋に寒いものが走った。

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